愛犬家の皆様の中でも「ブラシを取り出すと犬が逃げるんです」とか「なかなかブラシをさせてくれなくて」と言われる方、残念ながら多いです。でも、実はその多くが飼い主さんが原因なことが多いのですよ。
これから犬がブラッシングを嫌がる理由をご説明しますので、ブラッシングが嫌いな愛犬をお持ちの飼い主さんは思い当たる点がないか確認してみてください。
また、正しいブラッシングの仕方もご紹介しますので、いつもブラッシングをされている飼い主さんも愛犬に不要なストレスをかけていないか確認してみましょう。
犬がブラッシングを嫌がる理由
犬がブラッシングを嫌がる理由はほとんどが飼い主さんが原因です。
本来、ブラッシングは犬にとって気持ちのいい物なのですが、飼い主さんが間違ったやり方をすることでブラッシング嫌いな犬にしてしまうのです。
ブラッシング嫌いな愛犬をお持ちの飼い主さん、家ではブラッシングをなかなかさせない愛犬がペットショップなどでトリマーさんにトリミングをお願いした時には「おりこうさんでしたよ」と言って返された経験はないでしょうか?
やり方が合っていて、痛い思いをしていなければ犬はおりこうさんにブラッシングをさせてくれるものなのです。犬がブラッシングを嫌いになってしまう理由は大きく分けて4つあります。
- 道具を正しく使っていない
- もつれ毛や毛玉を無理やり取ろうとした、または無理に取った
- 怒られながらブラッシングされた
- しつけが入っていない
道具で犬が痛い思いをした
犬をブラッシングするときのブラシの種類は、主に以下のものがあります。
- スリッカーブラシ
- コーム
- ピンブラシ
- ラバーブラシ
- スクラッチャー
- ファーミネーター
- 獣毛ブラシ
それぞれに使い方があり注意点があるのですが、この注意点を守らないと犬が痛い思いをしている事があります。
例えば、スリッカーブラシやスクラッチャーでガリガリやってしまったり、コームでかける向きを間違ってかけた場合には犬にひっかき傷を作ってしまいます。
また、ファーミネーターも抜けるのが楽しいので飼い主さんがかけ過ぎてしまうと、犬の皮膚にアザができてしまうことがあります。こうなると犬はブラッシングを嫌がるようになるのです。
気を付けて欲しいのは、見た目にはラバーブラシはトゲトゲしている所はないので、痛い思いをさせそうにない道具ですよね。
でも、ファーミネーター同様に抜き過ぎると、本来生えているはずの毛まで無理に抜いてしまうことになるので犬は痛い思いをしているのです。
もつれ毛、毛玉取りでブラッシング嫌いになる
毛玉やもつれ毛になっているかを判断するには「コーム」を使います。毛を分けてコームを根元から毛先に向かってといてみてください。
ここで「スッ」と通ればもつれ毛も毛玉もありません。犬の場合は全身に毛が生えているわけですから、全身をこの状態にすることが必要なのです。
もつれ毛が集まって絡まってしまうと毛玉という状態になります。この毛玉取りをする時に犬の毛を引っ張ってしまうと、もちろん犬は痛いです。
しかし、毛玉取りは時間がかかります。犬もイヤでしょうが、飼い主さんもイライラしてくることがあり、毛玉を引っ張って無理に取ってしまおうとする場合があるのです。
トリマーはなるべく痛みがないように毛玉取りを行うのですが、たくさん毛玉になってしまった時は、どうしても何度かは痛い思いをさせてしまうことがあるのです。
毛玉取りでトラウマになる
保護された犬に多いのですが、長期間ブラッシングをしていなくて毛玉だらけになった経験のある犬はトラウマ化していることがあります。
ブラシを見ただけで唸ったり、咬みついてくるのです。一度、トラウマになってしまった犬はそれを克服させるには長い時間と労力、忍耐が必要になります。
ブラッシングをする飼い主さんが怖い
先ほど毛玉取りがイライラすることがあるとご説明しましたが、それがまた犬をブラッシング嫌いにさせてしまっていることがあるのです。
それは飼い主さんの「顔」です。イライラした飼い主さんの顔は優しくはありませんよね。犬は言葉で会話できませんから、飼い主さんの顔の表情や気迫といったものから飼い主さんの気持ちを感じ取っているのです。
ブラッシングをする時に「ジッとしてなさい!」「おりこうにしなさい!」と怒ってばかりいたら、どうでしょうか?犬はこれをやる時は飼い主さんが怖い、そして、痛いとなれば、犬にとってイヤなこと以外にないですよね。
飼い主に甘えてやらせない
「トリマーさんの言うことを聞くのに飼い主さんの言うことは聞かない」という場合は飼い主さんに甘えていることが多いです。
トリマーは仕事で行いますから、何度かトリマーにブラッシングをしてもらった経験のある犬は嫌がってもブラッシングされることはわかっているのです。
でも、飼い主さんが「キャン」と鳴いたら止めてくれたとか「逃げたらあきらめた」ということが以前にあれば、それを犬は学習して覚えているのです。犬って本当に頭がいいですよね。
しつけが入っていない
