つい可愛いからと言って、「遊んでいるつもりなのね」と子犬に甘噛みを許したら…あっという間に成犬になり、その甘噛みは、凶器となってしまいます。
犬は肉食動物。動物の肉を噛み切るために、歯も顎もたくましくできています。そんな犬に噛まれたらたとえ犬は遊びのつもりでも、大きな怪我につながりかねません。
犬はとても頭が良いので、「甘噛みは駄目」と教えれば、きちんと理解してくれますよ。みんなに安心して沢山可愛がってもらう、そんな幸せな毎日を犬に過ごしてもらうために、甘噛み問題を今のうちに解決しましょう!
目次
犬が甘噛みしてくる理由
甘噛みとは「動物や人に対して軽く噛むこと」。犬にとって攻撃的・防衛的な意味や捕食としての意味はありません。ではなぜ甘噛みをするのでしょうか?
甘噛みの本来の目的
甘噛みは犬の習性のひとつ。ではその本来の目的は?それを知れば甘噛み問題解決の糸口が見つかりますよ。
遊び
子犬同士で遊んでいるのを見たことがありますか?お互いに甘噛みし合って遊びます。この遊びを通して噛まれる痛みを知り、怪我をさせない噛み方を学びます。
順位付け
犬は群れで生活する動物です。群れには順位があります。その順位の決定と維持のために、群れの仲間同士で甘噛みします。
注意・警告
「これ以上近づいたら怒るぞ」「こんなことしたら駄目」群れの仲間や子犬に対して、このような注意や警告として、甘噛みします。
歯の生え変わりによる違和感の解消
犬も人と同じように乳歯と永久歯があります。その生え変わりの時期(生後4か月〜8か月頃)は口の中に違和感があり、それを解消するために甘噛みすることがあります。
人に甘噛みする理由
人に甘噛みしてしまうのは「噛んで良いのだ」と犬が誤解しているから。その誤解の原因は他ならぬ飼い主の行動です。その飼い主の行動についてNGなことは以下のことになります。
手や足で遊ぶ
犬と遊ぶ時に、自分の手足を遊び道具にしていませんか?犬の顔の前で手を動かしたり、足でお腹をくすぐったり。
それでは犬は人の手足をおもちゃと誤解してしまいます。犬には動くものに噛み付く習性もあるので、「動くおもちゃ」と化した手足に噛み付くのは当然です。
甘噛みされたときに騒ぐ
犬に甘噛みされたとき、どのように反応していますか?「イタイ!」といいながら、手を大きく動かしたり、大きな声で騒いだりしていませんか?
そんな反応が犬にとって「楽しいもの」になっている可能性があります。「噛むと楽しい!」そう犬が誤解してしまうと、甘噛みはエスカレートします。
犬に主導権を握らせている
犬かわいさに、犬を甘やかしすぎていませんか?いけないことをしたら「ダメ」と注意することを忘れていませんか?
犬の言いなりで振り回されていると、犬は飼い主のことを自分よりも下位と認識します。自分が主導権を握っていると誤解するので、威嚇や警告のために飼い主を甘噛みしてしまうのです。
犬のしつけが上手くいっていないと、飼い犬が唸ったり無駄吠えしたりしてしまいます。飼い主を悩ます唸りについて、『飼い主なら知っておきたい犬が唸る理由と対処法』の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ飼い犬のしつけの参考にしてみてください。
やめさせるべき甘噛み
甘噛みが大きな事故に
犬の噛む力の強さを知っていますか?犬種にもよりますが、中には牛の骨を砕く程の力を持っている犬もいます。小型犬だってあなどれません。
ドライタイプのドッグフードをフォークで刺したり、包丁で切ったりしたことはありますか?
