子猫は下痢によくなります。病気のせいだったり、腸が未熟なためだったりと、原因はさまざま。下痢の原因の中には、命の危険がある病気があります。
まだ体の小さな子猫は、下痢によって脱水や栄養不良を起こしやすく命の危険に陥ることも。
家族になったばかりの子猫。中には子猫を飼うのが初めての飼い主もいることでしょう。子猫の便を見て「子猫のウンチって、こんな感じが普通なのかしら……。」と、不安になることがあると思います。
子猫の下痢を見落とさず、適切に対処できる飼い主になるために、子猫の下痢について勉強しましょう。
目次
子猫が下痢になった時の原因
子猫の下痢の危険性
子猫は免疫機能が不十分な中、ペットショップやブリーダーの元など、猫が多数いる環境で過ごすので、感染症によって下痢を起こすことが多いのが大きな特徴。中には命を落とすような怖い感染症もあります。
さらに、子猫は体が小さくて栄養や水分を体内にたくさん蓄えておくことができないため、下痢の原因が何であれ下痢によってすぐに栄養不良や脱水を起こしてしまい、下痢自体が原因となって命を落とすこともあります。
子猫の下痢は危険性が高く、成猫以上に注意する必要があるのです。
子猫の正常な便を知ることが大切
下痢に気付くためには、子猫の正常な便の性状を知る必要があります。子猫は成長に伴って、母乳(ミルク)から離乳食、普通食へと食事が変化していきます。
それにともなって、正常な便の性状も変化します。個体差や与えているフードの種類によって、便の性状にも多少違いがでますが、成長段階別の正常な便の性状のおおよその目安は次の通りです。
【成長段階別の便の性状】
- 離乳食開始前(誕生〜生後約1か月)
黄色〜茶色のペースト状の便。 - 離乳食中(生後約1か月〜生後約3.5か月)
離乳が進んで母乳(ミルク)を飲む量が減るにつれ、ペースト状の便から形のある便へ。 - 離乳完了後(生後約3.5か月〜)
成猫と同じ性状の便。具体的には、表面にトイレの砂が付着する程度にほどよく水分を含み、持ち上げても形を維持する程度の硬さがある便。
子猫の下痢の目安
下痢は、便の水分が多すぎる状態。成猫の場合、いつも同じ食事を食べ、体も成熟しているので、健康な便の性状は一定しています。だから「いつもの便より水っぽい!」と、飼い主もすぐに下痢に気付けます。
一方で、離乳食を食べている子猫は、食事の変化に伴って「いつもの便」の基準が変化する訳ですから、下痢の判断が難しい場合もあります。とは言え、直前の便と比較することで、「昨日の便より水っぽい!」と気付くのは難しくないでしょう。
排便回数の増加も下痢の特徴のひとつ。下痢と判断するキーのひとつにしましょう(排便回数に変化がない下痢もあります)。お尻の汚れ方も、下痢と判断するキーになります。いつもよりお尻の周りが便で汚れていれば、下痢の可能性大!
