猫も人と同じようにくしゃみをします。鼻にゴミが入ってムズムズしたり、風邪で鼻水が溜まってくしゃみをしたり…。原因は生理的なものから病気まで様々です。
鼻水を垂らして、くしゃみも数日間続いている場合は、病気の可能性が高くなります。でも、飼い主さんからすると、どう対処したら良いかわからなく心配ですよね。
そんな不安な飼い主さんへ、猫のくしゃみの原因と病院へ連れて行く目安を紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
猫がくしゃみをしている原因
猫がくしゃみをする原因は様々です。まずは、生理的な正常なくしゃみと異常なくしゃみの見分け方のポイントをお教えしましょう。
正常なくしゃみ
正常なくしゃみは、鼻腔内に侵入した異物やホコリを除去しようとして起こる生理現象です。猫の場合、首を左右にひねりながらくしゃみをします。1日に数回のくしゃみは、問題ありません。
異常なくしゃみ
頻回にくしゃみしたり、数日間続いたり、鼻水や目やにを伴う場合は、病気の可能性が高くなります。さらに、食欲も落ちてくると重症化しているので、すぐに病院に連れて行きましょう。
猫のくしゃみの原因
猫のくしゃみの主な原因は、以下のことが挙げられます。
- 強烈なにおい
- ゴミ
- 花粉症などのアレルギー
- 鼻炎
- 副鼻腔炎
- 猫クラミジア感染症
- 猫ウイルス性鼻気管炎
- 猫カリシウイルス感染症
- クリプトコッカス症
- 猫エイズウイルス感染症
- 腫瘍
この中には主に猫風邪と呼ばれているものもあります。一つずつどういった病気や症状なのかについて説明していきますね。
強烈なにおい
強い刺激臭で鼻を刺激されるとくしゃみをします。これは生理的なくしゃみなので、心配いりません。刺激的な匂いの原因を排除しましょう。
ゴミ
ゴミなどの異物が鼻の中に入り、それを外に出そうとしてくしゃみをすることがあります。これも生理的なくしゃみなので、心配いりません。異物が外に出るとくしゃみもなくなります。
花粉症などのアレルギー
花粉やハウスダスト、食物アレルギーでくしゃみが出ることもあります。季節性がある場合は花粉症が疑われ、ハウスダストの場合は部屋の場所によって症状が変わるかもしれません。食物アレルギーの場合は、食後にくしゃみをよくします。
花粉症やハウスダストが原因なら、空気清浄機を導入したり寝床を清潔にしたりすることで改善されることがあります。食物アレルギーが疑われる場合は、食べ物を低アレルゲンのものに変えましょう。獣医師に相談してください。
鼻炎
鼻粘膜のどこにかに刺激が加わって、炎症を起こしている状態です。炎症の初期段階では、まずサラサラとした鼻水が分泌されます。この刺激が慢性化すると徐々に炎症が広がって、鼻血が混じったようなドロドロした鼻水となります。
最終段階は、慢性的な炎症による骨の融解や、病原体の脳への侵入ですが、そこまでに炎症が進むことはまれです。治療は抗生物質で行うことが多いです。
副鼻腔炎
副鼻腔炎は、鼻の奥にある空洞に炎症が発生した状態です。副鼻腔の一部は鼻腔とつながっているため、鼻腔内に炎症があると副鼻腔内に波及してしまうことがあります。炎症がおこり細菌が繁殖すると鼻が腫れてしまいます。
副鼻腔内に膿がたまってしまう蓄膿症(ちくのうしょう)です。抗生物質で治療を行いますが、症状が改善しない場合は、ネブライザーを使用したり、鼻に溜まった膿を出す手術を行うこともあります。
猫クラミジア感染症
猫クラミジア感染症とは、猫クラミジア(Chlamydia psittaci)という細菌によって引き起こされる結膜炎、鼻炎、呼吸器症状のことです。
感染すると潜伏期間が3~10日ほどあり、まず粘着性の目ヤニを伴う結膜炎になります。2~6ヶ月齢の子猫がとくにかかりやすいです。
猫クラミジア感染症に感染した場合の治療方法は、抗生物質を投与して治療します。経口で全身投与をしますが、点眼や点鼻も有効です。
クラミジアを体内から完全に消滅させるには、通常抗生物質を14日以上継続投与する必要があります。なので、症状が落ち着いたからといってすぐに抗生物質をやめないようにしましょう。
猫ウイルス性鼻気管炎
