猫も長年飼っていれば、いつかは年をとり老衰を迎えることになります。若い頃と比べると、起きている時間も少なくなり、これは老衰なのかしら?と思い始める飼い主さんもいるでしょう。
今回は、猫の老衰とは一体どのようなものなのかということと、老衰を迎えた猫へどのように寄り添っていけばいいのかを紹介していきますので、今後の猫との寄り添い方についてぜひ参考にしてみてください。
目次
猫の老衰とは?
老衰とは
老衰という言葉を使うと、イコール「死」を連想してしまいがちですが、老衰というものはそれそのものが「死」ということではなく、年齢を重ねるのと共に身体の自由がきかなくなってくることを指しています。
では、何歳になると老衰というのか。それは個体差によって変わってくるのですが、猫の平均寿命である14~15歳を過ぎた頃から体調の衰えを感じてきた場合に、その状態そのものを老衰と呼んでもいいでしょう。
大きなくくりでいうと、猫の高齢化に伴い若い頃とは明らかに違う様子が出てきた場合には、それらは全て老衰になる前兆と捉えることができます。では、具体的に老衰と思われる症状について紹介していきましょう。
運動能力が低下する
猫は年を重ねていくのと並行して筋肉も衰えていき、運動能力がだんだんと落ちていってしまいます。そのなかでも顕著に表れるのがジャンプ力でしょう。
今までは軽々とジャンプをして登ることのできた棚の上や、ソファーの上にすら簡単に登ることが段々とできなくなっていきます。
猫はそうなってくると、活発に運動をすることも少しずつ減っていき、自分のお気に入りの場所でゆっくりと寝て過ごすことが多くなっていくのです。
この頃になると必要最低限しか動かなくなっていきますので、飼い主さんの帰宅時には玄関まで必ず出迎えてくれていた猫が、それすらしなくなるという話もよく耳にします。
被毛のツヤがなくなってくる
老衰になってくると、食事や水の摂取量も段々と減っていき、心臓や腎臓などの内蔵系の働きも悪くなってきてしまいます。
それに伴い、被毛が白っぽく変化していったり、ツヤそのものがなくなりパサついたような毛質になっていったりすることがあります。
様々な物への反応が鈍くなる
老衰を迎える頃には、猫もかなりの高齢となってきているはずですので、身体の自由がきかなくなるのと同じように、脳の働きも段々と鈍くなっていってしまいます。
耳も遠くなり、名前を呼んでもなかなか反応をしなくなったり、トイレの場所以外で粗相をしたりすることが出てくる場合もあるでしょう。夜中に突然鳴き続けるなどの、痴呆の症状が出てくる猫もいます。
飼い猫が老衰している時の飼い主の寄り添い方
食事の介助
老衰になり寝たきりの時間が多くなってくると、猫は自分で食事を取ることが難しくなっていきます。
たとえ食べられる量が少なくなっていっても、毎日食事を取らないと本当にあっという間に弱っていってしまいますので、少しでも多く食べてもらうためには食事の介助が必要になってくるでしょう。
食事は消化をよくするために、フードをふやかすなどして流動食状態のものを用意してあげてください。食べられる量が少なくなっている場合には、少量でも栄養がしっかり摂取できるように栄養価の高いフードを選んであげましょう。
食事を与える時には、寝たままの状態で与えてしまうと誤飲の可能性が出てきてしまいますので、飼い主さんが抱っこをして状態を起こした恰好で少しずつ口元に運んであげてください。
猫の飲み込む力に応じてフードの固さは調整し、あまりにも飲み込みが悪い時にはフードのなかにオリーブオイルを1~2滴垂らした物を与えてみましょう。
オイルの効果でフードの滑りがよくなりますので、飲み込む時の助けになってくれます。食事の最後には、口の中を綺麗にするためにも、水を少し飲ませてあげてください。
体温調整
老衰になってくると血液の循環も悪くなっていきますので、体温が低くなりがちです。
子猫の頃のように、自分では体温調整はできなくなってきていますので、冬場であれば室温を暖かくしたり、ペット用の保温マットなどを使用したりして常に保温をしてあげるようにしてください。
夏場の暑さも猫の身体にはこたえますので、エアコンを利用して室温を27~28度程度に保ちながら、冷気が猫の身体に直接当たらないような場所に寝かせてあげるようにしましょう。
この時、猫の肉球を触ってみて冷たく感じるようでしたら、体温が低くなっている証拠ですので、冷やしすぎないようにタオルなどを身体にかけてあげて調整をしてあげてください。