甘えてやらせないというのと区別して欲しいのはしつけが入っていない場合のことです。
毛玉でトラウマになっているわけではないのに、ブラッシングをする飼い主さんに「唸る」「咬みつく」などという行為になると話は変わってきます。
唸る、咬むというのは犬にしてみると飼い主を認めていない行為です。ブラッシングをする前にこれはしつけの問題です。
こういった場合はブラッシング以外にも問題行動がある場合がほとんどです。専門家であるドッグトレーナーさんなどに、ご相談されることをおすすめします。
ドッグトレーナーさんが卒業試験に「飼い主が犬にブラッシングをする」という項目を設けてることもあるのです。
犬が噛む原因を、『子犬の噛む癖を治したい!正しく噛み癖をしつける方法』の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
犬のブラッシングが必要な理由
犬の柔らかな毛は人に癒しを与えてくれますね。犬の毛を正しく言うと「被毛」と言います。
この被毛をきれいな状態で保つにはブラッシングが必須です。でも、被毛というのは毛だけではなく、身体の状態が良いことから美しく保てるのです。
体調が悪くなると「パサパサ」としたツヤのない被毛の状態になったりするのです。病気をした時の愛犬の被毛の手触りが変ったことがありませんか?
日頃から飼い主さんがブラッシングをしてあげることで愛犬の健康状態がわかることがあるのです。
では、ブラッシングをする頻度としてはどのくらいが理想だと思われますか?実はブラッシングをする頻度としては一日一回が理想なのです。犬のブラッシングの必要性は以下の理由にあります。
- ノミ、ダニの寄生の発見
- 犬の体調不良や病気、デキモノの早期発見
- 毛玉、もつれ毛の除去、予防
- 血行促進
- 飼い主とのスキンシップ
- アレルゲンの除去
毎日、お散歩から帰ったらブラッシングをするという感じで、日課になっていると犬の変化にも気が付きやすいですよ。
ノミ・ダニの寄生を早期に発見できる
お散歩から帰ってからのブラッシングはノミやダニの早期発見にも繋がります。
ノミは「瓜実条虫」を媒介しますし、ダニは重篤な症状を引き起こす「重症熱性血小板減少症候群」という怖い病気を媒介することで話題になっていますよね。
ブラッシングをすることで早めに発見して対処できるようになるのです。
犬のダニやノミの駆除については、『犬のノミ・ダニ対策!ノミを見つけた時の対策と予防方法!』の記事で更に詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
病気やデキモノの早期発見
ブラッシングをする時には犬をくまなく触って行いますよね。また、いつもは毛で覆われた犬の皮膚を見ることができます。
そうするとデキモノやカサブタを見付けることができますし、いつも絡んでいない場所が絡んでいたり、時には舐めて毛が無くなっているのを発見することができます。
犬が一か所をしつこく舐めるというのは「ここが痛いよ」とか「痒いよ」のサインであることが多いのです。触った時に痛いことはしていないのに「キャン」と鳴くなど、犬の異変に早く気が付くことができるのです。
もつれ毛・毛玉の除去と予防ができる
毛が伸び続ける犬種、例えばシーズやマルチーズ、ヨーキーなどの犬はブラッシングをしないと毛が絡まってきれいな長い毛を育てることはできません。
その他にも、シェットランドシープドッグやポメラニアン、ダックスなどの犬はダブルコートと言われる硬く真っ直ぐな毛とフワフワした柔らかい縮れ毛の二種類が生えています。
この毛のタイプの犬種は伸び続ける犬種と同様に絡まりやすく、毛玉をそのまま放置するとマット状になってしまうのです。
マット状になった毛玉はハサミを少しずつ入れながらほどいていくのですが、あまりにひどい場合はバリカンで丸刈りにすることもあります。
ただし、通常カットしない犬種がバリカンを入れると毛質が変わってしまったり、場合によっては毛が生えてこなくなることがあるのです。
血行促進・飼い主とのスキンシップ
ブラッシングをするとマッサージ効果で犬の体の血行が良くなる効果があります。
血行が良くなることで美しい被毛が育つことはもちろんですが、全身の健康にも良い効果があります。また、飼い主とスキンシップを取ることで犬が安心して寝てしまうこともありますよ。
アレルゲンの除去
犬のアレルギーは珍しいものではありません。人間と同様に花粉でアレルギーを起こしている犬はお散歩で体中に付いた花粉を取り除いてあげることが重要です。
ホコリもアレルギーの原因となる場合があるので、ブラッシングをして取り除いてあげることはアレルギーの症状を緩和する大事なことというわけです。
飼い主なら知っておきたい正しいブラッシング方法
ブラシを見せたら、愛犬が尻尾を振って寄って来てくれたら飼い主さんも嬉しいですよね。犬が気持ちよくなるブラッシングとは、どんなやり方か知りたくありませんか?
