最近、飼い猫の涙が多いと感じることはありませんか?気にしていないから大丈夫と見過ごしていると、実は飼い猫の涙は大きな病気かもしれません。
意外と見落としやすい猫の涙の多さ。もし飼い猫の涙が多くなったと感じた場合はどのように対処すれば良いのでしょうか?今回は、涙のメカニズムや涙が多くなるサインを出す病気を紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
飼い猫が涙を多く流していた時の考えられる病気
まず、猫の涙が多い病気を紹介する前に、涙がどこで作られてどういう役割を担っているのか紹介しますので、知っておきましょう。
涙のメカニズム
常に目を潤している涙は、どこで作られどのように目から出て行くのでしょうか。涙は「涙腺」「第三眼瞼腺」という器官で生産されます。上まぶたの外側と下まぶたの外側のところにあり、ここで涙が生産されて目へと分泌されます。
ただし、「涙腺」「第三眼瞼腺」で作られた涙は自然に目まで流れません。まばたきをすることによって目の表面に涙を運んでいます。このようにして目まで送られた涙は、蒸発してしまうか目の内側にある「涙点」という小さな穴へと流れていきます。
「涙点」を通った涙は、そこから目と鼻をつなぐ「涙小管」、さらに 「涙囊」「鼻涙管」を通って、最終的には「鼻腔」へと流れ、鼻の中に分泌されます。
次に、涙にはどんな役割があるのでしょうか。大きな役割は以下の3つです。
- 酸素や栄養素供給
- 洗浄
- 水分補給
まず、酸素や栄養素供給という役割があります。目の表面の角膜には血管が通っておらず(血管があると目が見えません)、自分で栄養を得ることはできません。なので、涙によって酸素や栄養素を運搬することで補っています。
次に、目から老廃物やごみ等を洗浄したり、外界からの雑菌の進入を防ぐ役割もあります。空気中には、数多くの細菌や埃が浮遊しています。
涙がなければ細菌や埃が直接目の表面にふれて、炎症を起こす原因になります。目の表面を細菌や埃からブロックし除去してくれる役割があります。
最後に、目への水分補給も行います。目の表面が濡れていないとドライアイになってしまいます。そのため、目の保湿の役割も担っています。
猫の涙が多い時の原因
それでは、猫の涙が多い時に考えられる病気ですが、主に下のことが考えられます。
- 炎症によるもの
- できものによるもの
- 流涙症
- 眼瞼内反症
- 白内障、緑内障
- ゴミ
- 角膜の傷
- 猫の種類
- アレルギー
- 寄生虫
炎症によるもの
眼が炎症を起こして何かしらの原因で充血を起こし、涙の分泌量が増えます。気にすると目を引っ掻いてさらに悪化します。
できものによるもの
まぶたに良性のイボができ、眼球に接するくらい大きくなって涙の量が増えることもあります。接しなくても気にして角膜に爪で傷を作ってしまうこともあります。ただのイボでも出血がひどかったり気にする場合は、手術で取ることをおすすめします。
流涙症
常に目の周辺に涙があふれている状態で、様々な原因で起こります。特に、ペルシャなど鼻ぺちゃ顔(peki face)はなりやすく、涙やけがひどくなります。これは、つぶれた顔が涙の流れを妨げるためです。
眼瞼内反症
眼瞼、つまりまぶたが先天的に内側に内反していてまつげが眼球を常に刺激していたり、まつげの生え方が内側を向いていて眼球を刺激してしまい、角膜に傷がついて充血を起こしたり、角膜潰瘍を引き起こす病気です。先天的異常なので、手術を行います。
白内障、緑内障
白内障や緑内障でも涙の量が多くなります。緑内障は、眼圧を測定しないと確定診断にならないので、疑わしい時は眼圧を測ってもらいましょう。
ゴミ
ゴミが目に入るとゴミを洗い流すために涙の量が増えます。気にすると目を引っ掻いてさらに悪化します。
角膜の傷
角膜に傷があると傷を治そうとして涙の量が多くなります。気にすると目を引っ掻いてさらに悪化します。最悪の場合は、手術にまでなるので早めに病院に行きましょう。
猫の種類
涙の産生量は正常であっても、それを体外に出す排水システムにエラーがあると、排出できない涙が溜まってしまいます。なので、充血や結膜炎はない場合が多いです。排水システムのトラブルとしては、排水経路の圧迫が原因です。
