猫の骨折で多い部位は骨盤や大腿骨(太ももの骨)ですが、原因は、落下、ドアに挟まれる、交通事故、栄養障害、などがあり、どれも痛々しいものばかりです。
交通事故で皮膚に傷があった場合(開放骨折と言って、骨が見えている状態)には、その皮膚が綺麗に治らずに感染を起こしてしまったり、動かさないようにギプスをしていても、ギプスの交換を怠ると二次的な皮膚の問題が出てくることもあります。
留守にして帰宅したら、猫が前肢を痛そうにはしていたが、まさか骨折しているとは思わずに放置していたら、だんだん腫れ上がって来た、という状況に遭遇するかもしれません。
骨折の場所によっても治療の方法は異なり、手術をして入院させなければならないこともあります。
絶対に骨折しないように注意したいものですが、ここでは、万が一骨折をしてしまったら、どんな治療をして、費用はどれぐらいかかるのか、といった点を中心に説明しますので、ぜひ参考にして下さい。
目次
猫が骨折した時にかかる費用と治療方法
猫が骨折をした時にかかる費用と言えば、どう考えても安いものではありません。検査から始まって、手術をする必要があるとなれば、入院費用もかかります。
退院してからも、通院が必要になり、治療期間も何ヶ月という単位になるかもしれません。以下には、初診時にどれぐらいの費用を用意しておけば良いのか、といった目安を紹介します。
猫の骨折治療にかかる費用の目安
治療方法によって、費用の幅があるのは明らかです。大きく分けて、手術を必要とする場合と、必要とせずにギプス固定をする場合の2通りがあります。
例えば、手術でも骨折の場所や骨折の仕方により方法が異なること、更に、整形外科専門病院にお願いすることで費用が少し高くなる、などの可能性は否定できません。
ここでは、おおよそのイメージを掴んでもらうための費用を紹介します。
猫の骨折治療で固定のみの場合
骨折の度合いが軽度であったり、ひびが入った場合など、外側からギプス固定をして絶対安静にする程度で済むことがあり、その費用(都内一般病院)は、以下のようになる場合が多いです。
項目 | 費用 |
---|---|
初診料 | 1,500円前後 |
レントゲン検査 | 1枚2,000円前後 (枚数による、全身打撲が疑われる場合は全身を撮影することになるので、最低でも4枚程度必要) |
処置 | 5,000円前後 |
内服薬 | 1,000円〜 |
合計 | 10,000円〜 |
猫の骨折治療で手術を行う場合
猫が骨折した場合に手術を行うとなると、基本的に手術は高額になります。専門病院で慣れた整形外科専門医に執刀してもらうことで、ほぼ元に戻ることも期待できますが、その分の費用は覚悟が必要でしょう。
費用の差額は手術の方法によるところが大きく、骨折の仕方によって適切な手術方法を選ばなければなりません。
皮膚に傷がある場合は、その治療もしっかり行わなければならない為、治療期間も長引く可能性があります。以下に、代表的な骨折の手術方法を説明します。
猫の骨折手術の種類
骨折の部位や骨折の仕方により、様々な方法があり、次の4つの方法は一般的なもので、場合によっては組み合わせたり、専門医によって特別な方法を選択することも考えられますので、参考にして下さい。
- ワイヤー
ワイヤー(ピンとも言う)で骨折している部分を縛るような形で使ったり、骨の中心部に差し込んで使ったりしますが、曲げるなどが簡単であるが故に素材が弱い為、大きな猫の場合には、他の方法と組み合わせることが多いです。 - プレート
大きさによっていくつかの穴が空いている小さな板を、骨折した部位に、骨を支えるように当てて、穴にネジを差し込んで固定します。 - 創外固定
目で見ることができる、皮膚の外側から固定をする方法で、何本かのピン(ワイヤーより太い、先が尖ったステンレス製の釘のようなもの)を骨に差し込んで使います。 - インターロッキングネイル
太いピン(先が尖っている長い釘のようなもの)を骨の中心に挿入して固定する方法です。
猫の骨折手術の費用
骨折整復の手術をした後、骨が繋がった状態になった段階で挿入したピンなどを抜く手術が行われます。
以下に記す費用は、それを含みません。(ピンを抜く手術などは、挿入する手術の半分以下の額と考えて問題ないと思われますが、必ず、最初の手術を行う際に確認をして下さい。)
項目 | 費用 |
---|---|
初診料 | 1,500円前後 |
レントゲン検査 | 1枚2,000円前後(枚数による) |
