犬を放し飼いで留守番させた場合、飼い主さんが見ていない間に電気のコードをかじってしまって怪我をしたり、誤飲してしまったりと危険がいっぱいです。
サークルに犬を入れてお留守番させたはずなのに、帰ってきたら「玄関で尻尾を振ってお出迎え」なんてことになったらビックリちゃいますよね。でも、これ決して珍しくはないんです。
犬の安全のためにも飼い主さんの心臓のためにもおとなしくサークルに入っていて欲しいですよね。
今回は犬がサークルを飛び越えてしまう理由とそのサークルを選ぶ時に必要な注意点についてご説明します。まず犬はどう思ってサークルを飛び越えるのか、知ることが大事ですよ。
犬がサークルを飛び越えてしまう理由
犬がサークルにジッとしていていられない原因はいくつかあります。飼い主がちょっとした気持ちと行動で犬を不安にさせたり、犬の要求を聞いてしまうことでサークルを飛び越えようとしてしまうのです。
つまりは飼い主さんがサークルを飛び越えるように誘発している場合があるのです。また、サークルに入れておく時に必要な基本のしつけもご説明しますね。では、一つずつご説明して参りましょう。
飼い主が犬をサークルに入れることをかわいそうに思っている場合
そもそも飼い主さんが「サークルに閉じ込めてかわいそう」「サークルに閉じ込めてごめんね」などと思っている場合、犬はこの「負」の感情をとらえてサークルに入っていることに不安を感じることがあります。
嫌なイメージがある場所には人間だっていたくはないですよね。
犬の祖先の狼は休む時には後ろから襲われない洞穴などに入っていました。この習性を利用して犬と人が安全に暮らすためにあるのがサークルやケージなのです。
ですから、犬は大きな広い部屋にずっといることはかえってストレスになってしまうのです。
サークルに叱って入れる
犬が何かイタズラなどしたことを「反省しなさい」といってサークルに入れるなどすると、犬はサークルが嫌いになってしまいます。
そうするとサークルにいることが嫌ですから、飛び越えて脱走してしまうことになるのです。
犬の要求に飼い主が答えてしまう
犬を初めてサークルに入れた時には、ほどんどの犬が鳴きます。「キャンキャン」鳴いたり「クンクン」鳴いたりすることもあるでしょう。
ついこういった犬も声を聞くと「どうしたの?」と声をかけに行ったり、サークルに入った犬を抱き上げてしまったりしてしまいがちですが、これらの行為は犬にとっては誤解して学んでしまうのです。
サークルが嫌だったら鳴く、鳴いてもダメなら(飼い主が外出していたりしていない場合など)サークルを飛び越えるという図式が犬の中に出来上がってしまうのです。
そこには先ほどご説明したように「サークルに入れるのがかわいそう」という意識があるのではないでしょうか?飼い主さんのこういった行動が犬を不安にさせていることがあるのです。
分離不安
ご説明しているように犬を不安にさせる要因の一つに飼い主さんの気持ちがあるのですが、飼い主さんが「いつも犬を見ていないと不安だ」という気持ちがいつしか犬の心の病気を引き起こすことがあるのです。
犬を「サークルに閉じ込めて留守番させているのはかわいそう」「私が留守でいなくなると犬が不安がる」などと思って留守番させると飼い主さんの口調や表情に出てしまい、その悪いイメージが犬に伝わります。
犬にとって飼い主さんは「ボス」なのです。この「ボス」が不安がっていると犬は落ち着きを失い、サークルからなんとか出ようとして飛び越えたりするのです。
分離不安になった場合はサークルを飛び出る以外にもサークルやケージをかじったり、吠え続けたり、前足をずっと舐めて毛がなくなったりする行動みられます。
その犬によってさまざまな問題行動を取るので全てがあてはまるわけではありませんが、いくつか問題行動を繰り返すような場合は犬が分離不安になっていることがあるのです。
これは犬の心の病として獣医さんからお薬の処方もあるくらいの問題行動です。しかし、まずは飼い主さんの気持ちから始まっていることを自覚することが大事なのです。
犬をおとなしくお留守番させる方法については、『犬にお留守番をおとなしくさせる方法!何時間までセーフ?』の記事で更に詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
高さが足りない
犬の大きさにサークルの高さが合っていないと犬は飛び越えてしまいます。一般的に販売されているサークルの高さは以下の通りです。
- 小型犬種:60センチ程度
- 中型・大型犬種:80センチ程度
ただし、この高さの基準が当てはまらない犬種がいます。アジリティという犬の競技をご覧になったことがあるでしょうか?