子猫の下痢の原因
子猫の下痢の原因には病気と病気以外があります。それぞれについて子猫で多い原因を紹介しますね。
下痢の原因が病気の場合
寄生虫感染症
猫回虫、猫鉤虫(ねここうちゅう)、コクシジウム、ジアルジア(ランブル鞭毛虫)など。早いと生後3週から下痢や血便が出ることがあります。
猫パルボウイルス感染症(猫汎白血球減少症)
成猫は症状が出ることが少ないですが、子猫が感染すると、腸炎を起こして下痢や血便に。白血球が減少して色々な病原体に二次感染しやすくなり、命を落とすこともあります。混合ワクチンで予防可能です。
猫腸コロナウイルス感染症
成猫は症状が出ることが少ないですが、子猫が感染すると、時として腸炎を起こして下痢や血便になります。命を落とすことは滅多にありません。
持続感染した場合、猫の体内でウイルスが突然変異して、猫伝染性腹膜炎ウイルスに変身するリスクがあります。ワクチンはありません。
猫伝染性腹膜炎(FIP)
猫腸コロナウイルスが猫の体内で突然変異して、猫伝染性腹膜炎ウイルスに変身した結果、発症します。子猫(1歳未満)の発症がとても多く、致死率が非常に高い怖い病気。ワクチンはありません。
中毒
チョコレート、ココア、牛乳、観葉植物(アロエ、アマリリス、シクラメン、スイセン、スズラン、アイビー、チューリップ、ツツジ科、ナス科、バラ科、ユリ科など他にも多数)を誤って食べると、中毒を起こして下痢になります。命を落とすことも。
子猫は好奇心旺盛で、色々なものをすぐに口にするため、中毒に特に注意する必要があります。
中毒を起こすものは、捨てる、買わない、安全なところに保管する。子猫とはいえ運動神経抜群ですから、少し高い所に置いたくらいでは、安全とは言えません。
熱中症
熱中症になると、腸の蠕動運動が過剰になり、下痢を起こします。子猫は体が小さく、体温調整機能も未熟なので、熱中症になりやすく、注意が必要です。
夏に室温と湿度に注意するのはもちろんのこと、冬に子猫の寝床全体をヒーターやホットカーペートなどであたためすぎないよう注意しましょう。
食物アレルギー
生後6か月から発症リスクが高まります。食物アレルギーを起こしやすい食材は、牛肉、魚、鶏肉、乳製品、小麦、トウモロコシ。これ以外にも様々な食材がアレルギーを起こす可能性があります。
よく勘違いされていますが、猫に牛乳は与えてはいけません。詳しくは、『猫に牛乳を与えてはいけない!下痢や体調不良の原因になる可能性も!』の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
病気以外が原因の場合
過食や過飲
食事や水、ミルクを飲みすぎると、十分に消化吸収ができず、下痢になります。
食事の変化
離乳食の段階を進めた時や、フードの製品を変えた時などは、慣れない食事につき十分に消化吸収できず、下痢になることが多いです。
冷え
クーラーの効きすぎや、冷たい水やミルク、食事を口にすることで、腸の蠕動運動が過剰になると、下痢になります。子猫は体が小さいので、体が冷えやすく、注意が必要です。
猫にとっての適温は季節ごとに違います。『猫にとっての適温は何度?春夏秋冬それぞれを解説!』の記事で詳しく解説しています。
ストレス
ストレスによって腸の蠕動運動が過剰になって、下痢になります。新しく家族に迎えたばかりの子猫は、慣れない環境での生活が大きなストレスになります。
猫は非常にストレスを感じやすい生き物なので、飼い主さんは必ずどんな事がストレスになってしまうのかを知っておきましょう。
詳しくは、『猫がストレスを感じた時の行動とは?ストレスフリーな生活をさせる為にできること』の記事で解説しています。
子猫が下痢になった時に飼い主ができること
様子を見ても大丈夫な子猫の下痢
次の全てを満たしている場合は、様子を見ても良い下痢です。ただし、急変する可能性もあるので、家を留守にせず、子猫と1日一緒に居て急変に対応できる体制をとる必要があります。
感染症の可能性も否定できないため、多頭飼いの場合は、下痢の子猫は隔離しましょう。
- 下痢以外の症状(食欲不振、元気消失、鼻水、咳など)がない
- 下痢の回数が1日2回以下
- 下痢が2日続いていない(下痢になって2日未満)
- 下痢の中に血が混じっていない(血便ではない)
- 下痢の中に異物(寄生虫や植物片など)が混じっていない
- 中毒の原因となる物を口にしていない
すぐに通院すべき子猫の下痢
次のいずれかひとつでも満たしている場合は、すぐに動物病院に行きましょう。
- 下痢以外の症状(食欲不振、元気消失、鼻水、咳など)がある
- 下痢の回数が1日3回以上
- 下痢が2日以上続いている
- 下痢の中に血が混じっている(血便)
