猫のしゃっくりを見たことありますか?しゃっくりといえば「ヒクッヒクッ」と特有な音をイメージしますよね。でも猫のしゃっくりは人のしゃっくりとは様子が違います。人間と同じようなあの「ヒクッヒクッ」という音がしません。
猫のしゃっくりは、ほとんどが生理現象。心配いらないことが多いです。でも特有の音がしないから、他の病気の症状をしゃっくりと誤解してしまうことも。食事の問題を抱えているサインであることもあります。
ちょっと分かりづらい猫のしゃっくり。だからこそきちんと知ることが必要です。
目次
猫がしゃっくりをする原因
しゃっくりとは何か
しゃっくりは、横隔膜が何らかの原因で痙攣して起きる、急速に息を吸う症状です。横隔膜は胸とお腹を仕切る筋肉の膜。
弛緩(しかん)した状態だと、胸側に膨らんだドーム状の形をしています。横隔膜は、収縮と弛緩を繰り返すことで、呼吸においてとても重要な役割をします。
息を吸うとき
横隔膜が収縮する→横隔膜がピンと張った状態になり、ドーム状から平らになる→平らになった分だけ胸側の空間が増えるため、胸にある肺が膨む→息を吸い込む
息を吐くとき
横隔膜が弛緩する→横隔膜が平らからドーム状になる→ドーム状になった分だけ胸側の空間が減るため、胸にある肺が縮む→息を吐き出す
猫のしゃっくりは音がしない
人のしゃっくりの「ヒクッヒクッ」という音は、急速に吸い込まれた息が声帯を通過して声帯が閉じる音。猫にも声帯はありますが、人とは構造が違うため、音がしません。
猫のしゃっくりは、ただ体が動くだけ。参考の動画を以下に掲載しておきます。だからちゃんと猫を観察していないと、見逃してしまうことがあります。
猫のしゃっくりはほとんどが心配ご無用
猫のしゃっくりのほとんどが、一時的に受けた何らかの刺激に対する生理現象として起こるもの。病気ではないので心配はいりません。しゃっくりを引き起こす刺激には次のようなものがあります。
- 早食い(丸のみ)
- 食べ過ぎ
- 冷たい水を飲む
- 水の飲み過ぎ(水と一緒に空気もたくさん飲んでしまう)
- 激しい運動
- 寒暖の差(急に寒いところへ移動する)
食事や飲水が刺激になりやすいのは、横隔膜に食道(食べ物や水が口から胃に向かうための通路)が通る穴があいており、さらに横隔膜が胃と接しているという構造的特徴のためです。
病気の可能性があるしゃっくり
しゃっくりが1日以上続く、1日に何度もする、しゃっくり以外の症状がある。いずれかひとつでも該当する場合は、脳神経系の病気(例:脳腫瘍)や横隔膜の病気(例:横隔膜の炎症)などの可能性があります。早めに動物病院に行きましょう。
しゃっくりと間違いやすい症状
しゃっくりと間違えないでほしい症状
特有な音がしない猫のしゃっくり。他の症状をしゃっくりと誤解し、病気を見逃してしまうことがあります。具体的にしゃっくりと間違いやすい症状を紹介します。
咳
「ケッケッ」「ヒーヒー」「グーグー」とノドを鳴らしながら息を吐きます。ノドの病気や違和感が原因です。
嘔吐・悪心(気持ち悪い)
発作的に息を吸う仕草を繰り返し、息を吸うときにノドや胸から「ゴロゴロ」「ギュー」と、液体物が動くような音が鳴ります。人と比べ、猫は生理的に嘔吐しやすいと言われていますが、もちろん病気が原因の場合もあります。
逆くしゃみ
発作的に鼻から息を吸う仕草を繰り返し、息を吸うときに鼻の奥から「グーグー」と音が鳴ります。鼻からほこりなどを吸い込んだことで発症するもので、心配いりませんが、繰り返す場合や、他の症状を伴う場合は、病気の可能性があります。
猫のくしゃみについては、『猫がくしゃみをしている原因は?病院へ連れて行くべき?』の記事を合わせて参考にしてみてください。
しゃっくりと他の症状を見分けるポイント
しゃっくりと他の症状(咳、嘔吐、悪心、逆くしゃみ)を見分けるポイントを紹介します。
しゃっくり | 咳、嘔吐、悪心、逆くしゃみ | |
音 | しない | 鼻やノドから特有の音がする |
リズム | 比較的ゆっくり (数秒〜数十秒間隔) |
早い ※発作的に症状が出ることが多い |
姿勢 | いつもと変わりない | 四つん這いで首を伸ばして頭を下げる ※座った姿勢の場合もある |
表情 | いつもと変わりない | 苦しそう (目を大きく開く/閉じる) |
一般的な症状の型にはまらないケースもあるため、見分けるポイントはあくまで参考。見分けがつかない場合は、動物病院に行くことをおすすめします。
