突然ですが、去勢手術ときいてどう思いますか?
- 病気でもないのに手術なんてかわいそう
- 人間でしないことを猫にできない
- 猫が去勢したがっているとは思えない
- 病気の予防になるからしてあげたい
などいろんな意見があると思います。これからどのように一緒に暮らしていくのかによっても変わってきますよね。
そこで今回は、去勢手術の最適な時期や流れなど飼い主さんが知りたいと思っている事をご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
猫の去勢はした方が良い!去勢の最適な時期
去勢手術とは、猫の精巣を外科手術で取り除くことです。ここでは、去勢手術のメリットや去勢をする時期などを説明します。
猫での去勢の意義
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突然ですが、これは何の数字かわかりますか?環境省の動物愛護管理行政が発表したH27年度の猫の殺処分数です。数だけなら聞いた人も多いと思いますが、このうち仔猫の割合はいくつかご存知でしょうか?実は、なんと71%(飼い主からの引き取りは7%)です。
理由は色々ありますが、望まれずに生まれてしまい、殺処分される仔猫がほとんどです。多くは野良猫ですが、飼い主の身勝手な繁殖で殺処分される仔猫も少なからずいますし、外にも出て行くオス猫なら外で繁殖行動をしているかもしれません。
この過剰繁殖を解決するためにも去勢手術が一番有効だと言われています。これが社会学的な意義です。
次は、予防獣医学的な意義です。次の病気を予防もしくは緩和できます。
- 予防
→睾丸腫瘍、セルトリ細胞腫、精巣上体腫瘍、前立腺肥大 - 緩和
→猫エイズや猫白血病の感染リスクの減少、ケンカ傷の減少、交通事故の減少
完全に精巣を完全に取り除くので、精巣の腫瘍になることはありませんし、高齢による男性ホルモン分泌によって起こる前立腺肥大もおきません。さらに、性格も中性に近づくので温厚になり、マーキングも抑えることができます。
しかし、マーキングが癖になっていると治りません。外出も控えるようになり、ケンカも減り感染症のリスクが下がりますし、繁殖行動もしないため繁殖による感染症にもかかりにくくなります。
最近では、本能的な繁殖行動から開放される(繁殖のストレスからの開放)という考えも浸透してきており、動物愛護的にも去勢手術は推奨されています。次にデメリットを紹介します。
猫の殺処分については、『猫の殺処分の現状とは。生き物を飼っていなくても一人ひとりに知ってほしいこと』の記事も参考にしてみてください。
去勢のデメリット
一番多いのが肥満になってしまうことです。性腺摘出によってホルモン量が変化するので、必要なカロリーが15~20%減少するためと言われています。
特にオスは、テリトリー意識が弱くなるので、運動量が減ることも大きい原因です。手術そのものが、猫を肥満にしてしまうわけではないので、術後のカロリーを抑えましょう。
また、尿道が狭くなってしまい下部尿路疾患になりやすいことや糖尿病にもなりやすいことなどもいわれていますが、それらを証明している論文があるわけではありません。
雄猫の性器のトゲが去勢手術を行うと消失することがわかっていますが、尿道が狭くなることは確認されていませんし、糖尿病も去勢手術によってリスクが高まるとは結論づけられていません。
しかし、去勢手術によって体重が増加し、糖尿病の発症率が高まるという可能性は指摘されています。2016年の論文で「体重が増えれば糖尿病の発症リスクが高まる」と指摘されています。
去勢手術によって肥満になり、糖尿病を発症してしまうのではないかと言われているので、去勢手術と直接的な関係はあまりないと考えられます。それでは、去勢の時期はいつ頃が最適なのでしょうか?