様々な障害物を飛び越えたり、トンネルをくぐったりしてタイムを計る犬の競技です。どんな犬も参加することはできますが、これが得意な犬種のボーダーコリーは跳躍力がずば抜けて高い犬種です。
もともとが牧羊犬といって羊を放牧する時に迷子の羊が出ないように羊飼いが犬に指示を出して羊をまとめて移動させるというような仕事をしていた犬です。
羊のために柵があるのですが、これをボーダーコリーは助走なしでなんなく飛び越えてしまいます。ですから、サークルの高さが80センチ程度であれば軽々と飛び越えられる高さということになります。
散歩が足りない
犬をお散歩に出すことで犬の運動になるということは愛犬家の皆様ならおわかりですよね。ですが、このお散歩には他にも大事な意味があるのです。
- 社会性を身につける
- ストレス発散
- 飼い主とのコミュニケーション
犬の種類や性格からも一概に適正なお散歩時間というのはありません。飼い主さんの仕事の都合であったり、家事都合であったり飼い主さんが犬に時間をどの位かけらるか、ということからです。
ただし、犬は自然界で生きていたら自分の好きな時間に走りまわったり偵察にいったり、他の犬と関わったりすることは犬の自由ですよね。ペットとして人に飼われている環境ではこういったことは全て飼い主が主導です。
サークルでおとなしくお留守番ができない場合はこういったことが不足している場合があるのです。
登りやすい足場がある
サークル内にクレートやケージを設置されていて、それらを犬の寝床にしていらっしゃるような場合には、犬がこれを足場にして登って脱走してしまうことがあります。犬は頭の良い動物です。
出られるような構造にしていたら犬は遊びの一貫として脱走してしまうことになりますよ。
クレートなどサークル内に入れておく場合は留守番する時にはクレートの入り口を締めて出るようにするか、寝床をベッドに変更するなどして犬が脱走しやすい状態にしておかないことです。
ケージに慣れていない
飼い始めの子犬の時期、または成犬になってから飼う場合でも環境が変わる事と、犬が慣れていないということは同じですよね。
初めての「場所」「におい」「人」にも徐々に慣れていくのですが「サークル」も同じです。最初からサークル大好きな犬はほとんどいません。何かしらイタズラをしたり、脱走してみたりすることはあることです。
サークルのお留守番が慣れてくるとたとえその犬が脱走できる高さでも、犬はサークルが安心できて大好きになるとおとなしく入っているようになります。
それまでは特に若い時期は好奇心いっぱいですし、元気も有り余っていますから年齢的に落ち着く時期までは脱走をすることがあるのです。
サークルに入れる時のしつけの仕方
犬をサークルに入れる時は「ハウス」と声をかけて犬を入れます。最初は抱き上げて入れてあげたり、お尻を押して入れてあげたりしても良いでしょう。
毎回「ハウス」と声をかけてサークルに入れることから始めましょう。それだけで覚えてくれる場合もありますよ。
サークルに犬を入れる、サークルから犬を出すというのを決めるのは「飼い主」が決めます。サークルで犬が鳴いたとしても飼い主さんは完全に無視をしてください。
そして、犬が鳴いていない時にサークルから出します。犬が飼い主を見て興奮して騒ぐようでしたら落ち着くまで待って犬を出しましょう。
犬がサークルを飛び越えてしまう場合の対処法
犬がサークルを飛び越えてしまう原因についてご説明してきましたが、思い当たる点があったのではないでしょうか?原因は一つではなく、複合していくつかある場合もありますので、今までのことをよく思い出してみてくださいね。
そして、これから対処法をご紹介していきますので、ご覧になって思い当たる点を改善してみてください。
改善点を飼い主さんができることから順番にしてあげることで、犬がどうしてサークルに入っていてくれなかったのかがわかってきますよ。
犬に必要なお散歩時間
先ほどご説明したように犬にストレスなくサークルに入っていてもらうにはある一定のお散歩時間というのは必要だという事はおわかりいただけたことでしょう。
あくまでも目安ですが、犬の一般的なお散歩の目安としては以下の通りです。
- 小型犬種:朝夕各15~30分程度
- 中型犬種:朝夕各30~45分程度
- 大型犬種:朝夕各1時間程度
犬に必要な運動量
お散歩で犬の運動不足やストレス発散ができることはおわかりいただけたことと思いますが、犬は犬種によってもまたその犬の個体差でも必要な運動量というのは違います。
ジャック・ラッセル・テリアという犬種をご存知でしょうか?元々、キツネ狩りの仕事をしていた犬なのですが、体高(胴の長さ)23~30センチ程度で体重も4キロ~6キロ程度の小さな犬です。
