「やっぱりB型だと思った!」「いかにもA型って感じよね」「O型だからだね」
こんな話、よくしませんか?私たち日本人は血液型にまつわる話がとても好きですよね。占いや性格診断、相性チェックなど、血液型は楽しい情報を提供してくれます。
ところであなたの猫は何型ですか?「えっ、猫にも血液型があるの?」と驚きましたか?実は猫にも血液型があります。
猫の血液型は人と同じ?血液型と性格に関連は?うちの猫の血液型を知らないけど大丈夫?そんな猫の血液型についてのさまざま疑問にお答えします。
目次
猫の血液型は3種類!
血液型の基礎知識!
血液の中には血球(赤血球、白血球、血小板)という細胞があります。血球は「抗原」という印を持っています。この印の違いで血液を分類したのが「血液型」です。
私たちにとって身近な人間のABO式の血液型。これは赤血球が持つ抗原の種類による血液型分類です。では、なぜ血球は抗原を持っているのでしょうか?
抗原は「これは自分です」と分かるための印。自分の印がついたものは攻撃しない。それ以外の印のものは攻撃する。こうして病原体や異物を排除し、病気から自分を守っています。自分を守らなければならないのは猫も同じ。だから猫にも抗原があり、血液型があります。
猫の血液型
猫の血液型はAB式と呼ばれ、A型、AB型、B型の3種類の血液型があります。O型はありません。
人と同じく赤血球の持つ抗原の違いによる分類ですが、人と猫では、同じA型であっても、その抗原は全く異なります。便宜上、人の血液型と同じアルファベットを使っているだけです。
猫の血液型の遺伝の仕方
血液型は、ふたつの血液型遺伝子の組み合わせで決まります。血液型遺伝子は両親それぞれからひとつずつ受け継ぎます。人の場合、血液型遺伝子はA、B、Oの3種類。その力関係はA=B>Oとなっています。
例えば、両親からAとOの血液型遺伝子を受け継いだ場合、Aの方がOより力が強いため血液型は「A型」。AとBの血液型遺伝子を受け継いだ場合、AとBは同じ力なので「AB型」になります。
猫の場合、血液型遺伝子はA、B、ABの3種類。人とは違い「AB」というひとつの血液型遺伝子を持っています。その力関係はA>AB>B。人と同じく、ふたつの血液型遺伝子のうち力が強い遺伝子が血液型になります。具体的に、猫の血液型は次のように遺伝します。
【猫の血液型の遺伝の仕方】
両親から引き継いだ血液型遺伝子 | 血液型 |
AとA | A型 |
AとB | A型 |
AとAB | A型 |
BとB | B型 |
BとAB | AB型 |
ABとAB | AB型 |
猫の90%はA型!?
人と同様に猫も血液型の分布に偏りがあります。日本で1986年に行われた猫の血液型の分布調査では、299頭のうち、なんと90%以上がA型でした。
圧倒的にA型が多く、その次に多いのがB型。AB型はとても珍しいです。純血種の中には、B型が比較的多い品種(例:アビシニアン、ラグドール)もいます。これは品種を確立するために、血筋が近い猫たちが交配された結果です。
猫は血液型で性格が違うかは不明
残念ながら、猫の血液型と性格の関連は分かりません。調査されたことがないのです。人では、血液型と性格の関連について調査されていますが、血液型の性格の関連は無いという結果になりました。
もしかしたら猫は、調査すれば関連があるという結論になるかもしれません。いつか誰かが調査してくれたら面白いですね。
飼い猫の血液型を調べる方法
血液型が重要な理由
人も猫も、自分の血液型以外の血液型に対する抗体(自分以外の異物を攻撃するたんぱく質)が血漿(血液の液体の部分)の中にあります。
この抗体は自分の血液型以外の赤血球を攻撃して、凝集させたり(固まらせる)、壊したり(溶血)します。血管の中でこのようなことが起きると、時として命を落とすことに。だから血液型がとても重要なのです。猫では具体的に、次の場合に血液型が重要となります。
輸血する場合
猫も輸血が必要な場合があります(大量出血した場合、血液をつくれない病気の場合、貧血の場合など)。
輸血の際にドナー(血液を提供する猫)とレシピエント(輸血を受ける猫)の血液型が一致していないと、レシピエントの体の中で、抗体が赤血球を攻撃し、凝集や溶血が起きます(拒絶反応)。人間と同様に輸血の際には血液型の一致がとても重要です。
交配する場合
B型のメス猫がA型のオス猫と交配した場合、A型の子猫が母乳を飲むと「新生子溶血」を発症し、死亡することがあります。母乳は母猫の血液から作られます。B型の母猫の血漿中(けっしょうちゅう)にあるA型に対する抗体は、母乳の中にもあります。
この抗体が、生まれた直後の子猫の腸から血液に吸収される。血液に入ったA型に対する抗体が子猫のA型の赤血球を攻撃して溶血を起こす。これが「新生子溶血」です。新生子溶血の発症予防法は次の3つです。
- B型のメス猫は繁殖に使わない(妊娠させない)
- B型のメス猫にはB型のオス猫をかけあわせる
- B型のメス猫から生まれた子猫は、母乳を飲む前に血液検査を行い、A型の子猫は母猫から隔離する(代用乳を飲ませる)
繁殖を考える場合、まずメス猫の血液型検査を必ず行いましょう。もしB型だった場合は、どの発症予防策をとるか、検討しなければなりません。
生まれて48時間以上経つと、腸から抗体が吸収されなくなるため、母乳を飲んでも新生子溶血の危険はありません。A型以外の血液型に対する抗体は、赤血球への攻撃性が強くないため、他の血液型の組み合わせでは新生子溶血は起きません。
飼い猫の血液型は知っておくべき!
