犬の心臓病と聞いたら、やはり怖いですよね。心臓に何かあったら命の危険性もあります。
勿論その危険性は高いですが、予め原因や症状を知っておけば、すぐに気がついて病院に行くことで命が救われる可能性がぐっと高くなります。
一般的に犬の約10%が何らかの心臓病を患っている言われており、その種類は大きく分けて2種類。⑴生まれつき心臓に問題がある場合(先天性)と、⑵生まれてから何らかの原因で心臓病になる場合(後天性)があります。
生まれつきの病気ではない場合、人間なら生活習慣病、タバコ、お酒、などの言葉が出てきますが、犬の心臓病は殆どの場合、高齢になると共にその発症率が上がります。
ここでは犬で多くみられる心臓病の原因や症状、治療費の目安を紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
犬の心臓病の基礎知識
犬で典型的な心臓病と言えば、”うっ血性心不全”という状態がトップに上がります。
一度発症してしまうと進行していく病気ですが、適切な治療をしていくことで、その進行を遅らせて長生きをすることが可能になります。この原因の一つは年齢的なものであったり、感染症によるものであったりします。
これらの心臓病は、基本的に心臓が大きくなり、全身に血液を巡らせるポンプの機能が低下して行きます。その結果、”うっ血”して液体が体の中に溜まっているような状態が出来上がります。
人間でも浮腫(むくみ)という言葉を聞いたことがあると思いますが、体に水が溜まっている状態で、犬でも起こる症状です。
典型的な心臓病のイメージが湧いて来たかと思いますが、もう少し具体的に、⑴生まれつきの病気(先天性)と⑵生まれてからの病気(後天性)に分けて個々の病気を紹介します。
⑴生まれつき(先天性)の心臓病の種類
人間と同様に、生まれた時から心臓に奇形がある場合があります。これらは非常に珍しい病気で、症状に幅があり、非常に重症の場合には寿命が短くなってしまいます。主なものは次の通りです。
- 動脈管開存症
- 肺動脈狭窄症
- 大動脈狭窄症
- 心室中隔欠損症
- ファロー四徴症
まずはこれらの病気がどういうものかを説明して行きます。
①動脈管開
お腹の中にいる時代には繋がっていた血管が、生まれた後に塞がることになるにも関わらず、繋がったままでいる状態です。
②肺動脈狭窄症
心臓には肺動脈という心臓から肺につながる血管がありますが、この血管にある弁に異常がある為、心臓の右側に負担がかかります。
③大動脈狭窄症
心臓には大動脈というとても太い血管がありますが、この血管にある弁に異常があり、血液の流れを悪くします。
④心室中隔欠損症
心臓の右と左を分け隔てる中央の壁に一部、穴が空いており、心臓の右側と左側の血液が肺の中で混ざってしまい、肺から心臓の左側に血液が戻る時の血液量が増えて負担がかかります。
⑤ファロー四徴症
肺動脈狭窄症、心室中隔欠損症、右心肥大、大動脈騎乗、という4つの症状が合わさった複雑な状態で、動脈血に静脈血が混ざってしまいます。
⑵生まれてから(後天性)の病気
犬の心臓病は後天性なものが殆どであり、先にも述べたように高齢になるにつれて発症したり、感染症や、交通事故で心臓にダメージが起きる、などがあります。中でも、普段、動物病院で多く見られる病気は以下の3つです。
- 僧帽弁閉鎖不全
- 拡張型心筋症
- フィラリア症
これらをもう少し詳しく見てみましょう。
①僧帽弁閉鎖不全
原因不明のこの病気は、どの犬種もなる可能性がありますが、特に中年期から高齢期にかけての小型犬や中型犬に非常に多く、年齢と共に症状は進行していきます。
10歳を超えた小型犬の1/3はこの病気であると言われており、動物病院で犬の心臓病と言えば、まずこの病気を想像します。それぐらい多く、治療薬も研究が盛んであることは言うまでもありません。
僧帽弁は心臓の左側にある左心房(上側)と左心室(下側)の間の二枚の仕切り(弁)ですが、正常な場合には、心臓が収縮した時には閉じて左心室から左心房への逆流を防ぎます。
この病気になった場合には、弁は肥厚(ひこう)して完全に閉まることができません(閉鎖不全)。
その結果、逆流した血液は左心室と肺を圧迫して(うっ血する)、肺に水が溜まる肺水腫などを起こします。この弁の問題に伴って、心臓の右側にある三尖弁が閉鎖不全を起こすこともあります。
