猫も人のように喘息になるって知っていますか?猫は犬と比べて咳をすることが少ない動物。そんな猫なのに、突然、発作的に咳をすることがあります。その様子はとても苦しそうで、何事かとびっくり。
そんな猫の発作的な咳の原因として多いのが喘息です。喘息は残念ながら完治は難しい病気で、時として命を落とすことも。
でも早期治療と環境改善で症状をコントロールすれば、愛猫により良い生活を送ってもらうことができます。そのためには、喘息の症状に気付き、適切に対処できる飼い主になることが必要。
今から猫の喘息について解説しますので、ぜひ最後までしっかり読んで、猫の喘息ツウな飼い主さんになってくださいね。
目次
猫が喘息になる原因と症状
知っておきたい喘息の正しい基礎知識!
喘息とは、発作的な咳や、喘鳴(ぜんめい)(ヒューヒュー、ゼーゼーとノドが鳴る)を繰り返す病気。重症化すると呼吸不全により命を落とすこともあります。
喘息の発症メカニズムは不明な点も多いですが、次のように考えられています。
シャム猫で発症が多いと言われています。また比較的若齢での発症が多い(発症の平均年齢は4歳)ものの、猫種や年齢問わず、発症する病気です。
猫の喘息の原因
喘息の根本原因は気管や気管支の慢性的な炎症。喘息の症状を起こす直接的原因は何らかの刺激です。つまり、喘息の原因には、慢性的な炎症の原因と、症状を起こす刺激のふたつがあります。それぞれについて具体的に説明しますね。
気管や気管支の慢性的な炎症の原因
- アレルギー
慢性的な炎症の原因のほとんどがアレルギーです。アレルゲン(アレルギーの原因物質)はさまざまですが、ハウスダストや花粉がアレルゲンであるケースが多いです。ストレスは免役機能に影響をおよぼし、アレルギーを発症しやすくするため、慢性的な炎症の間接的な原因になります。 - 猫風邪
猫風邪は急性気管支炎を起こします。猫風邪をこじらせて、気管支炎が長期化すると、慢性的な炎症に移行して喘息を発症。こうなると、猫風邪が治っても、喘息による咳が続きます。さらに猫風邪は、喘息を発症している猫において、症状悪化のスイッチにも。
気管や気管支を刺激するもの
ホコリ、花粉、冷気、煙(タバコ、料理、花火など)、排気ガス、香水、運動など
猫の喘息の症状
猫の喘息の症状は具体的に次の通りです。
- 発作的な咳
元気だったのに急に立ち止まり、四つん這いになって、頭を下に向けて、首を伸ばした姿勢で「ゼーゼー」「グーグー」と苦しそうな音を出しながら息を吐いて、咳をします。数回(およそ6回ほど)、咳を繰り返すと、ケロッとして、いつも通りの元気な様子に戻るのが特徴。発症頻度は次第に増し、1日に何度も繰り返すようになります。具体的な様子については、下記の動画もぜひ参考にしてくださいね。
- 喘鳴
重症化すると、息を吐く時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」と喘鳴が聞こえる場合があります。これは細くなった気管や気管支を空気が通る際に鳴る音。さらにひどくなると、息を吸う時にも喘鳴が聞こえることも。 - 開口呼吸
重症化すると、息を吐くのが困難となり(呼気性の呼吸困難)、口を開けて苦しそうに呼吸するようになります。 - チアノーゼ
重症化して呼吸困難を起こすと、酸欠を起こしてチアノーゼ(口の粘膜などが青紫色になる)になります。