もしもの時に備えて、猫の血液型を知っておいた方が良い?なぜ今まで動物病院の先生は血液型の検査をすすめてくれなかったの?と疑問に思いませんでしたか?
実は血液型が一致していても、輸血前に必ず「クロスマッチテスト(交差適合試験)」をします。クロスマッチテストは、ドナーとレシピエントの血液を混ぜて、凝集が起きないことを確認する試験。血液型が同じでも、時に拒絶反応が起こるため、その防止のために行います。
血液型が分かっていても、それだけですぐにドナーが決められる訳ではない。さらに猫のほとんどがA型という事実から、事前の血液型検査に積極的でない動物病院があります。
でも、血液型が分かっていれば、ドナーとなる猫の目星が付けられ、ドナーを早く見つけられる可能性があります。輸血が必要な一刻一秒を争う自体では、その小さなメリットが大きな意味になることも。
人医療では、輸血の際に血液型の申告があったとしても、医療事故防止のために必ず血液型の検査を行います。だから血液型をあらかじめ調べるメリットがないため、昔は当たり前のように行っていた赤ちゃんの血液型検査を行わなくなりました。
でもこれは血液バンク制度が整っている人での話。猫には血液バンクがありません。また人以上に血液型の分布に偏りがあります。もし愛猫が珍しい血液型だった場合、ドナーがなかなか見つからず困ることも。
あらかじめ血液型を検査すれば、珍しい血液型であった場合に、その事実を飼い主もホームドクターも把握できる。そうすれば輸血が必要になっても、迅速に対処できます。
「猫の血液型は絶対に知っておくべきものではないが、知っておくことに意味はある」。これが答えです。
猫の血液型の調べる方法
猫の血液型は動物病院で血液検査すれば分かります。簡単に検査できるキットがある動物病院では数分で結果がわかります。キットがない場合は、検査は外注になるので、結果がわかるのに数日かかります。
血液型検査のためだけに採血するのは、猫の負担になります。健康診断などで血液検査の際にあわせて行うのがオススメです。詳しくはホームドクターに相談すると良いでしょう。
猫の健康診断については、『定期的に必要!?猫の健康診断にかかる費用まとめ』の記事で詳しく費用や検査内容を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
輸血の時の血液の入手先
動物病院に供血猫がいるって知っていますか?猫の血液バンクはありません。では輸血が必要となった場合、どうしているのでしょうか?実は輸血に備えて「供血猫」という血液を提供する猫を動物病院で飼育しています。
しかし、全ての猫の輸血に備えるだけの供血猫を飼育することは難しく、時として、他の患者さんや近所の動物病院から協力を得たり、血液のかわりとなる薬でしのぐ場合もあります。猫の輸血に対する備えは十分とは言えません。
私たちにできること
ボランティアとしてドナー登録し、輸血が必要な猫がいる際に協力するシステムを採用している病院が少しずつ増えてきました。ドナーになるには、ワクチンを接種している、過去に輸血をしたことがない、供血に耐えうる体格をしている等の条件があります。
ホームドクターがそのようなシステムを採用している場合は、ドナー登録について、一度検討してみてください。動物医療にも助け合いが必要です。
また猫の多頭飼いの場合には、あらかじめ全員の血液型を調べておくことで、いざという時に、家族同士で助け合うことができるかも知れません。
まとめ
「猫にも血液型があるのですね」と驚く方がいます。血液型があるのは猫だけではありません。犬も牛も豚も、みなそれぞれに血液型があります。
つい人だけ特別な生き物と考えがちですが、体の仕組みは、人と人以外の動物でとてもよく似ています。それは血液型だけではありません。
人と同様に猫も肥満は関節や心臓の病気の原因に。年をとれば白内障や認知機能障害になることもあります。人と同じように、猫の生活や病気についても考え、予防したり備えたりすることが大切です。