日本はエビをたくさん消費する国のトップクラス。確かに日本食でも中華でもよく登場する食べる機会の多い食材ですし、何より美味しいですよね。
これだけよく食べている馴染みのある食材ですが、実は犬に与えてはいけない物の中に「エビ」も入っているのをご存知でしたか?犬が病気になってしまう恐れもあるのです。
今回はこのエビを食べた時に起こり得る病気と症状について、わかりやすくご説明していきましょう。
目次
犬がエビを食べた時の危険性
犬がエビを食べた時には具体的にどういった症状を引き起こすのでしょうか。
ちょっと聞きなれない病気もあるのですが、違う名称ではお聞きになった事がある病気ですよ。では、その症状と病気について細かにご説明していきましょう。
まず、犬がエビを食べた時に起こり得る症状は大きく3つ可能性があります。
- チアミン欠乏症を引き起こす
- アレルギー症状が出る事がある
- 下痢、嘔吐をする事がある
チアミン欠乏症
生の甲殻類にはチアミナーゼというビタミンB1を分解する酵素を含んでいます。エビもこの酵素を含んでいる食品にあたります。
チアミナーゼは、熱に弱く加熱すれば活力を失います。ですから、生のエビをたくさん食べる事でチアミン欠乏症の危険性が出てくるのです。
犬はかつて狩猟によって食糧を得ていました。なかなか食べられない事もあったために、食べられる時に一気に食べておくという習性が残っていて、盗み食いをする時には大量に食べてしまう事があります。
普段、良質なドッグフードを食べている犬がエビを少量食べた程度であればチアミン欠乏症になる事はほとんどないのですが、こういった事から注意が必要なのです。
また一気にたくさん食べなくても以下の状況では「チアミン欠乏症」になる危険性があります。
- 長期にわたって「チアミナーゼ」を多く含む食材を与える
- 偏食させて栄養がかたよっている状況で「チアミナーゼ」を多く含む食材を与える
- 病気などで食事量が取れない状況で「チアミナーゼ」を多く含む食材を与える
チアミン欠乏症の別名「脚気」
チアミン欠乏症と言われてわからなくても「脚気(かっけ」と言われるとお聞きになった事があるのではないでしょうか。
足の膝のお皿の下の部分を叩くと通常は跳ね上がりますが、脚気になるとこの反射がなくなるので一般的にこの病気を疑われた場合はこの検査をするのです。
またチアミン欠乏症は江戸時代には「江戸患い」と呼ばれていたのです。米ぬかにはビタミンB1を多く含んでいますが、私たちはお米を精米して食べていますよね。
江戸時代からお米を精米して食べる習慣が江戸で根付いて江戸を中心に患者が増加したために、このネーミングがついたというわけなのです。
チアミン欠乏症の症状
脳はブドウ糖を代謝してエネルギー源にしているのですが、この時に必要な栄養素がチアミン(ビタミンB1)なのです。
神経症状が特徴で「食欲がなくなる」「ふらふらする」「元気がなくなる」といった症状に始まり、心臓に影響が出て心室肥大や徐脈(心拍がゆっくりになる)が起こるようになり、処置しなければ昏睡して死亡するのです。
チアミナーゼを含む食材
他にも「チアミナーゼ」を含む食材はたくさんあります。参考までに「チアミナーゼ」をたくさん含む食材をご紹介しておきます。
- 魚介類(特に二枚貝が危険)
- 甲殻類(カニ・シャコなど)
- シダ類(ワラビ・ゼンマイなど)
エビの殻は消化不良を起こす
エビの殻は出汁を取ってお汁物にするなどしますが、私たち人間も硬いので消化が悪いからと基本的に食べないですよね。犬も同じようにエビの殻は消化不良をおこしやすいです。
特に犬は丸呑みする習性があるので、消化不良を起こして胃腸に負担をかけてしまう事になるのです。またエビの殻はその硬さと形状から口の中を傷付けてしまう事もあります。
加熱したエビは消化不良を起こす
チアミン欠乏症は生で食べた場合に起こり得るのですが、では加熱した場合はどうでしょうか。
加熱したエビは「チアミナーゼ」が活力を失っているのでチアミン欠乏症にはなりませんが、たくさん食べると消化不良を起こして下痢や嘔吐の原因になる事があるのです。
