寒くなってくるとお酒を熱燗にして一杯、というお父さんもいらっしゃるでしょう。
そのお酒のあてにイカやスルメがよく登場しますが、ほろ酔いになって可愛い愛犬にウルウルした瞳で見つめられて「スルメ」なんて与えてしまったりしたら、後から大変な事になりますよ!
お酒で判断能力が低下している時にやってしまいがちなのがイカなのです。「イカ」は犬にとって良くない食材なのですよ。
今回は犬がイカを食べてしまった時にどういった影響が犬に出てしまうのか詳しくお話していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
犬にイカを食べさせる理由はない
愛犬には健康で長生きして欲しいと思う飼い主の気持ちは共通している事ですよね。愛犬が好んで食べてくれて、たくさんの良い栄養素が入っている食材があれば食べさせたいと飼い主さんは思われますよね。
イカはとても栄養素が豊富で優れた食材でダイエット食にも多く使われますし、犬にも良いんじゃないかなと思われる飼い主さんもいらっしゃるでしょう。
栄養面で言えば良い食材なのですが、イカは残念ながら良い影響だけではないのですよ。
イカは食べ方を変えても犬に悪い影響がある
私たちが普段イカを食べる時は「生イカ」「加熱したイカ」「スルメ」の食べ方がありますよね。それぞれ違う食べ方をしたとしても、犬に違った悪い影響があるのです。
生イカを食べた場合は、チアミン欠乏症・アニサキス症という病気になる危険性があります。
加熱したイカは消化が悪く、消化不良による下痢・嘔吐を起こす事があるのです。そして、加工品のスルメですが、その特徴から食道・腸の閉塞を起こす事があるのです。
イカ以外の食材からでも犬に必要な栄養は取れる
イカはたんぱく質が多く、脂質が少ないので低カロリーなとても良い食材です。イカにはアミノ酸の一種であるタウリンを豊富に含んでいます。
タウリンは、疲労回復効果や肝臓細胞の保護、血圧を下げる効果など、犬にとっても良い成分ではあります。それにビタミンEが特に豊富です。抗酸化作用で犬の健康のためにはたっぷり与えたい必要な栄養素です。
しかし、すでに愛犬に与えているドッグフードにもこれらの栄養素が豊富に含まれている事が多いのです。老犬用など犬の特徴に合わせたフードには飼い主さんが知っている以上にしっかりと必要な栄養素が含まれています。
それでも更に必要と感じるのであれば、安全がわかっている食材や犬用のサプリメントを与えた方が安全ではないでしょうか。というもの、これからご説明する内容をご覧になったら愛犬にイカを与えたいとは思わなくなりますよ。
犬がイカを食べた時に起こる症状
先ほどご説明したイカを食べた時の影響として病気を上げましたが、ではそれらは実際にはどんな症状を起こして、犬の体の中ではどういった事がおきているのでしょうか。
まずは急死してしまう危険性があるスルメからご説明していきましょう。
スルメを食べた時の閉塞
お酒のあてによく選ばれるスルメですが、生イカより加熱したイカより危険な事をご存知でしょうか。先ほどスルメを丸呑みしてしまった場合、閉塞を起こしてしまう事がある事に触れましたが、急死するほどの怖い病気なのです。
スルメはイカを乾燥させていますよね。犬がスルメを食べた場合、スルメはお腹の中で水分を吸って膨らんで量によっては内臓を圧迫して危険になる事があるのです。
また、丸呑みすれば食道や腸で詰まって閉塞という状態になります。閉塞した部分が充血したり、穴があく事もあります。この状態は犬にとって、とても危険なのです。
食道の閉塞
- よだれと苦悶を伴う嘔気
- 呼吸困難
- 呼吸不全やショック状態で死亡する
腸閉塞
- とにかく吐きまくる
- 激しい腹痛(背中を丸める姿勢をとる)
- お腹がガスで膨れ上がる
- 急死する
チアミン欠乏症