猫の発作的な咳の仕草は、吐く前の仕草に似ているため、「吐きたそうにするのに、吐かない!」と飼い主が動物病院に駆け込んだ結果、喘息と診断されるケースがあります。
実際に吐物があれば、発作的な咳と、吐く前の仕草の区別は容易ですが、悪心(気持ち悪い)の場合でも吐物が出ないケースがあるため、両者の区別を難しくします。発作的な咳と、吐く前の仕草の見極め方を紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
発作的な咳
発作的に息を吐く仕草を繰り返す。息を吐くとき(お腹が凹むとき)に、ノドから「ゼーゼー」「グーグー」というような音が鳴る。
吐く前の仕草(嘔吐・悪心)
発作的に息を吸う仕草を繰り返す。息を吸うとき(お腹が膨らむとき)に、ノドや胸から「ゴロゴロ」「ギュー」と、液体物が動いているような音が鳴ったり、息を吐く時(お腹が凹むとき)に、「カコン、カコン」と音が鳴る。
発作的な咳も、吐物の出ない悪心も、通院が必要な症状です。見極めにこだわりすぎず、どちらかを疑う症状があれば、極力早めに通院してくださいね。なお、携帯電話などで、その様子を動画撮影して、獣医師に見せると、診断がスムーズになります。
猫の喘息に似た病気
猫の喘息と似た症状が出る病気の代表は、猫風邪、フィラリア症、心疾患。それぞれについて、簡単に説明しますね。
猫風邪
猫風邪の症状として、細菌やウイルスによる呼吸器感染症。急性気管支炎を起こし、咳が出ます。
鼻水、元気消失、食欲不振、目やに、嘔吐、発熱などを伴います。こじらせると喘息を発症することがありますので、他の症状が治まっても、咳だけが長期間続く場合は、要注意。
猫風邪について、『猫風邪はただの風邪?かかった時の症状と対処法』の記事で更に詳しく解説しています。
フィラリア症(犬糸状虫症)
犬の病気と思われがちなフィラリア症ですが、猫もかかる病気。蚊が媒介するフィラリア(犬糸状虫)と呼ばれる線虫が、肺動脈(心臓のそばの血管)の中に寄生します。
血流が滞って肺に水が溜まり、咳が出るとともに、嘔吐、食欲不振、体重減少を伴うことが多いです。
心疾患(心筋症、先天性心疾患など)
心疾患によって心臓がうまく機能しなくなると、血流が滞って肺に水が溜まり、咳が出ます。元気消失、食欲不振、腹水貯留(お腹が膨らむ)などの症状を伴います。
喘息の場合、発作的な咳の前後は元気で普段と変わらない様子ですが、喘息と似た症状が出る他の病気は、咳以外の症状も伴う点が特徴です。
ただしその症状が明確でないケースも。何れにしても、どの病気も早期治療が必要ですので、疑う症状が出たらすぐに通院しましょう。
なお、喘息の診断は、レントゲン検査、血液検査(喘息の場合、アレルギーに関連して白血球の増加がある)、聴診、診断的治療(喘息の場合、抗生剤で症状が改善せず、ステロイドで症状が著しく改善する)にて総合的に行います。
喘息持ちの猫と生活する上で気をつけたいこと
猫の喘息と上手く付き合ってゆく
猫の喘息は、アレルギーが根本原因であることがほとんどにつき、完治は難しい病気です。だから、飼い主ができることは、適切な治療を受けさせること。
それから喘息の根本原因となるアレルゲンと、症状の引き金となる刺激との接触を極力減らしてあげることです。具体的な方法については次から説明してゆきますね。
異常に気付いたらまず通院!