自分より大きなキツネにひるむことなく向かっていく勇敢な犬で、狩りに使われる犬としてとても体力がある犬なのです。
この犬は小型犬種ですが、大型犬並みに1時間程度のお散歩が必要で、しかも1時間お散歩に行っても満足しない犬も多く、ジャック・ラッセル・テリアは毎日のお散歩とは別に「アジリティ」などの何かしらの運動をさせて発散させてあげると良い犬種です。
小型犬種でありながら、ジャック・ラッセル・テリアに必要な運動量は大型犬並み、もしくはそれ以上ということなのです。
ジャック・ラッセル・テリアという犬種を例にあげて、犬種によっての運動量の違いをご紹介しましたが、それぞれの年齢、病気の有無によってもお散歩時間は変わります。
老犬になった場合や病気になった場合は獣医さんに相談するなど、その犬に無理のない範囲で犬がサークルに入っていることがストレスにならないようにお散歩に連れていくことが大切です。
犬の散歩する時間については、『犬の散歩時間はどのくらいが適切?飼い犬が歩かない時の対処法も!』の記事で更に詳しく紹介しています。
犬が出すお散歩満足の合図
健康な犬なら飼い主さんがしっかり時間を取ってあげられる時は、犬を満足なくらいに散歩してあげる日があると良いですよね。
犬は「お散歩、満足だよ」という合図を出すのをご存知でしょうか。以下のような犬の合図ですので覚えておくと良いでしょう。
- 家に帰ろうとする
- 立ち止まる
- 座り込む
- 伏せて動かない
犬は満足するとサークルに入って「いってらっしゃい」ができるようになるのです。飼い主さんに余裕がある時は犬の「もういいよ」の合図を見られるまで愛犬を連れ出すことも必要なのですよ。
分離不安は専門家に相談する
先ほどご説明した分離不安は飼い主さんが自覚することが大事ですが、飼い主さんだけで改善することは難しいです。
かかりつけの獣医さんに相談したり、ドッグトレーナーさんに相談したりして専門家に改善のお手伝いをしてもらいましょう。
高さのあるサークルを使う
先ほどご説明したようにボーダーコリーには一般的な高さの柵は彼らには意味がないのです。そういったボーダーコリーや体の大きな犬用に高さが120センチ程度あるものが販売されています。
ちなみに彼らは頭も非常に良く、飼い主の指示に従順です。ですから、しつけで飛び越えないようにすることも可能なのですよ。
登りにくいアクリル板のサークルを買う
サークルは格子状になっていてこれを足場に登って脱走する場合があります。アクリル板なら中もよく見えますし、犬が滑って登りにくいのでこういったサークルも販売されています。参考になさってください。
慣れるまではサークルの天井をつけておく
対処法はわかってもすぐに改善しないこともありますし、大丈夫かどうかを飼い主さんがずっと犬を見張っておくということはできませんよね。その場合には安心できるようにサークルに天井を付けましょう。
別売りで販売されている物もありますし、サイズが少し合わない場合でも結束バンドなどで固定してとりあえず付けてしまう方法もあります。
また、それを見越して最初から天井を付けて販売している物もあります。取り外しができますからそういった物を購入されておくのも良いですね。
犬がサークルの中のスペースにいることが好きになり、サークルから出る時は飼い主さんからの指示がないと出ないということを覚えてから天井を外してあげれば良いのです。
犬を飼う時のサークルの選び方
これまで犬が安心してサークルに入っていてくれるために必要なことをご説明して参りましたが、実際にこれから購入されるという場合にはどういった点に気を付けて選べば良いのかをご説明していきしょう。
選ぶポイントは大きくわけて二つあります。
- 用途で選ぶ
- 犬種から選ぶ
また今、サークルで愛犬を飼っていらっしゃる飼い主さんはそのサークルは愛犬に合っているのかどうか、いつか来る愛犬の老後についても考えながらご覧になってみてくださいね。
犬種が持つ特性から選ぶ
先ほどボーダーコリーは跳躍力があって、高さのあるサークルが良いとご説明しましたが、その犬種が持つそういった特性と知ってサークルを選ぶ必要が他にもあるのです。
例を上げてその必要性をご紹介しましょう。ダックス・フントはミニチュアの小型犬種がとても人気ですよね。足が短く胴が長く、その姿が独特で可愛らしい犬種です。
ダックスは巣穴の中にいるアナグマを狩る仕事をしていた犬で、土を掘るのが得意です。習性としてサークル内にいて出口が見つからないと床を掘ろうとすることがあります。
床がないタイプのサークルだと部屋の床を掘って傷を付けてしまう場合がありますし、床がトレーで固定できないタイプだと外してしまう場合があります。犬がサークルに慣れないうちは床がついていて固定できるタイプが良いですよ。
