猫のリンパ腫を解説|治療方法や余命・生存率をお話していきます

猫 リンパ腫

 

リンパ腫は血液由来の癌で、リンパ肉腫、悪性リンパ腫、とも呼ばれますが、人間と同様に、猫のリンパ腫は悪性のみです。

血液の中にある白血球の種類の1つ、免疫システムに非常に重要な役割を果たすリンパ球が原因で、リンパ節や臓器などに腫瘍が発生します。

猫における血液の癌の約9割、猫の癌と診断された症例の約3割がリンパ腫と言われており、決して珍しい病気ではありません。リンパ腫と診断されてから、全く治療を行わないと、1か月程度で亡くなってしまうと言われています。

抗癌剤を使う化学療法を行えば、一時的な寛解(症状が消える)も期待ができ、平均6ヶ月から9ヶ月、約20%の猫は1年以上の延命が確認されていますが、治療方法は少し複雑で、専門医の知識と経験が必要です。

ここでは、猫のリンパ腫がどんな病気であるか、また、その治療法と予後(余命や生存率)に関しての解説をして行きます。

猫のリンパ腫を知ろう!

猫のリンパ腫はいくつかに分類されており、中にはFeLV(猫伝染性白血病ウイルス)との関わりがあるとされる種類が存在します。

このウイルスに感染している猫は、リンパ腫の発症率は60倍、FIV(猫伝染性免疫不全ウイルス)感染猫では5倍に上がり、喫煙者のいる家庭での飼育でも発症するリスクが上がるとされている為、これらの条件をどれか備えている場合は特に注意が必要です。

リンパ腫全体の平均的な発症年齢は8歳から10歳ですが、FeLVに感染している場合の平均発症年齢は、それよりずっと若い3歳と言われています。その点も含めて、以下に猫のリンパ腫の種類を紹介します。

猫エイズ(FIV)については、『その勘違い待った!誤解されやすい猫エイズについて話します。』の記事で詳しく解説しているので、合わせて参考にしてみてください。

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猫のリンパ腫の分類

猫のリンパ腫を診断するにあたって、この分類法を用い、そこから治療法を選択します。

猫のリンパ腫の組織学的な分類

猫のリンパ腫の組織学的な病態(顕微鏡で細胞を見た時の状態)から、3つに分けることができます。この分類は、どれだけ早く腫瘍が成長し、他の臓器にも影響を及ぼすか、という点に注目したものです。

  • 高い悪性度
    非常に一般的で、突然発症、急速に症状が進行する場合。
  • 低い悪性度
    消化管型(後に説明)のリンパ腫で多く見られ、慢性的に進行する場合。
  • 中等度の悪性度
    上記2つのの中間に位置。

猫のリンパ腫のリンパ球による分類

以下の2種類のリンパ球が由来であるリンパ腫が存在します。

  • T細胞
  • B細胞

猫のリンパ腫の解剖学的な分類

リンパ球やリンパ組織は体の至る所に存在しているので、リンパ腫はどこにでも発症する可能性があり、解剖学的にどんな場所から発生するかによって、以下の4種類に分類されます(それ以上に分類する場合もあります)。

症状は、ダメージを受けている場所によって様々なものが考えられ、発症しやすい年齢も必ずしも同じではありません。

多中心型

多中心型は猫では珍しく、体のあちこちのリンパ節や器官に腫瘍が発生します。FeLV感染が関係していると言われており、発症平均年齢は4歳と若く、FeLV陽性である場合は特に予後が悪いです。主な症状は以下の通りです。

  • 体重減少
  • 食欲不振
  • 衰弱
  • 腫瘍が発生した器官による症状
消化管型

消化管型は腸、腸管膜リンパ節、などに腫瘍が発生するもので、10歳以上の猫のリンパ腫で一番多いタイプです。

FeLVとの関連性が低いと言われており、中でも低い悪性度のものが比較的多く見られます。主な症状は以下の通りです。

  • 体重減少
  • 食欲不振
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 触診にて腸管の腫瘤(できもの)の存在確認
  • 衰弱
  • 脱水
縦隔型(胸のリンパ節に発生)

