血便は何色か知っていますか?「赤でしょ!」って思いますよね。確かに、赤色の便は明らかに血便です。でも、血便は必ずしも赤色ではありません。黒色の血便もあるのです。
便は健康のバロメーター。体の中の見えない異常を「便の異常」という形で見えるようにしてくれています。言葉を話せない猫だから、便のバロメーターとしての役割は、人以上に重要。便の異常にちゃんと気付いて必要な対処をする。
それが愛猫と一緒に長く生活するために大切なことです。早速、便の異常の中でも出現率が高い「血便」について学んで、便の異常に敏感な飼い主を目指しましょう。
目次
猫に血便が出た時の考えられる原因
血便は体の様々な状態を教えてくれる!
口から摂取した食べ物は、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸(盲腸、結腸、直腸)を通る中で消化吸収され、便として肛門から出ます。血便は字のごとく血液が混じった便。
口から肛門までのどこかから出血していることを意味します。血便の色によって、どこからの出血なのか、おおよその検討がつきます。
黒い便(タール便)の場合
口から小腸にかけてのどこかが出血している。※黒色なのは血液が胃液と反応して変色したため
真っ赤な血が便の中に混じっている場合
小腸から大腸の前半にかけてのどこかが出血している。
真っ赤な血(鮮血)が便の表面についている場合
大腸の後半から肛門にかけてのどこかが出血している。
血便の原因はさまざま
血便は、その原因によって、あまり心配いらない場合と、命にかかわる場合があります。血便の色によってどこからの出血なのかの推測ができても、その出血の原因は検査をしなくては、わかりません。
胃腸炎
炎症を起こした胃や腸の粘膜から出血があると、血便がでます。食物アレルギーやストレスで胃腸炎を起こして血便が出ることも。色は炎症部位によって異なります。
異物誤飲
飲んでしまったおもちゃなどによって、胃や腸が傷つくと血便が出ます。色は傷ついた部位によって異なります。
寄生虫感染
猫鉤虫(ねここうちゅう)という寄生虫は、腸の粘膜にかじりついて血を吸うため、そこから出血して血便(赤色)が出ます。コクシジウムおよびトキソプラズマという寄生虫は腸の粘膜の細胞の中に寄生して、細胞を壊して出血を起こすため、血便(赤色)が出ます。
猫パルボウイルス感染症(猫白血球減少症)
猫パルボウイルスに感染すると、腸の粘膜がきちんと形成されなくなるため出血して血便が出ます。色は黒色の場合と赤色の場合があります。
死亡率が高い怖い病気で、血便が出ている場合は重篤な状態。血便が出る以前に、発熱や食欲不振などの症状が出るため、その段階で治療を開始するのが理想的です。
便秘
水分が少なく硬くなった便や、大きくなった便が肛門を傷つけることで血便(赤色)が出ます。便秘は水分不足やフードの種類、体質、老化などが原因のことが多いですが、巨大結腸症やホルモン疾患などが原因の場合もあるので注意が必要です。
腫瘍
腫瘍は血管が多く、その血管はもろいため、すぐに出血します。食道から肛門のどこかに腫瘍ができた場合、その出血により血便が出ます。色は腫瘍ができた部位によって異なります。
猫の悪性腫瘍(がん)の中で最も多いのはリンパ腫。リンパ腫の中でも最も多いのが、腸に腫瘍ができる「消化器型リンパ腫」です。
命にかかわる病気ですが、抗がん剤でコントロールできることもあります。猫のリンパ腫は猫白血病ウイルス(FeLV)の感染によって発症するものと考えられています。
子猫が血便や血尿をした時には、『子猫が血便や血尿をした時の原因や対処法』の記事を参照するようにしてください。
血便が出た猫に飼い主ができること
放置して大丈夫な血便はない!