手術料 | 10万円〜 |
入院一泊 | 5,000円前後 |
合計 | 最低20万円程度 |
※入院も必要になりますから、その日数と手術の難易度で”かなり”ばらつき”があります。これより高くなるのは、それだけ骨折の状況が複雑であり、手術も複雑で器具を色々使う、設備が充実している、などが考えられ、30万円を超えたとしても、決して法外な請求ではないと言えるでしょう。
猫が骨折したかどうかの見極めをする方法
開放骨折と言って、外に骨がむき出しになって折れている場合や、四肢であれば、明らかに正常ではない方向に向いている、などは、一目で骨折がわかります。
皮膚や筋肉の下に隠れている場合には、外から見ただけでは分かりにくく、触ったら痛がるわけですから、慎重に診察を行う必要があります。
獣医師はレントゲンから骨折を見つけ、骨折の種類がどれに相当するかを診断し、飼い主さんの希望を聞きながら、治療方法を検討しなければなりません。
ここでは、骨折を疑った時に何をすれば良いか、また、自然治癒は可能であるか、といった点を中心に解説します。
猫の骨折の見極め
骨折に共通して言えることは、どれも痛みが強く、時間が経過すると腫れ上がって来る可能性があるということです。
猫が全身打撲した直後、じっと痛みに耐えているような姿や、近づいたり、触ろうとすると怒る、などの仕草をしている場合には骨折をしている可能性があります。
猫の骨折の可能性がある時に行うこと
例えば、目の前で本棚の一番上から落下した、ベランダから飛び降りた、ドアに挟まれた、などの場面に遭遇したら、以下の通りに行動して下さい。
- 元気(意識)があるかを確認する
- すぐに病院に相談する
- 指示があるまで、なるべく触らない、動かさない
- 獣医師の指示に従う
うっかり猫が痛い場所を触って暴れてしまったりすると、実際に骨折をしていた場合には、動いたことで骨折の状態を更に悪くする可能性があります。
獣医師にどう抱っこをすれば良いのか、いつ病院に連れて行けば良いのか、といった具体的な指示を聞いて下さい。骨折の多くは、負傷した時点で、すぐに受診することが推奨されます。
猫の骨折の診断方法
骨折の種類は、骨折の”方向”によって、以下のように分類されています。
- 横骨折(真横に骨折ラインが入り、骨が上下に分かれる)
- 螺旋骨折(捻ったようにラインが入リ、2つに分かれる)
- 斜骨折(上から下へ斜めにラインが入り、2つに分かれる)
- 粉砕骨折(粉々に分かれる)
- 陥凹骨折(へこんだ状態)
- 剥離骨折(剥がれ落ちる状態)
- 圧迫骨折(骨の両側から力が加わる)
これらを診断するには、触診ではなくレントゲン撮影が必須です。
骨折を疑うような状況は、不慮の事故による全身打撲と言われる事態が多いですから、骨折だけではなく、臓器に問題がないかなども診ていく必要があり、エコー検査や血液検査も実施することが考えられます。
猫の骨折と自然治癒
骨折の治療目的は、自然に備わっている骨の再生という力を効率よく利用して、ほぼ元の状態に戻してあげることです。
治療を行わずに痛みを抱えたままでいたり、骨が曲がったままで固まってしまうと、その後、体の歪みに繋がったり、特定の動きができない、など、後遺症が残ることがあります。
皮膚に傷がある場合は、そこから全身に感染が広がるような状況に陥ることもあるかもしれません。
治療によって、骨折前のように動ける姿に戻してあげることは、動物愛護法の観点からも非常に重要であり、費用の問題があれば、獣医師に相談をして、費用制限がある中で出来る最良の治療を検討してもらいましょう。
猫が怪我をした時の飼い主の対処法については、『猫が怪我した時の正しい対処法!診察が必要かどうかの判断も!』の記事でも詳しく解説していますので、合わせて参考にしてみてください。
まとめ
家の中の事故や交通事故で、猫が骨折する可能性はゼロではありません。万が一のことを考えておくことも重要ですが、まず、事故に合わないように予防することを考えましょう。
普段から、家の中でいたずらして登ってしまいそうな高い場所はブロックしておく、ベランダには出さないようにする、外に絶対に出さないようにする、という気配りをして下さい。
子猫は人間の足元を走り回りますから、高齢の方やお子さんがいるご家庭では、人間まで転んで骨折事故を起こす可能性さえあります。予め、ご家族の皆さんで、人間と猫の骨折事故の危険性を十分に話し合っておくことも必要です。