胸腺や胸のリンパ節を中心に腫瘍が発生し、発症平均年齢は3歳程度で、FeLVとの関連があると言われています。主な症状は以下の通りです。

  • 呼吸促迫
  • 呼吸困難
  • 体重減少
  • 食欲不振
  • 心音と肺音の異常
  • 胸水
  • ホルネル症候群(眼が落ち窪んだり、瞬膜が出たりする眼の症状)
その他

その他に含まれるものは、鼻、腎臓、中枢神経(脳や脊髄)、皮膚、血液、眼、などが挙げられます。

鼻腔型

鼻腔型は、その他の分類に含まれるリンパ腫の中で一番多いタイプで、高齢で発症する傾向にあります。慢性的な風邪のような症状が出て、約20%近くの猫は全身症状(食欲不振や体重減少など)を伴います。主な症状は以下の通りです。

  • 鼻づまり
  • くしゃみ
  • 鼻血
  • 顔面の歪み
  • 目やに

眼内型

猫の場合は、眼が原発(最初に発生)である場合と多中心型の症状の一部として発生する場合があります。主な症状は以下の通りです。

  • 光線過敏
  • 瞼の痙攣
  • 網膜剥離
  • ぶどう膜炎(眼の中の炎症)
  • 前眼房出血(角膜、虹彩、水晶体の間にある部分の出血)
  • 前眼房蓄膿(前眼房に膿が溜まる)
腎臓型

両方の腎臓がダメージを受けると言われており、発症平均年齢は7歳程度で、BUN(尿素窒素)値が高い場合(尿毒症)や、FeLV陽性である場合、非常に予後が悪いです。

中枢神経系に転移する可能性が約50%と言われています。主な症状は以下の通りです。

  • 多飲多尿
  • 体重減少
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 触診にて腎臓腫大
中枢神経型

猫の中枢神経系の腫瘍はあまり多くありませんが、腫瘍が疑われた場合にはリンパ腫である可能性が高く、脳や脊髄に腫瘍が広がります。

若い猫で脊髄のリンパ腫の場合、その多くはFeLV陽性で、発症平均年齢は3歳程度と若いです(腎臓型の転移も考えられます)。中枢神経型の主な症状は以下の通りです。

  • 発作
  • 性格変化
  • 脳神経障害
  • 四肢の麻痺
皮膚型

特に痛みを生じることなく進行していく皮膚のリンパ腫は、あちらこちらにできる場合と、一部に限定する場合があり、こぶのような物が出来たり、潰瘍になったりなどがあります。

発症平均年齢は8歳以上で、FeLVとの関連性は低めです。皮膚型の主な症状は以下の通りです。

  • 皮膚の赤み
  • 硬化(硬くなる)
  • 化膿(主に顔や頭)
  • 潰瘍
末梢リンパ節型

猫では非常に珍しいタイプで、体の触れることができるリンパ節に腫瘍が発生し、悪性度の高いリンパ腫の一部の症状として現れる場合と、原発の場合とがあります。

主に頚部の一個の、或いは複数のリンパ節が腫れる場合とがあり、徐々に症状は進行して行きます。抹消リンパ節型の主な症状は以下の通りです。

  • 一部、或いは複数のリンパ節の腫脹

猫のリンパ腫のステージ

症状によって、4段階のステージと2段階のサブステージに分類されています。(出典:World Health Organization Clinical Staging System for Lymphosarcoma in Domestic Animalsによる)

  • ステージI : 唯一の器官や唯一のリンパ節、リンパ組織に限定して発生
    • ステージIa : ステージIの状態で全身症状がない。
    • ステージIb : ステージIの状態で全身症状がある。
  • ステージII : 限定された範囲の複数のリンパ節に発生
    • ステージIIa : ステージIIに全身症状がない。
    • ステージIIb : ステージIIに全身症状がある。
  • ステージIII : 全身のリンパ節に発生
    • ステージIIIa : ステージIIIに全身症状がない。
    • ステージIIIb : ステージIIIに全身症状がある。
  • ステージIV: 肝臓や脾臓に発生
    • ステージIVa: ステージIVに全身症状がない。
    • ステージIVb: ステージIVに全身症状がある。
  • ステージV : 血液や骨髄や他の臓器に発生
    • ステージVa: ステージVに全身症状がない。
    • ステージVb: ステージVに全身症状がある。