「動物病院に行かずに様子を見て大丈夫」と断言できる血便はありません。「血便以外の症状がないから様子を見て大丈夫」と思うかもしれませんが、猫は言葉を話せません。他に痛みなどの症状があるのに、それを飼い主に伝えられないのだとしたら……。
体質的に便秘気味で、頻繁に血便する猫がいます。それは、血便で何度か動物病院に行き、他に異常が無いことを確認した経緯をもって初めて「この猫はそういう体質なのだ」と言えるもの。そのような経緯無く「体質」と判断してはいけません。
その他にも、猫はストレスに弱いのですが、そのストレスで血便する猫もいます。それも血便で何度か動物病院に行った経緯をもって「ストレスが原因」と言えるのです。
また、ストレスによる血便の場合、原因がストレスでも結果として胃腸炎などを起こしているのなら、その治療が必要になるかもしれません。「血便が出たけど病院に行くべき?」と悩む必要はありません。血便が出たら通院する。これが飼い主として必要な基本姿勢です。
先ずは便を確保
便は診断の大切な情報源。血便が出たらすぐにビニール袋に入れて密封してください。便をとるときにティッシュでつかむと、繊維が付着して検査の邪魔になります。ビニル袋を手につけて、つかみとると良いでしょう。大人の手の親指の頭ほどのサイズがあれば、検査には十分です。
常温保管だと排便後30分以内に検査する必要があります。冷蔵庫に保管すれば2時間ほどは検査に使えます。いずれにしても、なるべく早く動物病院に行く必要があります。
万が一、すぐの通院が困難な場合は、携帯電話などで血便の写真を撮影すると、診断の助けになります。
他に異常が無いかを確認する
血便以外に異常はありませんか?食欲はありますか?元気はありますか?嘔吐していませんか?最近、新しい猫が増えた、フードを変えた、引っ越したなど、環境の変化はありませんでしたか?
これらの情報は診断においてとても重要なので、獣医師にきちんと伝えられるようにしておきましょう。
もし排便の様子を見ていたのなら、「いつもより苦しそう」「いつもより時間がかかる」「何度もトイレに行くのに出ない」等、おかしいところがあったかどうかも、獣医師に伝えましょう。
血便の発症率を下げるためにできること
血便の原因の中には防ぎようのない病気もあります。それでも血便の発症率を少しでも下げるために、飼い主としてできる限りの予防策をすることが大切です。
ワクチンをきちんと接種する
猫パルボウイルスと猫白血病ウイルスはワクチンで予防可能です。獣医師と相談して、定期的にワクチン接種しましょう。
室内で生活させる
猫鉤虫(こうちゅう)やコクシジウムは便を介して感染します。屋外に出すと、感染猫の便に触れて感染するリスクが上がります。外には出さず、室内で生活させましょう。
猫に生肉を食べさせない
トキソプラズマは、生の豚肉や鶏肉を食べることで猫に感染します。決して食べさせないでください。生肉を扱ったまな板や包丁は、置いておかずにすぐに洗うこと。生肉に触れた手もしっかり洗ってから猫に触れましょう。
誤飲に注意する
ゴミは蓋のついたゴミ箱に捨てて、猫が間違って食べてしまわないようにしましょう。猫のおもちゃはサイズや素材、作りをしっかりと確認して、飲み込む可能性があるものは与えないように注意してください。
トイレの清潔を保つ
猫はとてもきれい好き。トイレが汚いと排便を我慢して便秘になることがあります。いつでも気持ちよく排便できるように、トイレは清潔にしましょう。
常に新鮮な水が飲めるようにする
便秘の原因のひとつが水分不足。いつでも新鮮な水を飲めるようにしておきましょう。夏は水分の要求量が増えるので、足りなくならないように特に注意が必要です。
飼い猫がなかなか水を飲んでくれない場合には、『飼い猫がなかなか水を飲まない!そんな時にしたい水を与える方法』の記事で詳しく対処法を解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
ところで、あなたの猫の普段の便は何色ですか?健康な便でも、フードや体質などで色はさまざま。日頃からしっかりと便をチェックして「正常な便」を知ること。それが「異常な便」に気付くための最初のステップです。
トイレ掃除の際にはきちんと便を観察しましょう。もしも猫砂にまみれてしまい、便の色や様子がわかりづらいのであれば、砂からチップに変更するなど、トイレのスタイルを変更することも検討してください。
日頃から愛猫をきちんと観察し、コミュニケーションをとっていれば、ちょっとした異変にもすぐに気付けるようになります。そして異変に気付いたらすぐに病院に行く。その心がけが愛猫を病気から救いますよ。