嘔吐、下痢、元気消失、食欲不振、目やに、鼻水、よだれなど、他にも症状がある場合は、病気の可能性が高いので、動物病院に行きましょう。
しゃっくりが止まらない時の対処法
しゃっくり(病的なものを除く)の止め方
生理的なしゃっくりは通常、数分〜数十分で自然におさまります。数時間続くことがあると言われていますが、そこまで長く続くことは滅多にありません。
生理現象なので放っておいて大丈夫。とは言え、しゃっくりが続くと猫も疲れてしまいます。必ず効果があるというわけではないですが、しゃっくりを止める方法があるので試すのも良いでしょう。
- 猫の胸やノドを優しくマッサージする(やや強めに撫でる程度)
- 猫の体を毛布で包んで温める(寒暖差が原因のしゃっくりの場合)
- 水を飲ませる
※しゃっくりしている時に水に飲ませるのは、なかなか難しいものです。無理に飲ませるとむせることも。無理は禁物です。水の入った器を猫の口元に寄せても飲まなければ、水で濡らした手を口元に近づけて、舐めさせてみてください。
※甘い水(砂糖や蜂蜜を溶かした水)を飲ませると一層効果があります。ただし蜂蜜は、子猫にボツリヌス中毒を起こす可能性があります。1歳未満の子猫には、蜂蜜を使用しないでください。
病気の可能性があるしゃっくりは止めようとせず動物病院へ
病気の可能性があるしゃっくりは、自力で止めようとせず、動物病院に行きましょう。しゃっくりしている様子を携帯電話などで動画撮影すると、診断の助けになります。
しゃっくりの頻度や継続時間、しゃっくりするタイミング(食後、走った後、寝ている時など)を獣医師にきちんと伝えられるように準備してください。
食後のしゃっくりは食事の問題を抱えているサイン
猫の生理的なしゃっくりは病気ではないとはいえ、多くは早食いや食べ過ぎなどが原因。食事の仕方に問題を抱えています。
もし食後にしゃっくりするなら、今のフードのあげ方は愛猫にあっていないということ。フードのあげ方を見直して、しゃっくりの再発を防止しましょう。
フードの1回量を減らし、回数を増やす
一度にたくさんのフードをあげると、早食いします。また食事の間隔がながく、空腹な状態で食事することも早食いの原因に。1回のフードの量を減らし、回数を増やしましょう。1日の適量を超えない限りは、食事の回数は1日何回でも大丈夫です。
もしライフスタイル的に、1日に何回もフードをあげることが難しい場合は、食事の回数は増やさず、食事の際に数粒ずつ器にフードを入れる方法(空になったらまた数粒足す)が良いでしょう。
一定量を一定時刻にあげることができる自動給餌器を利用するのもひとつの手です。猫に与える餌の適切な量については、『猫に与える一回の餌の量はどのくらい必要?年齢別の正しい量』の記事を参考にしてみてください。
時間をかけて食べるように工夫する
あえて食べにくい構造をした器が市販されています。それを使って、ゆっくり食べるように仕向けると良いでしょう。
またフードの粒のサイズが大き過ぎても小さ過ぎても、丸のみして早食いになります。適切な粒のサイズは年齢による目安がありますが、個体差もあります。様々なサイズを試し、丸のみしないサイズを探ってください。
1日の食事量を見直す
猫が欲しがるままにフードをあげたり、自分の感覚であげたりしている場合は、食べ過ぎの可能性があります。
フードの袋に1日量の目安の記載があります。袋の記載はあくまで目安で、20%程度は増減させて問題ありませんが、あまりに多いのはいけません。フードの量やあげるタイミングをきちんと管理して、食べ過ぎを防ぎましょう。
まとめ
猫のしゃっくりのキーポイントは、以下のことに注意してみてください。
- ほとんどは病気ではない
- しゃっくりと間違いやすい症状がある
- しゃっくりする猫は食事の問題を抱えている可能性がある。
「うちの猫はしゃっくりしないから、食事のあげ方に問題はない」と思った方。ちょっと待ってください。「しゃっくりしない=食事の問題がない」とは言えません。
体質的にしゃっくりをしやすい猫としづらい猫がいます。しゃっくりしづらい体質の猫は、いくら食事の問題があっても、しゃっくりが出ないことも。
食事の問題は時として、大きな病気につながることがあります。しゃっくりの有無問わず、これを機に一度、フードのあげ方が適切かどうか考えてみてはいかがでしょうか。