被毛や皮膚のケア
老衰になると、自分でグルーミングもほとんどしなくなってしまいます。すると、被毛はツヤがなくなったように見えるだけではなく、埃や汚れが付いたままとなり被毛が数本固まったような感じになってくるでしょう。
皮膚や被毛が汚れたままになっていると、雑菌が繁殖して皮膚病の原因にもなりますので、飼い主さんが定期的にケアをしてあげてください。
老衰の猫は、シャンプーをすると体力を激しく奪ってしまうため、ぬるま湯で濡らしたタオルを使用して身体を拭いてあげます。時には、水を使わないシャンプーを使用して綺麗にしてあげましょう。
皮膚を綺麗にしてあげた後は、ブラシで被毛をとかしてあげてください。老猫の皮膚はとてもデリケートですので、身体を拭く時もブラシをする時も、常に優しく行うようにしましょう。
老猫はお風呂ではなく、飼い主さんが体をしっかり拭いてあげましょう。詳しくは、『老猫をお風呂に入れないで!高齢猫の体を清潔にしてあげる方法』の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
排泄物の処理
身体の自由がきかなくなってくると、自力でトイレに行くのも難しくなってきます。
猫は大変綺麗好きな動物ですので、自分の意識のなかではきちんと決められた場所で排泄をしようとするかもしれませんが、排泄の感覚も鈍くなってきますのでトイレにたどり着く前に粗相をしてしまうこともあるでしょう。
少しでも自分で歩いて行く力があるうちは、トイレの場所を寝床の近くに移動するのもおすすめです。それが無理になってきましたら、ペット用のおむつをしてあげるようにしましょう。
ただし、ずっとおむつを付けたままですとお尻が蒸れてしまうこともありますので、排泄のリズムがつかめるようでしたら、おむつを外しておく時間も作るようにしてください。
排泄物でお尻が汚れてしまった時には、ぬるま湯で部分洗いをするなど清潔に保つようにしましょう。また、部分洗いした箇所は、濡らしたままにしておくと雑菌が繁殖する原因になりますので、必ず根元まできちんと乾かすようにしてください。
爪切り
寝たきりになると、当然爪とぎもしなくなってしまいますので、飼い主さんが定期的に爪を切ってあげましょう。全ての猫がそうだとは限りませんが、老猫になると爪をしまえなくなってしまう猫がいます。
そうなると、伸びた爪で自分の皮膚などを傷つけてしまうおそれがありますので、爪の伸び具合には注意をするようにしてください。
身体のマッサージ
すっかり寝たきりになってしまった時には、身体全体を優しくマッサージしてあげるのもおすすめです。
長期間動かずにいると、筋肉がどんどん衰えていくだけでなく、身体も固まり血行も悪くなってしまいますので、手や足の関節を軽く動かしてあげたり、足の付け根の辺りなどをマッサージしてあげたりしましょう。
また、いつも同じ方向ばかりを向かないように、1日に数回向きを変えてあげることにより、床ずれを防止することができます。関節のマッサージについては、猫が嫌がるようでしたら無理に行わないようにしてください。
覚悟の気持ちを持つ
老衰になるということは、その寿命はあとそう長くないかもしれません。残された最期の時を、家族としてどのように過ごしていくのかを少しずつイメージしていくことも必要になってくるでしょう。
昔と比べると、今は獣医学も大変進歩しています。老衰になり自力で食事を取ることができなくなった猫でも、動物病院で点滴などの処置をしてもらえば、まだ命は永らえることが可能となるでしょう。
いわゆる延命処置を取りながら動物病院にて最期の時を過ごすのか、最低限の処置のみをして自宅にて飼い主さんと最期の時を過ごすのか、その時の猫や飼い主さんの状況によっても変わってくるとは思いますが、その辺のことも念頭に入れ始めておくようにしてください。
まとめ
猫の老衰について、その症状や飼い主さんがどのように寄り添って世話をしてあげればいいのかを紹介してきました。
老衰を迎えるまで長く一緒に過ごした猫は、かけがえのない家族と同じ存在です。残された時間をどのように過ごしていくのかは、本当に大切なことになります。
寝たきりの猫のお世話をしながら、仕事や学校もこなす飼い主さんは大変な負担がかかるとは思いますが、ご家族や動物病院などの手を借りながら、最期の時まで側に寄り添ってあげてください。
大好きな飼い主さんが側にいれくれることが、猫にとっては最高の幸せではないでしょうか。