犬のブラッシングをする時には道具の正しい用途と使い方を知って、道具を使いこなすことが重要です。また、嫌がって逃げる犬の対処方やブラッシング中に飼い主が忘れがちなこと、するべきポイントもご説明していきます。
道具の正しい使い方と注意点
道具は使い方と用途が決まっているのです。ペットショップなどにブラシを見に行くとたくさんの種類があって悩まれる飼い主さんが多いですよね。基本的にスリッカーブラシとコームをお持ちであればブラッシングはできます。
それ以上にツヤや被毛を育てたい場合や抜け毛対策には必要なブラシがあるのです。では、それぞれに使い方や注意点をご紹介しましょう。
スリッカーブラシ
どの犬種にも使う一般的なブラシです。針金状になっていて「くの字」に曲がっています。犬の体の下の方から毛を持ち上げて毛の根元に引っかけて皮膚から離しながら毛先に向かってブラシをかけます。
この時に手首を返してしまうと「くの字」に曲がっている形状から皮膚をえぐってしまいます。皮膚から離しながらかけないとひっかき傷をつけてしまいますので注意しましょう。
犬にブラシをかける前にご自分の手でブラシをかける練習をしてみてください。力はいりません。見た目に痛いスリッカーブラシですが、正しい使い方ができていれば痛みはありませんよ。
スリッカーブラシの選び方
スリッカーブラシはハードタイプとソフトタイプの二種類があります。ハードはスリッカーブラシを使い慣れた方でしたら良いですが、初心者の方はソフトタイプをおすすめします。
最初は大きいと使いにくいと思いますので、小さなタイプをおすすめします。
コーム
スリッカーブラシとコームはセットと覚えておくと良いでしょう。ほとんど、どの犬種でも必要になります。粗い目と細かい目の両方があるタイプがおすすめです。
皮膚に対して直角にならないように使います。皮膚に立てて使ってしまうと引っ掻いてしまうことになるので注意しましょう。皮膚に沿わせるように根元からかけていきます。
ピンブラシ
ロングコートと言われる犬種の「マルチーズ」や「ヨーキー」などの犬の毛を伸ばしている時に使うブラシになります。
スリッカーブラシをかけてコームをかけて引っかかりがない状態になったらピンブラシが使えます。ですから、毎日ブラッシングを行っていて部分的なもつれを取った後、ピンブラシを使ってブラッシングをしていくのです。
このブラシは皮膚に当てて手首を返して使います。血行を良くして美しい被毛を育てるためです。
ラバーブラシ
短毛犬種の犬の抜け毛取りに使います。ラバーとはゴムのことでゴム製品の引っかかりを利用して抜け毛を取るのです。
短毛種でもスリッカーブラシとコームで一度ブラッシングを行ってからラバーブラシをかけるのが基本です。
スクラッチャー、ファーミネーターなどの抜け毛取りグッズ
様々な抜け毛対策で商品が出ていますよね。使ってみるのも良いのですが、先ほどご説明したようにほどほどにしましょう。
使用される際は購入した商品の使い方の説明をしっかり読んで安全に使いましょう。
獣毛ブラシ
スリッカーブラシとコームをしっかりかけてあり、もつれ毛や抜け毛がないという前提で使うブラシです。
豚か猪の毛でできているのが一般的でブラシの毛から犬の被毛に脂が付いてツヤがでます。乾燥する時期の仕上げに使うと良いですよ。
ブラッシングをする順番を決めるポイント
犬にとっては敏感な場所とそうでもない場所というのがあります。ブラッシングをする場合に敏感な場所は大抵の犬が嫌がる場所です。また特に愛犬が嫌がる場所というのをふまえて順番にブラッシングをするのがポイントになります
犬が敏感なのは以下の場所になります。
- 足先
- お腹
- 内股
- 脇の下
- お尻
- 顔
- 尾
ブラッシングの順番