僧帽弁閉鎖不全は、特になりやすい犬種がいるので、当てはまる犬種を飼っている飼い主さんは気をつけておきましょう。
【特になりやすい犬種】
- トイプードル
- ミニチュアプードル
- ミニチュアシュナウザー
- マルチーズ
- チワワ
- ポメラニアン
- シーズー
- フォックステリア
- コッカースパニエル
- ペキニーズ
- ボストンテリア
- ミニチュアピンシャー
- ウィペット
- キャバリアキングチャールズ
②拡張型心筋症
心臓を構成している筋肉(心筋)の病気を心筋症と言い、拡張型心筋症はその一つで、大型犬に特に多いです(体重が12キロ以下の犬には珍しい)。
タウリンやカルニチンなどの栄養面での欠乏により二次的に発症することもありますが、現在ではペットフードの改善等であまり見られず、なりやすい犬種の存在から遺伝的なことが疑われています。
特に左側の左心房と左心室の心筋が薄く伸びて広がってしまい、心臓の収縮力が低下し、肺に血液を送りづらくなります。
その結果、”うっ血”を招いて肺に水が溜まる(肺水腫)などの問題が起こります。年齢と共に発症する確率が上がり、4歳から10歳で発症することが多く、メスよりもオスの方がなりやすいとされています。
特に、オスのドーベルマンピンシャーはメスより早く発症する傾向があります。
【拡張型心筋症にかかりやすい犬種】
- グレートデン
- ドーベルマンピンシャー
- セントバーナード
- ボクサー
- アフガンハウンド
- ダルメシアン
- コッカースパニエル
- ブルドッグ
③犬フィラリア症(犬糸状虫症)
蚊の体の中にいるフィラリアの幼虫が犬の体の中で半年かけて成長し、成虫になって心臓に寄生することで、うっ血性心不全を発症します。
幸い予防意識の高い飼い主さんが増えたことで、かなり感染犬は減りましたが、流行地ではまだ沢山いるのが現状です。
フィラリアは心臓の右側(肺動脈や右心房)に寄生しており、その部分では大変な圧がかかり、血液が流れにくくなります。
成虫は、場合によっては右心房から右心室に移動する途中で三尖弁(右心房と右心室の間にある弁)に絡みついて、弁は完全に閉鎖できなくなり、急性の症状が出ることもあります(大静脈症候群、ベナケバシンドローム)。
(以上、参考文献 THE MERCK VETERINARY MANUAL 、SMALL ANIMAL INTERNAL MEDECINE)
犬が心臓病になった時の原因と症状
心臓病の原因
先天性の心臓病と代表的な3つの後天的心臓病を紹介しましたが、主な原因をまとめますと以下の原因があります。
- 先天性
- 年齢や遺伝が関係している
- 感染症
心臓病の主な症状
心臓病により血液の循環が悪くなる状態(うっ血性心不全)には共通した症状が沢山あります。飼い主さんが気付きやすい症状の主なものは次のようになります。
- 運動不耐性(散歩を嫌う、途中で止まるなど)
- 食欲不振
- 体重減少(或いは腹水などによる増加)
- 咳
- 呼吸困難
- チアノーゼ(舌の色が紫になる)
- お腹が膨れる(腹水)
- 失神
- 突然死
心臓病の治療方法とかかる治療費
思い当たるような症状に気づいた場合には、迷わず病院にすぐに連れて行かなければなりません。もし、その行動が間違いであっても困ることはありません。
問題は、間違いだったら連れて行くことが無駄になるかもしれない、と思って”様子を見る”などの躊躇をすることです。
診察をして何も無ければ一安心ですし、診察で異常が見つかれば早期に治療をスタートできるので、犬にとっての負担も少なくなります。もちろん、それだけ長生きに繋がるのです。
いざ病院に連れて行くと、当然気になるのは”どういう治療なのか”、また”治療費はどれぐらいなのか”、という点ですね。ある程度の参考になる目安を紹介します。
心臓病の治療方法
慢性のフィラリア症を含めた心臓病の治療法は内科療法が多く、その目的は、うっ血する状態を改善して、停滞する液体成分がなくなるように、また全身に血液が滞りなく廻るようにすることです。
心臓病は完治しない病気の為、柱となる内服薬は生涯に渡り飲むことになります。1回でも忘れたりすると症状が悪くなる可能性が非常に高いので、十分な注意が必要です。