生イカに含まれるチアミナーゼという酵素がビタミンB1を分解するのですが、たくさん生イカを犬が食べるとチアミン(ビタミンB1)欠乏症という病気にかかってしまう危険性があります。
チアミンは脳への唯一のエネルギー源であるブドウ糖の代謝に必須な栄養素で、他の多くのビタミンと比べて比較的早く症状が現れる栄養性欠乏症なのです。
早期発見と早期治療が重要ですし、速やかに適切な治療がなされない場合は2,3日で死に至る事もあるのです。ではその症状について具体的にご説明しましょう。
1.初期症状
- 食欲の低下
- 成長不良
- よだれを垂らす
2.中期症状
- 腹側に頭を曲げる
- 短い緊張性の痙攣発作
- 眼振
- 多発性神経炎(手足のしびれなど)
- 心室肥大
- 立つことが難しくなる
- 手足を動かしにくくなる
- 部分的に麻痺が起こる
後期症状
- 筋肉の硬直
- 昏睡
- 死亡
チアミン欠乏症は猫だけの病気ではない
「猫にイカ刺しを与えると腰を抜かす」というのをお聞きになって事があるかと思いますが。犬より猫に多くみられた病気だからなのですが、その理由はどういったことからなのでしょうか。
「腰を抜かす」というのは神経症状が出て歩行が困難になっている事から、そう言われるようになったのです。具体的には「フラフラする」または「歩けなくなる」症状があります。
実は猫は犬よりビタミンB1を必要とする量が多いのです。また猫が生の魚介類を好んで食べる習性があるためなのです。しかし犬も人もなり得る病気で症状も同じなのです。
塩辛は塩分も高く危険度が高い
イカの内臓にチアミナーゼが多い事はわかっています。
塩辛はとても塩分が高いですから犬には良くない食材ですが、それだけではなく内臓を加熱しないで塩漬けにして酵素と微生物びよって発酵させた食べ物です。決して与えないようにしましょう。
アニサキス症
近年、流通が良くなった事と食品衛生法の一部が改正されアニサキス症の報告が義務付けられた事でアニサキス症にかかった件数が急激に増加している事でメディアにも多く取り上げられていましたね。
また水温上昇があるせいか、以前はあまりアニサキスを見られなかった魚にもついている確率が上がったという事実もあるようですが、イカは以前からアニサキスがよくついている魚介類です。
ちなみに、イカ刺しというのはこのアニサキスを切ってしまう事で被害をなくす効果があります。アニサキス症は以下のような症状です。
- 激しい腹痛(背中を丸める姿勢を取る、元気がなくなるなど)
- 嘔吐する
万が一、生イカを食べたら危険なのか
今、販売されているドッグフードは良質な物が多く、ビタミンB1もしっかり入っているので、犬が生イカを少量食べたぐらいでは、チアミン欠乏症になることは、ほとんどありません。
ただし、長期にわたってチアミナーゼを多く含む食品を食べさせたり、偏食をさせたり、食事量が取れない場合には注意する必要があります。
また、チアミナーゼは熱を加えると活力を失いますし、アニサキスも加熱する事で死滅します。犬はよく噛むという事はしないので、加熱していないイカはアニサキスの危険はあります。
イカを食べた後に先ほどご説明した症状が出た場合は動物病院に連れていきましょう。その他にも、犬が食べてはいけない食べ物は実はたくさんあります。
詳しくは、『犬に豆腐や納豆を与えても大丈夫?!犬の健康上良い食べ物まとめ』の記事で紹介していますので、飼い主さんはぜひこちらの記事と合わせて参考にしてみてください。
まとめ
栄養価が高いイカですがこれだけのリスクが高いイカを愛犬に食べさせて栄養を摂らせるよりも安全とわかっている食材から摂取させた方が飼い主さんも安心して与える事ができるのではないでしょうか。
また「ビタミンB1」は体内で合成できないため、食べる事によって得られる栄養素です。飼い主が愛犬の食生活を管理する事で愛犬の健康を保つ事ができる事がよくわかっていただけたことでしょう。