猫のリンパ腫の治療

リンパ腫の治療の中心は化学療法ですが、例外的に一部に限定されたリンパ腫である場合には、放射線療法や外科的に手術による切除が施されます。

化学療法の流れは、“導入→維持→再導入→レスキュー(再燃)”という4つの過程があります。

導入時期に最初の治療が行われ、維持期は定期検診により再発していないかをチェック(必要であれば維持期の治療を行う場合もあります)、再発した場合には再導入、更に再発で以前の薬剤の効果が見られない際に、レスキューとして薬剤変更となるのが一般的です。

ここでは主に行われている導入期の3つの治療法である、①単独薬剤、②COP、③CHOP、と④レスキュー、の4つのプロトコールについて解説します。

大学や専門病院では、これらを基礎にした治療成績が良い独自のプロトコールを作成していることが多く、実際の治療とは異なる部分があると思いますのでご了承下さい)

猫のリンパ腫の化学療法で使用される主な薬剤

プレドニゾロン

副腎皮質ホルモンであり、抗炎症作用や免疫抑制の働きがあります。副作用が少なくリンパ球に反応する為、リンパ腫の治療で使用され、安価な内服薬で投薬可能です。

単独で使ったり、他の抗癌剤と併用して、毎日、或いは一日おき、などの飲み方を指示されます。

ドキソルビシン

リンパ腫で非常に効果が高いと言われている抗癌剤で、数週間毎に静脈から投薬する為、通院して点滴を流してもらう、という形が取られます。副作用に食欲不振があり、比較的高価な治療薬です。

サイクロフォスファマイド

リンパ腫には低い効果と言われている抗癌剤です。内服薬も存在しており、点滴薬を使用した場合の方が、食欲不振、嘔吐、下痢、などの副作用が出やすいと言われています。

内服薬を処方され、確実に飲ませられない場合には、通院して投薬を病院で行います。

ビンクリスチン(オンコビン)

リンパ腫に対して、サイクロフォスファマイドよりも効果が高い抗癌剤で、点滴が必要です。食欲不振や便秘などの副作用が見られることがあります。

L-アスパラギナーゼ

リンパ腫の細胞が必要とする栄養(L-アスパラギン)を分解することで抗癌剤としての効果があり、筋肉注射によって投与します。

①単独薬剤

1種類のみで行うプロトコールで、非常に簡便な治療方法である一方、効果は複数の薬剤を使うプロトコールよりも低く、プレドニゾロンやドキソルビシンが使われることが多いです。

②COP

サイクロフォスファマイド(Cyclophosphamide)、ビンクリスチン(Vincristine、又は、オンコビン Oncovin)、プレドニゾロン(Prednisolone)、の3種類の薬剤を使うプロトコール。

毎週1回の通院で必要な薬剤を投薬、これを4週間連続、その後3週間毎にサイクロフォスファマイドとビンクリスチンの投与が1年継続される形が基本になりますが、病院や症例によって異なる可能性がある為、獣医師に確認して下さい。

後に紹介する CHOPよりも副作用が比較的抑えられ、安価な治療法です。

③CHOP

COPにL-アスパラギナーゼ(L-Asparaginase)とドキソルビシン(Doxorubicin)が加えられたプロトコールで、中でもウイスコンシン大学マディソン校プロトコールが最も一般的に用いられています。

毎週9週間連続治療の後、11週目から1週間おきに治療を行うスケジュールが基本型で、治療期間は半年が目安ですが、病院や症例によって異なる場合がある為、詳しいプロトコールは獣医師に確認して下さい。