病気の進行具合によって、薬の量や種類が増えたりすることもあります。最もよく使われる心臓病の治療内容は以下の5つになります。
心臓病の治療内容
- 血管拡張剤:血管を拡張することでうっ血状態を改善する。
- 利尿剤:うっ血して溜まる水分を排泄させる。
- 強心剤:心臓の収縮力を高める。
- 心臓病用の療法食:ナトリウムの制限をしたフードにより、高血圧を防ぐ。
- 運動制限:心臓に負担をかけないように努める。
心臓病の治療費
治療費は、まず診断されるまでの費用も関わって来ます。初診時に行う最低限の検査として想定されるものと、都内での一般の個人病院の値段を紹介します。(地域による差があると思います。)
- ①聴診、触診、視診、などの一般的な検査:初診料、或いは再診料に含まれるので1,000円前後。
- ②レントゲン:胸部正面と側面の2枚(大型犬は増える場合あり)、5,000円〜
- ③心臓エコー検査:5,000円〜
- ④血液検査:5,000〜
一般的な費用は上記のようになりますから、初診時はある程度の準備が必要です。
これに加えて処方される内服薬ですが、初回の場合には、まだ内服薬の量や種類が確定せず(実際に服用して、症状が改善していたら確定します)、ほとんどの場合は1週間程度の処方になります。
内服薬1週間分の費用⑤は5,000円〜(小型犬と大型犬で倍近い値段の差があることもあります)が目安になります。
①から⑤までを合計して、20,000円以上はかかると思って下さい。これより安い場合は、良心的と言えるでしょう。
内服薬の種類や量が安定すると、1ヶ月分、2ヶ月分、といった長期で処方が可能になると、割引をしてくれる病院もあります。
いち早く心臓病に気付くためのポイント
早期発見、早期治療、これは総ての病気に対して言えることです。心臓病であるかどうか、気づけばすぐに病院へ連れて行ける、その為に知っておかなければならないポイントは以下の通りです。
元気
どんな場合も元気がないのは、何か問題がある証拠です。念のため受診しましょう。
食欲
全く食べない、或いは、あまり食べていないことがあれば、何かの病気のサインの可能性があります。
元気もなければすぐに、また、元気があり、排泄も問題ない場合は、時間を少し置いて再度ご飯を食べさせてみて、食べないようならば念のため病院へ連れて行きましょう。
呼吸
苦しそうにしていることがないか、回数がやたら多い、すぐに息切れする、などを散歩時に観察して下さい。
舌の色
呼吸している時の舌の色、綺麗なピンクであるか、いつもチェックしましょう。
咳
咳の原因は感染症の場合もありますが、一日の内で何回か咳をしていたら、すぐに受診しましょう。
散歩の距離
散歩のコースの途中ですぐに立ち止まる、帰りたがる、などの運動を嫌う様子がないか、常に確認して下さい。
1日だけ、今日たまたま、ではなく、明らかにこの2日間連続しておかしいと思ったら、すぐに病院へ行きましょう。
体重
体重はあまり家庭では測られていないと思いますが、体重減少(増加)は心臓病に限らず何かの病気のサインの可能性があります。最低でも月に1度は測定をして体重変化が無いかチェックしましょう。
隠れたがる
犬は具合が悪い時に隠れたりすることがありますから、そのような行動に出たら念のため、受診しましょう。
何となくおかしい
これは非常に曖昧な表現ですが、例えば、いつもならこのタイミングですり寄ってくるのに、何故か来ない、いつもならお出迎えがあるのに寄って来ない、いつも好きで寝ているはずの場所にいない、など、飼い主さんの中で”あれ?”と思うような行動があれば、一度、病院で相談してみましょう。
まとめ
一般的に、犬の心臓病の多くはうっ血性心不全であることを説明しましたが、フィラリア症のように予防薬で100%予防ができる場合は別として、後天性心臓病はいつ、どんな形で現れるかわかりません。
普段からの我が子の行動観察は早期発見に繋がる重要な手段です。軽く咳をした、すぐにハアハアするな、と気づいたら、”病院に行ってとりあえず、相談してみよう”という意識を常に持って下さい。
毎年、病院では健康診断のキャンペーンを行なっているはずですから、是非、安い値段でできるあらゆる検査を全部やってもらい、異常がないかをしっかりと日頃から確認しましょう。