犬の老後を考えて選ぶ
医療の技術の向上やワクチン、駆除薬の定着によって犬の寿命も長くなりました。しかし犬は人より早く年を取りますよね。
老犬になって介護する場面でも使えるようなサークルを選んで購入しておくのも良いポイントになります。
頻繁な排泄や体調不良などでお世話の必要がある場合には人が跨ぐことができる程度の高さのものだと使いやすいです。
もちろん、犬に負担のない高さを選ぶのが基本ですが、若いうちは天井を付けておいて老後には外すという使い方もあります。
老犬の介護用品として選ぶ
認知症で一日中歩きまわって過ごすようになった時にもサークルは有効です。隅に入って動けなくなるなどすると、ひたすら鳴き続けるこの症状が出ると飼い主さんが眠る時間もなくなってしまいます。
反時計回りに歩き続けるので、犬をサークルで丸く囲ってあげると良いですよ。
布できているサークルですと絆創膏がはがれることも少なく、ぶつかっても犬が怪我をする危険性が少ないです。また、お持ちのサークルを8面サークルに組み立て直せるようでしたら部品のみの購入でも可能です。
サークルの場所を固定し、犬がサークル内を回れるようにしてあげてください。8面サークルとは以下のようなものです。参考になさってください。
見ていると辛くなるとおっしゃる飼い主さんが多くいらっしゃいますが、年老いた愛犬がこれだけ歩きまわれるのは飼い主さんと「たくさんお散歩に行ったから」で、「たくさん遊んであげたから」愛犬の足腰が丈夫なのです。
ですから、歩きたいだけ自由に歩かせてあげられる工夫をしてあげましょうね。
小型犬のサークルの大きさ
一般的に売られている小型犬用サークルの大きさは幅1メートル前後で高さが60センチ、奥行きが60センチ程度です。ベッドとトイレ、お水を置くスペースがある程度の大きさです。
トイレを外でする場合や別サークルでする場合は、寝るスペースとお水が置ける程度で良いので幅35~44センチ程度、奥行きが50~60センチ程度あれば大丈夫です。
小型犬のサークル選びのポイント
小型犬のサークルの場合はトイレがサークル内であることが多いので、お手入れのしやすさをポイントに選ばれると良いでしょう。
また、トイレ用のサークルがサークル内で分かれていたり、別付けできるタイプだと長時間のお留守番でもトイレが寝床から離れているので犬が嫌がる心配がなく安心ですね。
中型犬のサークルの大きさ
中型犬用のサークルとして販売されている大きさは幅120センチ程度で高さ60~80センチ程度、奥行きが80センチ程度が一般的です。
小型犬と同様にトイレとベッド、お水を置けるスペースがあるという感じです。また、中型犬以上になるとトイレを外でしたがる犬が多いので寝るスペースのみという場合が多いのですが、その場合は幅55~63センチ程度でも大丈夫です。
中型犬のサークル選びのポイント
中型犬は小型犬と違って噛む力が強いので、素材選びは慎重になさった方が良いです。丈夫で壊れにくく、誤飲の心配がないものを選びましょう。
トイレを基本的にサークル内でと考えられる場合はサークル内に仕切りがあるタイプか、別付けサークルを付けた方がトラブルがないでしょう。
大型犬のサークルの大きさ
大型犬の場合は体が大きいので幅120センチ以上で高さ80センチ程度、奥行き90センチ以上の物が良いです。
寝る時のみの使用であれば幅63センチ~91センチ程度あれば大丈夫ですが、超大型犬種である「秋田犬」や「ピレニーズ」、「グレートデン」は窮屈になってしまう場合があります。
大型犬のサークル選びのポイント
大型犬は体が大きいですから犬がぶつかったりしても倒れない丈夫な素材を選びましょう。重さがある物でサークルを床に固定できる方が安全です。
中型犬以上は犬舎としてサークルを外に置く場合も多いですよね。サークル内に犬小屋を設置されたり、一部分に屋根がありケージが付いているタイプもあります。
基本的に大型犬の排泄は量も多いですのでトイレは寝る場所のサークル以外でさせることが一般的です。
飼い犬がケージやサークルを噛んで破壊してしまう事で悩んでいる飼い主さんは、その原因や対処法を、『犬がケージを噛むのを止めない原因と対処法』の記事を参考にしてみてくださいね。
まとめ
犬はその飼い主さんの鏡です。落ち着いたお年寄りが飼っている犬は歩くスピードまで穏やかです。
犬も飼い主さんもお互いに信頼している場合はお留守番をしている時も帰ってくることがわかっているので不安定になることはありませんよ。
また犬は聴力がとても良いので飼い主さんの足音や車の音を人が聞こえるずっと前にキャッチして心待ちにしているのです。留守番が長かった日はたくさんお散歩に行ってコミュニケーションをとってあげてくださいね。