先ほどご説明したように敏感な場所は嫌がることが多いので、そこはさけて順番を決めます。最初から3番目まではどんな犬も同じで大丈夫です。
- 一番かけやすく犬があまり気にしない背中から始めましょう
- 横腹をかけていきます
- 胸をかけます
ここからは犬によって臨機応変にかけていきます。一般的に前足より後ろ足の方が嫌がらないのですが、犬の様子を見ながら行います。
後ろ足をすごく嫌がる場合はお尻をかけてみるなど、あまり嫌がる時はある程度かけて違う所に移動して犬の気分を変えるということも有効です。ただし、部分的にかけ忘れることがあるので注意します。
使うブラシの順番とかけ忘れの予防
スリッカーブラシとコームのセットでかけることで「かけ忘れの防止」にもなります。まずスリッカーブラシを全身かけますから、毛はもつれや毛玉はほぼ取れているはずです。
ですから、次にコームを入れた時に他の場所より引っかかることで、スリッカーブラシの入れ忘れに気が付きます。その場合はスリッカーブラシでしっかりといてからコームを入れましょう。
ブラッシングの仕方を具体的に動画でご覧になった方がわかりやすいと思いますので、添付しておきます。参考になさってくださいね。
犬が動いてやらせない場合は高さのある場所で行う
床でブラッシングを行えればそれで良いのですが「逃げよう」としてできない場合は、少し高さのあるテーブルなどに犬を乗せると扱いやすくなります。
ただし、落ちると危険なので飼い主さんの体に犬をくっつけておき、絶対に犬から手を離さないでください。
また、高さのある場所でもチョロチョロ動くようでしたら犬にリードを付けて、それを短く持っておきましょう。くれぐれも犬を落とさないように注意してください。
犬を褒めるのも重要
先ほど犬に怖い顔をして行ってしまうと犬にイヤな印象を与えてしまうとご説明しましたが、ほめることを忘れる飼い主さんが意外と多いです。それとほめるタイミングが間違っていることがあります。
始める前に犬に「ブラッシングをするよ」と話しかける時は笑顔で話しかけてください。まずここでほめましょう。そして、体に犬を密着させたら毛を上げてブラッシングしていきます。
部分的に体が終わったとか区切りの段階でほめるなら良いのですが、やっている途中にほめられると「終わった」と犬が勘違いすることがあります。ブラッシングをしている時は淡々と冷静に行います。
終わったらたくさんほめる
前足など敏感な場所やその犬が嫌いな場所をやる時は犬も我慢しています。敏感な場所や嫌いな場所が終わった時はたくさん大げさにほめましょう。
飼い主さんがやってしまいがちなのが、終わって犬が「頑張ったよ!えらい?」とはしゃいでいる時、飼い主さんが片付けなどして犬をほめることを忘れていることが多いのです。
トリミングを頼んで迎えに行った際も同じです。犬は飼い主さんに迎えに来てもらって喜んでいるだけではなく、「ほめて!」とはしゃいでいるのです。
精算をしていたり、トリマーさんと話すことで飼い主さんが愛犬をほめるのを忘れてしまうことがあるのですが、犬は時間が経ってからほめられると「何でほめられているか」という関連付けが難しくなります。
ですから、終わって犬がはしゃいでいる「この時」に必ずほめてあげましょう!
まとめ
犬のブラッシングは子犬の時から行っておくのと犬は「そういう風にするもの」と認識しやすいので楽に教えられます。でも保護した犬や譲り受けた犬でも根気強く、長い目で教えていくとわかってくれるものです。
またブラッシングが嫌いになってしまった犬も「あれ、痛くない」と気が付くと落ち着いてきます。一気に全部やらなくても「徐々に」で良いのです。犬の気持ちに寄り添ってブラシで可愛がる気持ちでかけてあげてくださいね。