「う゛ーーー!!」
低い声で、時に歯をむき出して唸る犬。そんな風にされたら誰でもこわくなりますよね。唸る犬は噛み付く可能性があってとても危険です。
「うちの子は唸るけど噛まないから大丈夫」
そうでしょうか?確かに、唸るだけであれば、害がないように思うかもしれません。しかし、飼い主に唸るということは、飼い主と犬の関係が不適切であることを意味しています。
飼い主に唸る犬は、他にもさまざま問題行動を抱えていることが多いのです。唸ることをやめさせる。それは咬傷事故を防ぐだけでなく、犬と飼い主とのより良い関係を構築するためにも、とても大切なことなんですよ。
目次
犬が唸る時の考えられる理由
基本的に唸りは「これ以上すると噛み付くぞ!」という警告。警告の先には「攻撃(噛み付く)」が控えています。では、具体的どのような理由で犬は唸るのでしょうか?
所有欲
大好きなおもちゃや毛布などを奪われそうになった時、「これ私の!取ったら怒るぞ!」と唸る。
恐怖心
怖いものや苦手なものが近づいてきた時、「これ以上近づくな!」と唸る。動物病院など、知らない場所や痛い思いをした場所で唸るのも、これに該当します。
食べ物の独占欲
ご飯を食べている時に近づくと唸る。これは食べ物を守るための唸りです。
優位性の誇示
自分より順位が下と認識した人や犬に対して「自分は強いんだぞ!」と唸って自分の優位を誇示します。
防護反応
子犬や大好きな飼い主などを守るために唸る。特に妊娠中や子育て中の犬は、この反応が強く出ます。
縄張りの防衛
犬の縄張り(自宅など)に侵入があった時「縄張りに入るな!」と唸る。
なぜ飼い主に唸るのか?
唸る理由は問わず、飼い主に唸る犬には「飼い主を信頼していない(群れの仲間として見ていない)」、もしくは「飼い主を自分より下に見ている(リーダーとして見ていない)」という問題があります。
そのような犬は、飼い主を引っ張り回して散歩する、「ダメ」と注意しても聞かないなど、唸る以外にも様々な問題を抱えてしまいます。
最も身近な「人」である飼い主を信頼できない犬は、「人」を信頼できない状態にあり、咬傷事故の危険性も高いです。飼い主も犬も安心して幸せな生活を送るために、その唸りは必ず解決しなければいけませんよ。
また、飼い犬がよく吠えるのにもちゃんと理由があります。無駄吠えなのかの見極めや、吠えるのを抑える方法を、『犬が吠えるのをやめさせたい!正しいしつけの方法教えます』の記事で詳しく解説していますので、合わせてぜひ参考にしてみてください。
犬が唸るのを止めさせる方法
まずは飼い主に対する唸りを止める
飼い主への唸りは致命的な問題。最優先して解決しなければなりません。飼い主への唸りが解決したその時には、犬は飼い主を群れのリーダーとして信頼しています。飼い主の指示で、飼い主以外の人や動物に対する唸りもコントロールできるようになっているのです。
唸るのを止めるだけでは意味がない
唸るという行動を強引に止めさせるのは、根本解決になりません。唸ること無く突然攻撃する(噛み付く)ようになってしまい、かえって咬傷事故の危険性が増すこともあります。
大切なのは、犬に唸るのは駄目だと理解してもらうと同時に、飼い主を「信頼できるリーダー」と認識してもらうこと。次に紹介する正しい唸りの止め方を実践すれば、それを叶えることができます。
正しい唸りの止め方の〜基本〜
「唸ったらおしおき」「唸らなかったらご褒美」。これを徹底すると、飼い主が主導権を握ることになり、犬は唸らなくなると同時に飼い主をリーダーと認識するようになります。
唸ったらおしおき
犬が唸ったら、即座に犬から顔をそむけて、無視する。
唸りが止まったら(唸らなかったら)ご褒美
犬に顔を向けて声を掛け、ご褒美としてフードやおもちゃをあげる。これで、犬は唸っていることで、飼い主に無視されていることや、唸らないことで、ご褒美がもらえりということを理解してくれるようになりますよ。
続いて、特によく問題となる唸りを事例に、その具体的な止め方を説明していきますね。
正しい唸りの止め方〜おもちゃの所有欲による唸り〜
- お気に入りのおもちゃを半日ほど犬に与えないでおく
- 犬をリードでつなぎ、好きなおもちゃを見せる
- おもちゃを欲しがって唸ったら、犬から顔をそむけて無視する