猫ウイルス性鼻気管炎とは、ヘルペスウイルス科に属する猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)を原因とする上部呼吸器感染症です。
目、鼻、口に炎症が起こり、鼻水や流涎(よだれ)、目やになどの症状が出ます。感染すると潜伏期間が2~10日程度あり、くしゃみや流涎を伴う炎症が起こります。
子猫や老齢猫など比較的免疫力の弱い猫などは、肺炎を併発して命に関わることもありますので、注意してください。
ウイルスなので抗生物質は効きませんが、他の疾患を併発しないように抗生物質を飲ませましょう。インターフェロン(免疫をあげる効果)を注射してもらい、自然治癒を待ちます。
猫カリシウイルス感染症
猫カリシウイルス感染症とは、ネコカリシウイルス(FCV)に感染することによって生じる感染症です。このウイルスは感染力が強く、ウイルスのみで1ヶ月近く生存していることが確認されています。
母親から受け継いだ免疫力が弱まる生後6~10週くらいの子猫に発症しやすく、成猫になると感染しても発症しない不顕性感染がほとんどです。
口や舌、鼻に炎症が起き、くしゃみ、鼻水、流涎などの症状が出ます。眼の炎症は起こさないので、他の病気と区別できます。治療は、ウイルスを直接攻撃するような特効薬はありませんので、ヘルペスウイルスと同じような対症療法が治療の基本となります。
二次感染を予防するために抗生物質を投与し、あとは猫の自然治癒を待ちます。通常は2週間以内に回復します。さらに、免疫力を高めるインターフェロンも有効です。
猫エイズウイルス感染症
猫エイズウイルス感染症とは、正式には猫後天性免疫不全症候群(ねここうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん)といい、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)により引き起こされる諸症状のことです。
これに感染しては発症すると免疫が低下してしまうので、他の感染症にかかってしまいくしゃみなどの症状が出ます。なので、基礎疾患として関わっていることがあります。抗体検査でわかるので、病院で検査してもらいましょう。
猫エイズについて、『その勘違い待った!誤解されやすい猫エイズについて話します。』の記事で更に詳しく解説しています。
腫瘍
腫瘍によってくしゃみが出ることもあります。その場合、鼻血や鼻水を伴うことがほとんどです。さらに、鼻が腫瘍細胞により大きく腫れ上がり、鼻の骨を融解させます。
確定診断はCTを撮って(骨融解の確認)、生検(鼻粘膜を採取)を行い病理検査に出すことによって行います。悪性のことが多いので、外科手術を行っても再発することが多く、放射線での治療が必要です。
くしゃみで病院へ連れていくべき目安
まず、病気のくしゃみなのかどうかを見抜くことが大切です。
- 何回もくしゃみをする
- 何日も続く
- 鼻水を伴う
この3つが揃ったら、病院に連れて行くべきです。とくに、仔猫や老猫は重症化しやすく、体力もないので注意の必要があります。食欲や飲水が落ちてきたら、赤信号なのですぐに病院に行くようにしましょう。
猫の予防接種について正しい知識を獣医師が、『猫の予防接種を知ろう!ワクチンの種類や費用まとめ』の記事で書いていますので、参考にしてください。
まとめ
今回、紹介した病気の中には予防接種で防げる病気もあります。仔猫から予防接種をきちんとすることで回避することができるので、定期的な予防接種を心がけてください。
今回、紹介した猫ウイルス性鼻気管炎(3種のワクチン)、猫カリシウイルス感染症(3種のワクチン)、猫クラミジア感染症(5種のワクチン)はワクチンで予防できます。2ヶ月齢以降で打つことができます。
猫エイズに関しても単独のワクチンが出ていますが、日本国内のエイズウイルスに効かないこともあるので注意しましょう。
予防接種によるアレルギーが出てしまう場合は、獣医師に相談しましょう。ワクチンによっては3年に1回でいい場合もあります。たかがくしゃみ、されどくしゃみです。
甘く見ていたら大変な病気だったと後悔しないように、猫の健康管理をきちんとしてあげてくださいね。おかしいと感じたら、早めの受診を心がけてください。