喘息の初期は、咳がそれほど頻繁に出ません。だから「ちょっと様子を見よう」と思ってしまう場合も。でも、喘息は早期治療がとても大切です。気管や気管支の炎症が続くと、その粘膜が厚くなって、元に戻らなくなります。
こうなると、どんな治療をしても気管や気管支が拡張しなくなり、喘息が難治化。ひどい症状に悩む日々になります。猫の喘息の治療では、炎症を出来る限り早期に抑えることがとても大切なのです。
愛猫の発作的な咳を目撃したら、様子を見るのではなく、極力早めに通院しましょう。
猫の喘息の治療
薬による治療がメインです。処方される薬は主にステロイド剤や抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤など。さらに酸素吸入やネブライザー療法(薬を吸入させる方法)を行うことも。安静の指示がある場合もあります。
これらはいずれも対症療法(呼吸を楽にする目的のもの)です。調子がいいからといって自己判断で治療をやめてしまうと、症状が再発する可能性が高いことを留意ください。
猫の定期的な健康診断と予防接種で、他の呼吸器疾患(猫風邪など)の発症を予防し、喘息の悪化を防ぐことも大切です。
アレルゲンや刺激を排除する
アレルゲンおよび刺激との接触を極力減らすことで、症状が起きないようにすることが大切。つまり、環境対策が必要になります。
喘息の原因となっているアレルゲンや刺激を厳密に特定するのは難しいので、アレルゲンや刺激になりやすい物をできるだけ取り除くことを目指しましょう。その具体的な対策を紹介しますね。
【アレルゲンや刺激を減らす対策】
- 床材はじゅうたんや畳を極力避ける
- 布製のソファーは極力避ける
- こまめに掃除と洗濯をする(掃除の際には窓を開けて換気する)
※脱走に注意!朝一や帰宅直後の掃除が一番効果的です。 - 布製のカーテンは、こまめに洗濯したり、掃除機をかけたりする
※ハウスダスト対策用のカーテンが市販されているので、それを使用するのも良い。 - 室内に洗濯物を干さない
- 空気清浄機を使用する
- 台所の煙は換気扇で速やかに排気する
- エアコンは定期的に清掃する
- 猫がいる部屋でタバコを吸わない
- 蚊取り線香や花火の煙が猫に届かないようにする
- 猫がいる部屋で芳香剤、お香、香水、消臭剤や噴射式のスプレーは使わない
- トイレ砂は粉が舞わないタイプのものを選ぶ
- 同居動物も含めて、こまめにブラッシングする
とてもたくさんの対策を紹介したので、「こんなに色々しなくてはいけないの……」と自信を無くしてしまったかもしれません。全ての対策を行うのが理想ですが、何より継続が重要ですから、無理なく出来ることを続けてください。
猫を日頃からよく観察すると、発作的な咳がおきた直前の状況について、ある一定の傾向が掴めることがあります。そこから、咳が出る一定の条件を把握できれば、アレルゲンや刺激にあたりをつけ、その対策に注力。
結果、症状が劇的に緩和することがあります。だから、咳が出た際は、状況(場所、時間、その直前に猫や飼い主がしていたことなど)を記録し、分析するのもひとつです。
肥満は大敵!
肥満は、気管に悪影響をおよぼすため、喘息の原因にも悪化要因にもなります。さらに、肥満猫が喘息を発症している場合、ダイエットで、その症状が緩和するケースがあります。だから、肥満にならないように食事管理しましょう。
すでに肥満の場合は、ダイエットが必要です。ただし、飼い主の判断でダイエットするのは危険です。誤ったダイエットで内臓疾患を発症したり、過度のストレスが溜まったりすることも。まずは獣医師に相談しましょう。
ストレスフリーな生活を目指す
ストレスは喘息の原因にも悪化要因にもなります。猫にとってストレスフリーな生活環境を整えましょう。
その具体的な方法について詳しくは、『猫がストレスを感じた時の行動とは?ストレスフリーな生活をさせる為にできること』の記事で書いていますので、ぜひ参考にしてください。
室内飼いを徹底する
外に出ると、さまざまなアレルゲンや刺激にさらされます。感染症(猫風邪など)にかかるリスクも。さらには、他の動物や車など、猫の生存を脅かすものが沢山あることが、猫のストレスになります。
このように、外には喘息を悪化させる要因が沢山。だから外には絶対に出さず、室内飼いを徹底しましょう。
猫を室内で飼うのは現在は当然とされていますが、それでもまだ多くの猫が外と家を行き来している場合があります。外では喘息の原因となるもの以外にも危険なものがたくさんあります。
猫の天敵になるものも、『猫に天敵は存在する?外の気をつけたい生き物たち』の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
喘息と付き合ってゆくのには、環境対策がとても重要。つまり、猫の喘息は、飼い主の果たす役割がとても大きい病気です。喘息は完治しないですから、環境対策も、猫の生涯に渡って続けなければなりません。
負担に感じるかもしれませんが、紹介した環境対策は、猫の喘息だけでなく、飼い主のアレルギー疾患の予防や症状緩和にも有効です。一石二鳥と考えて、積極的に取り組んでもらえると嬉しいです。