「今日、あなたの猫が水を飲む姿を見ましたか?」
そういえば見ていない!大丈夫かしら…と急に心配になりましたか?元々、猫はあまり水を飲まない動物です。さらに生活音をあまりたてない動物。
だから愛猫が水を飲む姿を1日に1度も目撃できなくとも、不思議はありません。目撃できなかっただけで、適切に水を摂取できているのであれば、慌てなくて大丈夫。
でももし適切に水を摂取できていないとしたら。病気で水が飲めない可能性があります。水を摂取できずに体内の水が不足すると、内臓が深刻なダメージを受けて命を落とすことも。命をつなぐ水。
水を猫に与えられるのは飼い主さん以外にいません。その自覚をしっかりと持って、今から猫と水について学びましょう。
目次
猫は元々水をあまり飲まない!?
猫は水の節約家
イエネコ(いわゆるペットの猫)の祖先はリビアヤマネコ。リビアヤマネコはアフリカや中近東の乾いた土地に生息する野生の猫です。
水が貴重な環境で生き抜くために、リビアヤマネコは、体の中の水を積極的に再利用し、できるだけ体の外に排出しない仕組みを持っています。この仕組みは、イエネコにも受け継がれました。だから猫は人や犬と比べて、水をあまり飲まなくても大丈夫なのです。
水は常に体から失われている
成猫は成人男性と同様に、体の60%以上が水でできています。猫にとっても水が大切であるのは言うまでもありません。水が体外に排出される経路はいくつかあります。メインの経路は尿。
他には、吐気から水蒸気として排出されたり、体表から蒸発したり、便として排出されたり。このようにして体の水は常に失われています。失った水を補うため、猫は1日に体重1kgあたり約30〜40mlの水を摂取する必要があります。
フードからも水を摂取している
水の摂取の経路は、「口」です。すぐに頭に浮かぶのは、水を飲む姿だと思いますが、水を摂取する方法は、飲水だけではありません。フードからも摂取します。
では具体的にフードからどれくらいの水を摂取しているのでしょうか?ペットフードの水分含有量は次の通りです(参照:一般社団法人ペットフード協会)。
分類 | 水分含有量 |
ドライフード | 10%以下 |
ソフトドライフード セミモイストフード |
25〜35% |
ウェットフード | 75%程度 |
ドライフードとウェットフードとでは、水分含有量が大きく違いますね。「食べたフードの量×水分含有量(%)」が、フードから摂取しているおおよその水の量。水分含有量はフードのパッケージに表示されています。一度確認すると良いでしょう。
猫の先祖であるリビアヤマネコの主な食料は獲物の肉。獲物の肉は70%が水です。リビアヤマネコは、必要な水のほとんどを食料から摂取しています。
ウェットフードは獲物の肉と同じくらいの水が含まれているため、ウェットフードを適切な量を食べている猫は、飲水はそれほどしません。
一方で、ドライフードを食べている猫は、フードから摂取できる水が少ないため、飲水量が多くなります。水の摂取という観点から見れば、ウェットフードを与えるのが、猫の本来の生態に則していて良いでしょう。
ただし、ウェットフードは歯石がつきやすい、一旦封を開けて器に入れると劣化が早い、などのマイナス点もあります。
飼い猫が餌をあまり食べない時の対象については、『猫が餌を食べない!?こんな時の考えられる原因と対処法』の記事で詳しく解説しています。
猫が水を飲まない時にやっておきたい上手な水の与え方
猫は水を飲むのが下手
人は水を飲む際に舌は使わずに口で吸い上げます。犬は舌をスプーンのように丸めて水をすくい上げることで、効率的に水を飲むことができます。
猫は、舌を水につけてから勢いよく口の中に引き上げ、舌の表面についた水を飲みます。水をなめるようにしか飲めないため、お世辞にも水を飲むのが上手とは言えません。
さらに猫は、体が水を必要としていても、喉の渇きを感じづらいと言われています。精神的な理由で水を飲まなくなってしまうことも。このような理由から、猫の体は水不足に陥りやすいのです。
猫が水を飲まない理由
いつもより水を飲む量が少ない場合は、何らかの病気、もしくは精神的な理由がある可能性があります。具体的には次のような理由で水を飲まなくなることがあります。
- 水の器が気に入らない
- 水の器が置いてある場所が気に入らない
- 水のにおいが気に入らない
- 水を飲むのが面倒
- 口や顔が病気や怪我で痛い
- 病気で体調が悪い
水を飲まないと深刻な事態に!