去勢をする上での時期について
手術は性成熟の直前(8ヶ月齡くらい)がベストだと言われていますが、4ヶ月齡以降の健康な猫ならいつでも可能です。性成熟前に去勢をしても骨成長に問題がないことはわかっていますが、性成熟の直前にしてあげるのがベストでしょう。
特にオスは、性成熟するとマーキングや攻撃性、あごニキビやエラが出てきたりすると、去勢しても治らない場合もあるので、マーキングなどの行動が出てくる前に去勢をしてあげることが大切です。
去勢手術や避妊手術をする前に猫の発情期を知っておきましょう。『猫の発情期はいつ?飼い主なら知っておきたい猫の発情期対策』の記事で詳しく解説しています。
去勢手術をするまでの流れと手術後の気をつけること
去勢手術は、下の流れのように行われるのが一般的です。
去勢相談や身体検査
まずは病院に猫を連れて行って、簡単な健康診断や去勢を行える時期かどうかを相談しましょう。その時に不安なことを聞いておくことも重要です。寄生虫が見つかることもあるので、場合によっては手術時期が少しずれることもあります。
予約
去勢手術が決まれば、手術希望日の1週間前くらいから予約を取ります。その時に注意事項をもう一度聞いておきましょう。
手術前日
手術前日の22時以降は基本的に絶食・絶水します。なぜなら、全身麻酔後に気分が悪くなり吐いてしまうことがあるからです。麻酔がまだ完全に覚めてない場合に吐くと、嘔吐物が誤って肺に入ってしまい、最悪の場合は死に至ります。
一日くらいの絶食・絶水くらいでは栄養状態に異常を起こさないので、麻酔のリスクを下げるためにも指示に従いましょう。ただし、獣医師から特別な指示がある場合はそれに従います。
手術当日
排便・排尿を済ませてから手術になります。手術自体は短時間で終わり(10~20分ほど)、日帰りや1日入院程度で退院することができます。
怖がりの猫で暴れてしまう場合は、洗濯ネットにいれて病院に連れて行きましょう。我々人間や猫が怪我をしないためにも洗濯ネットは必要なことです。
退院
日帰りで病院に迎えに行く場合は、手術当日の一日は絶食させましょう。消化管の機能が正常に働き出す前に食べてしまうと吐いてしまうからです。
傷口を舐めないようにエリザベスカラーを渡される場合もあります。舐めてしまうと雑菌がはいり、化膿してしまうので獣医師の指示に従いましょう。化膿しないように抗生物質を飲ませるように指示がある場合もあります。
数日の間は、傷口が開いてしまう可能性があるので、激しい運動を控えるようにしましょう。糸が取れたり、舐めてただれてしまったり、傷口が開いてしまった場合は、早急に動物病院に連れて行きましょう。
再診・抜糸
手術から7~10日後に動物病院で抜糸をしてもらいます。このときに、化膿してないかきちんと診てもらいましょう。場合によっては抗生物質をもう少しの間、飲ませる場合もあります。抗生物質の影響で腸内環境が変化し、下痢を起こすこともあるので注意してください。
数日食欲がなく、おかしいと感じたら必ず獣医師に相談しましょう。抜糸の必要がない糸で縫う場合もあるので、その場合は獣医師の指示に従ってください。
抜糸の必要がない糸は勝手に取れますが、気にしてずっと舐めている猫もいるので、あまりにも気にしているようなら抜糸を行うこともあります。
去勢手術の費用
去勢手術の費用は、だいたい10,000~20,000円程度です。獣医師会が出している資料によると、平均が「12,652円」となっています。ただし、病院によって費用は変わりますので、かかりつけの病院にご相談してください。
メス猫の避妊手術の場合には、『メス猫が避妊手術をする時の流れと術後に飼い主が気をつけておきたいこと』の記事を参考にしてみてくださいね。
まとめ
- 病気でもないのに手術なんてかわいそう
- 人間でしないことを猫にできない
- 猫が去勢したがっているとは思えない
など考えている飼い主さんもこれを機に少し考えてみてはいかがでしょうか。去勢手術をしないことは、猫の健康的な生活を考えた場合デメリットのほうが大きいように思います。
手術をしないという選択をした場合は、脱走して野良猫化しないように注意しなければなりませんし、仔猫ができてしまったり問題行動が激しくなったといって安易に手放すことがないように、その猫の人生を持つという責任を再確認する必要があるでしょう。
たしかに病気でもないのに手術を行うのはためらうかもしれませんが、猫も好きでマーキングや攻撃をしているわけではありません。本能的な行動を抑えるのも自分の猫の幸福に繋がるのではないでしょうか。もし不安なことがあるなら、かかりつけの獣医さんに相談してみましょう。