飼い主が、猫の症状で一番気になるのが「目やに」。動物病院に猫が来る理由で一番多いのも「目やに」という調査結果があります。
猫は目やにが出る病気になりやすく、さらに目やには飼い主が気付きやすい症状であることがその理由でしょう。
猫の目やには、体のバロメーター。目の病気だけでなく、全身状態の悪化も教えてくれることがあります。一方で、目やには生理的にことも。「この目やには病気なの?」その疑問を今から解決していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
飼い猫の目やにが多い時の考えられる原因
猫の目やにを知ろう!
目やに(眼脂)は、結膜などから出る粘液に、老廃物(古くなった目の細胞など)や、目に入ったホコリなどが混じったもの。細胞の新陳代謝に伴う生理的な分泌物です。
通常、目やには、まばたきの際に涙と一緒に目頭にある涙点という穴から涙道(涙小菅→涙嚢→鼻涙管)に入って、鼻腔に流れます。鼻腔に流れついた目やには、鼻の粘液やホコリと合わさって、鼻くそになります。
目やにが多くなる原因
目やにが多くなる理由はふたつ。目やにがたくさんできるか、目やにがスムーズに鼻腔に流れなくなるか。その具体的な原因を紹介しますね。
目やにがたくさんできる原因
- 涙の分泌量の増加
何らかの刺激によって涙の分泌量が増加すると、涙によって老廃物がたくさん流れ落ちるため、目やにも増えます。 - 目の感染症
病原体(ウイルスや細菌など)に感染すると、白血球がその病原体を取り込んだり分解したりして、それが目やにとして排泄されるため、目やにが増えます。
目やにが鼻腔に流れなくなる原因
- まばたきの減少
まばたきが減少すると、目やにをスムーズに鼻腔に送れなくなります。まばたきの減少によって涙の蒸発が増すことも、目やにをスムーズに鼻腔に送れない原因になります。 - 涙の分泌量の減少
涙腺の異常で涙の分泌量が減少すると、目やにがスムーズに鼻腔に流れなくなります。 - 涙道の詰まり(閉塞)
涙道の炎症や、先天的な涙道の異常などによって涙道が詰まると、目やにが鼻腔に流れなくなります。
目やにの量によっては問題ない場合も!
問題がない目やに
目やにの中には、生理的な目やにで特に問題がないものがあります。具体的に、生理的な目やにを紹介しますね。
寝起きに目頭についた目やに
寝起きに目頭に付いている少量の赤茶色〜黒色の目やには、睡眠中はまばだきしないために、目やにが涙道に流れず溜まったもの。問題ありません。
短頭種の目やに
短頭種(ペルシャなどのいわゆる鼻ペチャな猫種)は、涙道が詰まりやすく、目やにが多い傾向にあります。つまり短頭種の目やには、他の品種より多くても、生理的なもの。
ただし、あまりにも目やにが多く、目の周りが不衛生になる場合は、涙道の詰まりを解除する治療が必要になることがあります。
目に異物が入り込んだために一過性に増加した目やに
目にゴミや抜け毛などが入ると、その刺激で一過性に涙が増え、目やにも増加することがあります。通常、数時間もすれば涙も目やにも治ります。
目やには綺麗に拭き取りましょう
生理的なものであっても、目やにに気付いた都度、綺麗に拭き取りましょう。そうしないと、被毛の着色や、皮膚炎を発症することがあります。
コットンやティッシュで目頭を一拭きすればすぐに取れます。手でとるのはオススメしません。目や皮膚を傷付けるリスクや、衛生的な問題があります。
目やにが乾いて固まってしまっている場合は、コットンやティッシュを水で少し湿らせるとスムーズに取れます。強くこびり付いている場合は、濡らしたコットンやティッシュを目頭にあてたまま、15秒ほど待ってから拭き取ると、目やにがふやけて取りやすくなります。
無理に取ろうとすると、毛も一緒に抜けてハゲてしまうし、猫も痛みを感じるので要注意。
ペット用のウェットティッシュや人間の赤ちゃん用のお尻拭きを使うのも便利でオススメです。間違えても、アルコールが含まれたウェットティッシュを使わないこと。アルコールで痛みを感じます。
飼い猫に涙が多いと感じた時にじゃ、病気の可能性も考えられます。詳しくは、『飼い猫に涙が多いのは病気の可能性も!?考えられる原因と対策とは?』の記事で書いていますので、参考にしてみてください。