病気が原因で水を飲まない場合は、動物病院で適切な治療を受けるべきなのは言うまでもありません。病気が原因でなくても、水を飲まない場合は、状態に応じて点滴などで水を補給しなければいけません。
猫が水を飲まず、体内の水が不足すると、血液の水分が減ります。そうすると血液中の老廃物やミネラルが相対的に増加して、急性腎不全や尿路結石症(尿石症)、膀胱炎などの泌尿器疾患になり、時として命を落とすことがあります。
器の水の減りが少ない、水を飲んでいる様子がない、排尿量がいつもより少ない、と感じたら、理由は問わず、まずはすぐに動物病院に行きましょう。
猫は体が小さいので、ほんの1日水を飲まなかっただけで、急激に体の水が足りなくなり、深刻な事態に陥ります。嘔吐や下痢は体の水を奪います。また食欲がないと、フードを通して水を摂取することができなくなります。飲水状況に特に気を配りましょう。
猫に水を飲んでもらう方法
病気ではないのに水を飲んでくれない場合は、水を飲んでもらえるように、色々と工夫する必要があります。そんな時に試したい方法をご紹介していきますね♪
水の器の材質に注意する
アルミの輝きが嫌い、ガラスの透明感が嫌い等、器の素材の好き嫌いで水を飲まないことがあります。さまざまな素材の器を置いてみて、お気に入りを見つけましょう。
水の器のサイズに注意する
ヒゲが器の縁に当たるのが嫌で水を飲まない場合があります。ヒゲがあたらない程度の直径がある器を使いましょう。
水の器の置き場所を工夫する
猫がよくいる場所や、よく通る場所に器を置くと、猫が水を飲もうと思う機会が増し、飲水量が増えることがあります。数カ所に器を置くのも良いでしょう。
冬場に寒い場所に器を置くと、寒さや冷たい水が苦手な猫は、水を飲まなくなってしまいます。暖かい部屋に器を置くようにしましょう。
新鮮な水をあげる
古い水のにおいが苦手な猫がいます。頻繁に新しい水に交換しましょう。家を留守にする前後と就寝前は必ず新しい水に交換してください。水道水のカルキ臭が苦手な猫もいます。
沸騰して冷ました水をあげるか、動物用のミネラルウォーターをあげると良いでしょう。人用のミネラルウォーターは飲ませないでください。猫にとってはミネラル過多で、病気になります。
水に興味が湧くようにする
猫は流れる水で遊ぶのが大好き。水が循環して流れるタイプの器が市販されています。これを使って猫の好奇心を刺激し、水に近付く機会を増せば、飲水量も増えます。
ドライフードを与えている場合は、水でふやかして与えるか、水分含有量が多いウェットフードに変えることなども検討してみても良いでしょう。
突然水をよく飲むようになった場合の考えられる原因と対処法
飲水量が増える原因
飲水量が増加する原因は生理的なもの(病気ではない)と、病気があります。病気で飲水量が増加している場合、尿量の増加も併発していることが多いです(多飲多尿)。
飲水量が増えるのだから尿量が増加するのは当然、と思うかもしれませんが、むしろ、多飲多尿の多くは、病気によって尿量が増える結果、体内の水が不足して飲水量が増えている状態です。
飲水量が増加する生理的な理由(病気ではない)
- 暑い(夏)
- フードを水分含有量が少ないものに変えた
- 沢山遊んだ
飲水量が増加する病気
- 慢性腎不全
- 糖尿病
- 甲状腺機能亢進症
- クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
- がん(リンパ腫など)
飲水量が増えたらすぐに動物病院へ!
飲水量が増加する病気の多くが命に関わるもの。様子を見ていてはいけません。いつもよりも器の水の減りが多いと感じたり、猫砂やペットシートがいつもより重いと感じたら、速やかに通院しましょう。
高齢の猫は、慢性腎不全など、多飲多尿を起こす病気になりやすいので、特に注意が必要です。
まとめ
ところで、愛猫が1日にどれくらいの水を飲んでいるかを把握していますか?与えた水の量と残った水の量をはかり、だいたいの飲水量を数字として把握するのが理想ですが、そこまで厳密にする必要はありません。
「夜寝る前に水をかえるときはいつもだいたい器にこれくらい水が残っている」、「食後はいつも水を飲む」など、「いつもはだいたいこうだ」という“感覚”を持てば良いのです。そうすれば飲水量の変化があった時に「いつもと違う!」とすぐに気付けます。
そのような感覚は、日頃から猫のことをきちんと気に掛けないと持てません。猫は犬と比べるととても静かで、手もかかりません。だからこそ、飼い主が積極的に気に掛け、小さな変化にすぐに気付いてあげることが大切です。