甲殻類アレルギー
先ほど加熱した時に消化不良を起こして下痢や嘔吐をする場合があるとご説明しましたが、犬が少量のエビを食べて下痢を起こした場合は、甲殻類アレルギーの可能性があります。
これはエビ、カニ、シャコなどの甲殻類がもっているトロポミオシンというたんぱく質が原因と考えられています。このトロポミオシンという物質は熱に強く、加熱しても変質しないのでアレルギーを起こす危険性があります。
アレルギーはすぐに反応が出る「即時型過敏」と呼ばれる症状と、反応に24~48時間ほどかかる「遅延型過敏症」というのがあります。
またアナフィラキシーショックと言って急死してしまう危険な状態を引き起こす可能性がある食材としては、蕎麦やピーナッツが有名ですが、この甲殻類もアナフィラキシーショックを起こす危険のある食材の一つなのです。
アレルギーを起こすと浮腫を起こす事があるのですが、喉に浮腫が起こり呼吸不全に陥る事で急死する事があるのです。アレルギーには様々な症状がありますのでご紹介しておきましょう。
- 下痢
- 嘔吐
- 皮膚の痒み(目の周囲・口周り・耳・足先・足裏・内股・背中など)
- 体の震え
- 目の充血
- 元気がなくなる
犬にエビを与えてはいけない理由!
これまでご説明させていただいた事からおわかりいただけたように、犬にエビを食べさせてはいけない理由として、3つあげる事ができます。
- 消化が悪い
- 危険な成分を含んでいる
- アレルゲンとなる物質を含んでいる
それでも犬に与えるメリットはあるのでしょうか?次に、エビに含まれる栄養と飼い主さんが愛犬にしてあげるべき事についてご説明します。
わざわざ食べさせる必要がない
犬が食べてはいけない食材ですが、犬用のお煎餅やサプリメント類に含まれている事がありますよね。
加熱してあるエビを少量与えるなら大丈夫と言っておられる専門家の方もいらっしゃるようですが、加工してある物でもアレルギーが起こる危険はあります。
愛犬がアレルギーの検査を受けていない場合、アレルギーを持っている場合がありますよね。わざわざそういった可能性のある食材を選んで愛犬に与える必要はないと言えます。
エビは犬にとって必要な食材ではない
エビには、キチンキトサンという成分が含まれています。舌を噛んでしまいそうなこの物質は食物繊維の一種で腸内環境を整えて便通が良くなったり、免疫向上の効果があるとされています。
ただしエビその物にはこのキチンキトサンはほんの少量しか含まれていません。犬に効果がある量を摂らせるとなると危険性も上がるというわけです。ですから、エビは犬にとって特に必要とする食材ではないのですね。
ドッグフードを厳選する
犬に手作り食を与えたいと考える飼い主さんもいらっしゃるようですが、それはちょっと危険かもしれません。
というのも、愛犬の事を考えていろいろなタイプ別に必要な栄養素を調べ尽くして、その時の愛犬に合わせた食事を作ってあげるという事は難しいのではないでしょうか。
実際には足りない栄養素が出てきてしまったりする事もあるでしょう。チアミン欠乏症は手作り食にした時にビタミンB1が足りなくなって、いち早く出る栄養欠乏症と言われています。
その点、ドッグフードは年齢や犬種、体の具合などからも企業が研究して栄養素を変えてあります。
品質の良い、その時の愛犬の状態に合わせたドッグフードを探してあげる事の方が愛犬には良い影響を与えられるのではないでしょうか。
その他にも、犬が食べてはいけない食べ物は多くあります。詳しくは、『犬にいちごを食べさせても大丈夫?食べてはいけないフルーツは?』の記事でも紹介していますので、ぜひ飼い主さんは合わせて参考にしてみてくださいね。
まとめ
「やめられないとまらない」の通りに美味しくてついつい食べ過ぎてしまう「えびせん」。
においが強いので犬にしてみるととても魅力的なようです。ですが、先ほどご説明した事の他にも人間用のえびせんは塩分が高いので食べさせてはいけません。
犬に甘えられると弱いのが飼い主の宿命なのですが、そこは愛犬のためにグッとこらえましょう。それが愛犬を長生きさせるコツなのですよ。