異常な目やにの見分け方と対処法
異常な目やにの見分け方
「あれ、いつもの目やにと違うな」と思ったら、基本的に何らかの異常があると考えてください。その異常を見分けるポイントは4点あります。
【異常を見分けるポイント】
- 目やにの色
- 目やにの量
- 目やにが出ているのは両目か片目か
- 目やに以外の症状の有無
具体的に目やにの見分け方を紹介しますが、この見分け方と合致しないケースもあることをご留意くださいね。
いつもと変わらない目やにの色(赤茶色〜黒色)だが、量が多い場合
- 涙道の閉塞または炎症
副鼻腔炎による鼻涙管の圧迫、鼻腔周囲の腫瘍、涙道の炎症、先天的な涙道の閉塞などがあると、涙道が詰まり、目やにが鼻腔に流れなくなります。
黄色や緑色の目やに(膿状の目やに)
- 細菌感染
細菌感染によって目が炎症(結膜炎など)している状態です。猫で多いのはクラミジア感染症(「猫風邪」のひとつ)です。クラミジア感染症の初期は片目だけに発症しますが、その後、両目に発症します。
咳や鼻水、食欲不振などの症状を伴うことが多いです。炎症が涙腺に及ぶと、涙の分泌が減少し、固い目やにが目の周囲について目が開かなくなることも。稀に、目やにを介して人に感染し、結膜炎を起こすことがあります。 - 二次的な細菌感染
何らかの原因(ウイルス感染、目の外傷や異物混入、全身的な免疫低下など)によって目のバリア機能が低下した結果として、二次的に細菌感染を起こしている場合もあります。
水っぽい透明〜白色の目やにに多涙を併発
- 逆まつ毛や目の中の異物(毛、ゴミなど)による継続的な刺激
両目に発症する場合と片目に発症する場合があります。先述の通り、異物の刺激によって一過性に増加した目やには、生理的な目やにの範疇と考えて良いでしょう。ただし1日以上、異常な目やにが続く場合は、病的なもの(自力では排除不可能な異物、異物による外傷を併発など)を疑ってください。 - アレルギー
アレルギーの原因は、ハウスダストや花粉など。症状は両目に現れることが多く、くしゃみ、咳、鼻水などの症状を併発することがあります。 - 目の外傷
受傷した目だけに症状が出るため、通常は片目だけに発症します。症状が進行すると、細菌感染を併発して、目やにが黄色や緑色になります。 - ウイルス感染症
ウイルス感染症によって目が炎症(結膜炎など)している状態です。具体的には猫ヘルペスウイルス感染症、猫カリシウイルス感染症など(いわゆる「猫風邪」)。両目に発症します。咳や鼻水、発熱や食欲不振などの症状も伴います。症状が進行すると、細菌感染を併発して、目やにが黄色や緑色になります。
異常な目やにの対処法
異常な目やにに気付いたら早めに動物病院に行きましょう。特に感染症の場合、全身状態が悪化する可能性や、他の猫にうつる可能性も。感染症を疑う状態であれば、他の猫との接触を避けることも必要です。
目は外に露出しているため、感染の脅威にさらされやすい部位。だから、何らかの病気で体の免疫機能が落ちていると、早々に感染を起こす部位でもあります。
つまり、目やにが、体の異常を早期に知らせてくれる場合も。特に猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスのキャリア猫は、目やにが発病のサインの可能性もあるので、注意する必要があります。
病気が原因の目やにを拭き取る場合
病気が原因の目やにも、放って置くと皮膚炎や二次感染の原因になりますので、生理的な目やにと同様の方法で拭き取りましょう。ただし感染症の場合、目やにの中には病原体がいます。
クラミジアは人に感染する可能性も。だから、目やにを拭き取った後はすぐに手洗いしてください。
猫に目やにや涙が多い場合は結膜炎の可能性も考えられます。結膜炎については、『猫に目ヤニや涙が出てきたら結膜炎かも!?その原因と治療法』の記事で詳しく書いています。
まとめ
生理的な目やにの量や色には個体差があります。だから「この目やになら大丈夫」という絶対的な指標は示せません。毎日一緒に生活している飼い主が「あれ?いつもと違うな」と思ったら、それが病気のサインです。
愛猫との生活で培った飼い主としてのカンを信じて、迷わず動物病院に行ってください。そうして、まんまるでキラキラした目の猫との幸せな生活を守りましょう。