CHOPは費用が高めであり、副作用もCOPよりも強い可能性がある為、投薬後の経過観察は更に慎重になると言えます。

④レスキュー

リンパ腫が再燃(再発)して、今までの薬剤の効果がない場合に検討されるプロトコールで、基本は3週間を1サイクルとしたものです。

様々な種類があり、専門医の経験や知識に基づいてプロトコールが選択されます。以下の例を参考にして下さい。

  • ACプロトコール
    A(ドキソルビシン、或いはアドリアマイシン Adriamycinとも呼ばれる)を初日に投与、C(サイクロフォスファマイド Cyclophosphamide)を10日目に投与、デキサメタゾン(注1)を毎週投与。
  • MiCプロトコール
    Mi(ミトキサトロン Mitoxantrone)(注2)を初日に投与、C(サイクロフォスファマイド Cyclophosphamide)を10日目に投与、デキサメタゾンを毎週使用。

(注1) デキサメタゾン:プレドニゾロンよりも効果が強い副腎皮質ホルモン。
(注2) ミトキサトロン:ドキソルビシンに似た抗癌剤。

猫が悪性リンパ腫になった時の余命・生存率

診断後に全く治療をしなかった場合には、どんなリンパ腫でも4週間程度の生存率と言われていますが、治療を行った場合、生存率は明らかに延びることが期待されます。

治療法やリンパ腫の種類によって、当然、その数字は異なりますが、最長で2年程度の延命も可能です。

ここでは、治療による寛解や生存率に関する具体的な数字を紹介しますが、論文によってデータの違いがあるので、あくまでも1つの参考にして下さい。

猫のリンパ腫の寛解と生存率の鍵

猫のリンパ腫の寛解と生存率の長さを握る鍵は、以下の点にあると言えますが、これらの条件が全て揃っていても、当然、個体差があります。

  • 病気のステージ
    ステージIからVで、低いステージの方が生存期間が長い可能性があります。
  • 症状の度合い
    全身症状が現れていないサブステージ aの方が bよりも良好と考えられます。
  • 解剖学的な種類
    消化管型は化学療法による寛解期間も長く、鼻型は生存期間が最も長いと言われています。
  • 組織学的なグレード
    低いグレードは、集中的な化学療法の回数も少ない為、寛解期間も長く、生存期間が延びる可能性があります。
  • FeLV感染
    陽性の場合、明らかに寛解期間が短く、生存期間も短くなります。

FeLV感染から見た寛解日数と生存日数

  • FeLV陰性:寛解日数約5ヶ月、生存日数約5ヶ月
  • FeLV陽性:寛解日数約1ヶ月、生存日数約1ヶ月

症状のステージから見た完全寛解の割合と生存日数

  • ステージI:93%、7.6ヶ月
  • ステージII:83%、7.6ヶ月
  • ステージIII:48% 、2.6ヶ月
  • ステージIV:42%、2.6ヶ月
  • ステージV:58%、2.6ヶ月

リンパ腫の種類による生存日数

全てのリンパ腫の猫が、同じ治療を受けている訳ではなく、リンパ腫の種類も異なれば、生存日数も異なります。

  • 多中心型:平均生存期間 約5ヶ月
  • 消化管型:(低い悪性度)生存期間 約2年
    (高い悪性度)生存期間 3ヶ月
  • 胸腺縦隔型:生存期間 約2〜3ヶ月
    (FeLV陰性のシャム、262日、FeLV陰性のオリエンタルショートヘア、191日の例外的な長い生存期間の報告もあり)
  • 鼻腔型:生存期間 約1年3ヶ月
  • 腎臓型:生存期間 約3〜6ヶ月(尿毒症の症状にもよる)
  • 脊髄:生存期間 5ヶ月以下

(以上、参考文献:The Feline Patient 4th editionSmall Animal Internal Medicine 4th edition Consultation in Feline Internal Medicine Volume 6 Saunders Solution in Veterinary Practice Small Animal Oncology)

まとめ

猫のリンパ腫は化学療法に非常によく反応する癌で、猫には副作用が少ないといわれていますが、その予後は、FeLVや FIVの感染の有無が影響し、感染していないことが何よりも重要になります。

外飼いをしている場合には、ワクチン接種を実施して、リスクを少しでも下げることをおすすめします。

費用に制限がある場合には、獣医師に相談して、飼い主さんの納得できる最大限の治療を選びましょう。

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