鼻炎、副鼻腔炎、鼻腔や上顎骨周辺の腫瘍によって鼻涙管が圧迫されたり、涙嚢の炎症や涙小管の炎症によって腫れて詰まったり、排水する穴が生まれつき閉じているなど先天的奇形(無孔涙点)などが挙げられます。
さらに、ペルシャやヒマラヤンなどの鼻ぺちゃ顔の品種は、顔面の骨格が鼻涙管を押しつぶしてしまうため、どうしても涙が詰まりやすくなります。
アレルギー
食物アレルギーで涙が多くなることがあります。食物だけではなく添加物が体に合わず、添加物を体外に出そうとして涙の量が多くなることもあります。
食物アレルギーに配慮したフードや無添加のフードに切り替えましょう。ただし、切り替えてすぐに良くなるわけではありません。1ヶ月は様子を見ましょう。
寄生虫
東洋眼中という眼の表面に寄生する寄生虫が原因の場合もあります。最近では東京でも報告が多くなってきています。発生頻度が高いわけではありませんが、見抜けないことも多く注意したい疾患です。
東洋眼虫はショウジョウバエの仲間マダラメマトイによって媒介されます。メマトイは、涙や目ヤニに含まれるタンパク質を摂食する性質をもっています。そのメマトイが、すでに感染している犬猫の涙や目ヤニを摂食するときに、虫卵を摂取します。
虫卵を摂取したメマトイの体内で幼虫が感染仔虫に変わり、また別の未感染の犬や猫の涙や目ヤニを摂食する時にメマトイの口器から感染して、猫の結膜や瞬膜の裏側に寄生します。
治療法は直接、虫体を摘出して治療します。東洋眼虫の感染仔虫はフィラリア予防薬によって駆虫できます。なので、フィラリア予防が浸透していない猫で気をつけたい病気です。
猫の涙対策
対策としては、ひどくならないためにエリザベスカラーをつけたり、目やにを早めに拭いてあげたりして、眼の周りを清潔にすることです。少し蒸らしたタオルで目を温めるのも効果的です。
基礎疾患の治療
すでに患っている病気などが原因で涙の分泌量が多い場合は、優先的に基礎疾患の治療を行います。
ゴミの除去
ゴミや煙などが原因の場合は、目の中に入ったゴミを取り除きます。環境に原因がある場合は、目の洗浄を行い、原因物質が猫に触れないように生活環境を改善します。
外科的治療
涙管の変形によって排泄がうまくいかず、流涙症を発症している場合は、外科的手術によって人為的に穴を開通し治療を行うこともあります。
点眼治療
抗生物質やステロイドを含んだ目薬を使用し治療を行います。一時的に症状が改善することもありますが、感染以外の他疾患が原因の場合にでは対症療法でしかなく、根本的な治療ではありません。細菌感染を防ぐことが目的です。
涙小管洗浄
詰まった涙管を洗浄することで涙管の通りをよくします。麻酔をかけて専門的な眼の器具を使って洗浄を行います。眼専門の病院でしかできないこともあります。
飼い主がしておきたい予防法
一番大切なことは、目を清潔に心がけることです。目やにが出たらすぐに取りましょう。毛にこびりつくと取るときに痛いので日々のお手入れが大切です。目を気にしてよく掻く仕草を見る場合は、エリザベスカラーをしましょう。
気にする性格の猫は、エリザベスカラーをしないといつまでたっても良くならないですし、最悪は失明の危険性さえあります。少しかわいそうですが、我慢のできない猫のために心を鬼にしましょう。
とくに、ペルシャやヒマラヤンなどの鼻ぺちゃ顔の品種は、目やにや涙の量が多く眼の疾患になりやすいので注意しましょう。涙やけは、ホウ酸水をコットンにつけて朝晩と二回、優しく吹いてあげましょう。1ヶ月くらいで涙やけが軽減されるはずです。
犬でもそうですが、眼がでかく飛び出てるような顔はドライアイにもなりやすいです。ドライアイによる眼球の損傷にも注意してください。充血や結膜炎があるなら、早めに病院に連れて行きましょう。目薬をするべきです。
飼い猫に涙だけではなく目やにも多く出ている場合、『猫に目ヤニや涙が出てきたら結膜炎かも!?その原因と治療法』の記事も合わせて目を通してみてください。
まとめ
涙の量が多いのは、涙の生産量が多いのか排泄システムがエラーを起こしているかです。原因を早く見つけて対処しましょう。
何事もそうですが、何か疑問に感じる症状や動きがあれば、動物病院へ行くようにしましょう。何もなければ「なくて良かった」となりますが、何かあってからでは遅い場合もあります。
かかりつけの動物病院は必ずつくっておきましょう。