- 唸りが止んだら、犬に顔を向けご褒美としておもちゃを与える
- しばらく遊ばせたら、隙を見ておもちゃを回収する
※おもちゃにあらかじめヒモをつけておくと、回収しやすくなります - ①〜⑤を毎日繰り返し、唸らなくなったら⑦に進む
- 犬がおもちゃで遊んでいる時に、手(犬の好物を握っておく)をゆっくりと近づけ
※咬傷予防のため、革の手袋をつけると安心です - 犬が唸ったら、犬から顔をそむけて無視する
- 唸りが止んだら、犬に顔を向けご褒美として手に握っておいた好物を与える
- ⑦〜⑨を犬が唸らなくなるまで続ける
正しい唸りの止め方〜食事の独占欲による唸り〜
- 食器をふたつ用意し、片方にだけ1食分のフードを入れる
- お腹が空いている状態の犬をリードでつなぎ、空の食器を犬の目の前に、フードが入っている食器は犬の手の届かない所に置く
- フードを欲しがって唸ったら、犬から顔をそむけて無視する
- 唸りが止んだら犬に顔を向け、ご褒美としてフードが入っている食器のフードを数粒、空の食器に入れる
※噛まれる可能性があるので、フードは投げ入れる方が良い - ③〜④を1食分のフードがなくなるまで繰り返す
- ①〜⑤を毎食繰り返し、唸らなくなったら⑦に進む
- 食器をふたつ用意し、片方の食器に1食分の1/4のフードを入れる
- ふたつの食器を犬の目の前に置く(食器と食器は30cmほど距離をあける)
- 犬がフードを食べはじめたら、手(犬の好物を握っておく)をもう一方の食器(空の食器)に近づける。
- 犬が唸なったら、犬から顔をそむけて無視する
- 唸りが止んだら、犬に顔を向け、ご褒美として手に握っておいた好物を空の食器に入れる
- ⑦〜⑪を計4回(1食分のフードが無くなるまで)繰り返す
- ⑦〜⑫を犬が唸らなくなるまで毎食続ける
唸りの予防法
犬とスキンシップをとる、食事や散歩、被毛のケアなどをきちんとする。犬と生活する上での基本的なことを毎日行えば、信頼関係は育まれていきます。
その中で、ちょっとした注意を守れば、犬は飼い主を自分のリーダーと認識するようになります。これが唸りの予防法です。ここから、更に具体的な注意点をいくつか紹介していきますね。
主導権は飼い主が握る
遊びも食事も犬の望むままではいけません。犬の要求に常に応えると、犬は飼い主が自分の言いなりになると誤解し、主導権を握ります。かわいそうに思うかもしれませんが、犬が遊びに誘ったり、食事を欲しがったりしたら、無視しましょう。
そして、犬が諦めて落ち着いた頃に、遊んだり食事を与えたりしてください。もし、おもちゃで一緒に遊んだら、最後はおもちゃを犬から取り上げて、遊びを終了しましょう。
おもちゃを犬に渡したままにすると「このおもちゃは自分が勝ち取った!自分の方が強い!」と誤解してしまいます。
犬に遠慮しない
例えば廊下で犬が寝ている場合。そこを通る時は犬をまたぐのではなく、犬にどいてもらうこと。飼い主が犬に遠慮するようでは、主導権を握れません。
ただし、間違えてもどけるために犬を蹴ったりはしないでください。そっと手で体を押して声を掛け、どくように犬に伝えましょう。
常に冷静でいる
人と同じように犬も、冷静なリーダーに信頼を置きます。例えば犬がいけないことをした時には、声を荒げたり、ヒステリックになったりすることなく、冷静に注意してください。
時に唸る気持ちを受け入れ解決してあげる
飼い主に対する唸りは許してはいけません。一方で、他の人や動物にどうしても唸ってしまう場合。拭えない恐怖心が原因ならば、その気持ちを受け入れて、安心できる場所に一緒に移動してあげてください。
「飼い主に従っていれば、怖い目に会わない」そんな信頼もまた、飼い主が主導権を握ることにつながります。
これは散歩のときも同じ考え方になります。犬の散歩のしつけ方で悩んでいる飼い主さんも多いですが、『犬の散歩のしつけ方!好きなところへ行かせない方法』の記事を参考に散歩のしつけも同時に行うようにしましょう。
まとめ
「唸りの止め方」を読んで、大変に感じましたか?確かに、それなりの時間と根気が必要です。でも犬はとても頭が良い生き物。きちんと実践すれば、意外にあっという間に唸りが止められます。
時々、悲しい咬傷事故がニュースで取り上げられます。取り返しがつかないことになる前に、咬傷事故の前兆である唸りときちんと向き合いましょう。