- 下痢の中に異物(寄生虫や植物片など)が混じっている
- 中毒の原因となる物を口にした
下痢便を動物病院に持参すると、検査がスムーズに進みます。できれば、次の方法で下痢便を保管し、動物病院に持ってゆきましょう。
なお、下痢便を保管し損じても、気にする必要はありません。次に下痢が出るのを待ったりしないで、すぐに動物病院へ。
下痢便の保管方法
- 下痢が出たらすぐにビニール袋を手につけてつかみとる
※便のサイズは、大人の手の親指の頭ほどで十分 - つかみとるのに使ったビニール袋にそのまま入れて、密封する
- 冷蔵庫に保管する
- 保冷剤と一緒にして動物病院に持ってゆく
※常温保管の場合、排泄後30分以内に検査する必要があります。冷蔵庫に保管すれば2時間ほどは検査に使えます。
子猫が下痢にならないために飼い主ができること
子猫のストレスを軽減する
新しく家族に迎えた子猫は、新しい環境に慣れるまで、しばらく時間が必要です。最初の1週間ほどは、次の点に特に気を付けて、ストレス軽減を目指しましょう。
フードはそれまで食べていたのと同じ製品をあげる
子猫を引き取る際に、ペットショップやブリーダーにそれまで食べていたフードの製品名を確認しましょう。
触りすぎない
猫がひとりでリラックスしている場合や寝ている場合は、そっとしておきましょう。かわりに、猫が甘えてきた時は、たくさん触って、遊んであげてください。
大きな音や声を立てない
猫は、大きな音が苦手。特に、慣れない環境に来たばかりの子猫は、大きな音が恐怖になります。TVや音楽の音も控え目に。玄関のチャイムや電話の着信音もできれば小さくしてください。
安心できる寝床を用意する
ケージを用意して、その中にトイレと水、そして安心できる柔らかい寝床を入れてあげましょう。
生活環境を清潔にする
トイレは汚れに気付いた都度の掃除が理想。それが難しい場合、最低でも1日2回は掃除すること。水や食事は新鮮なものをあげましょう。
寝床は自分のニオイがついている方が安心するので、最初の2週間程は、排泄物で汚れた場合以外は、洗わないでください。
適温と湿度を維持する
猫の適温は25度ですが、子猫の場合は30度程度が適温です。昼夜問わず、適温を維持しましょう。冬場は部屋全体をあたためなくても、猫の寝床をあたためれば大丈夫。
その際は、寝床全体ではなく半分ほどを猫用のホットカーペットやヒーターであたためることで、暑すぎた時の逃げ場を確保すること。湿度は60%程度に保ちましょう。
お披露目はしばらく我慢
可愛い子猫ですから、友達にお披露目したくなりますが、知らない人に見られたり、触られたりするのは子猫にとってかなりのストレス。
できれば1週間ほどは、友人の来訪は避け、家族だけで見守りましょう。もちろん、子猫を連れた外出も控えてください。
室内飼いを徹底する
子猫は成長に伴って活動範囲も広がります。外に出してあげたくなるかもしれませんが、それはオススメしません。
自由に外にゆける場合、大抵は外で排泄するので、下痢に気付くのが難しくなります。さらに、外に出ると感染症や中毒のリスクが高くなります。
室内にずっといることによる猫のストレスが気になるかもしれませんが、縄張り争いも命の危険もなく、安心して過ごせる室内こそが、子猫にとって心身ともにストレスが一番少ない場所。だから、室内飼いを徹底することを強くオススメします。
ワクチンや予防薬で予防する
下痢を起こすウイルスや寄生虫の中には、ワクチンや薬で予防可能なものがあります。ワクチンは、適切なタイミングで複数回接種する必要があります。
予防薬も、投与に適した月齢があります。子猫を家族に迎えたら、ワクチンや予防薬について、獣医師に相談しましょう。
猫の予防接種は必ず定期的に行っておきましょう。ただ、予防接種は3種、5種などありますが、内容がどのようなものなのか飼い主さんが知らないことも多いのが現状です。
予防接種のワクチンとはどういったものかについて、『猫の予防接種を知ろう!ワクチンの種類や費用まとめ』の記事で解説していますので、飼い主さんは必ず目を通しておきましょう。
まとめ
今、まさに子猫が下痢をしていて、不安になってこのページを読んでいる方。もしまだ一度も子猫を動物病院に連れて行ったことがないならば、これを機に、子猫の全身状態のチェックも兼ねて、一度動物病院に行ってはいかがでしょうか。
なお、予防接種していない子猫は、動物病院で感染症にかかるリスクがありますので、待合室では他の猫から少し離れることをオススメします(2.5メートル程度離れれば大丈夫)。
始まったばかりの猫との生活。動物病院ともこれからながい付き合いになりますので、早めに安心できるホームドクターを見つけることも大切です。