一度でもしたことがあれば、小型犬がそれをスナック菓子のようにボリボリと食べることに、驚くはずです。小型犬でも噛む力は想像以上に強いのです。
小さいころに犬と触れ合わずに育った犬は、噛む加減を学べておらず、強く噛んでしまうことがあります。
また人は毛が生えていないため、噛まれると皮膚に歯が直接あたり、犬が加減して噛んでも、怪我をしてしまうことがあります。つまり、どんな犬であれ、その甘噛みは大きな事故につながりかねないのです。
甘噛みから病気に感染!?
甘噛みが怖いのは怪我だけではありません。咬み傷を通して、犬から人に病気が感染することあります。最悪の場合、その病気で亡くなってしまうことも。
具体的にどんな病気になるのか。厚生労働省や東京都のホームページなどでも、情報発信されていますが、ここでも簡単に紹介します。
パスツレラ症
犬の風邪症状や肺炎などの呼吸器症状を起こし、場合によっては亡くなります。また、咬み傷の激痛・発赤・腫脹を起こし、膿んでしまうこともあります。
カプノサイトファーガ・カニモサルス感染症
発熱や吐き気、頭痛などを起こします。敗血症や髄膜炎などにより亡くなることもあります。
狂犬病
致死率100%のこわい病気です。日本では犬に対するワクチン接種が義務付けられています。60年以上、狂犬病が発生していない日本では、今のところ、国内で飼われている犬に噛まれた場合に限れば、感染の心配はいりません。
甘噛みを許さない
許して良い甘噛みはありません。「歯の生え変わりの時期だから甘噛みするだけでしょ」と子犬の甘噛みを許したくなる。
その気持ちはわかりますが、最初の理由は何であれ、一度ついた甘噛みの癖は、大きくなっても残ってしまいます。犬種や理由は問わず「甘噛みを許さない」。そのルールを徹底することが必要です。
甘噛みも含め飼い犬のしつけに悩んでいる飼い主さんは多いですが、その中で多いのが散歩のしつけ方です。
飼い犬に正しい散歩のしつけをする方法を、『犬の散歩のしつけ方!好きなところへ行かせない方法』の記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
甘噛みをやめさせる方法
まずは甘噛みを止める
甘噛みを始めたら、犬の目をみて低い声で冷静に「ダメ」と注意しましょう。噛まれている手は引き抜いてはいけません。かえって咬み傷がひどくなる可能性があります。
できれば犬が口を離すまで、そのままでいましょう。犬が口を離したら、手は背中の後ろに隠します。
決して犬を叩いたり、抑えつけたり、怒鳴ったりはしないでください。恐怖心が芽生え、甘噛みしなくなるどころか「本気噛み」をするようになります。
咬み傷から出血している場合は治療が何より優先。傷を流水で洗い、傷が深い場合はすぐに病院に行きましょう。
クールダウンの時間をつくる
背中に隠した手をもう一度犬の前に差し出しましょう。もし甘噛みを繰り返さなかったら、たくさん褒めてあげます。もし差し出した手をまた甘噛みしたら、クールダウンが必要です。5分間、飼い主が部屋から出てゆきましょう。
その間は絶対に犬に姿を見られてはいけません。部屋から出るのが難しい場合は、犬を無視してください(声をかけない、視線を送らない)。
クールダウン後はいつも通り接する。こうすることで「甘噛みしたら遊んでもらえなくなる」と犬が理解し、甘噛みしなくなります。
甘噛みの防止法
「甘噛みは楽しい」「人の手はおもちゃ」「自分は人より優位」と犬に誤解させないこと。そして噛みたいという欲求を他の方法(噛んで良いおもちゃをあげる等)で満たしてあげること。これが甘噛みを防ぐキーです。
- 人の手や足で遊ばせない(噛んでも良いおもちゃを使って遊ぶ)
- 甘噛みされても騒がず冷静に対処する
- いけないことをした時には毅然とした態度で接する
ここまで、甘噛みの原因や対処法について解説してきましたが、犬は飼い主さんに甘えたい気持ちでいっぱいなので、厳しいばかりではいけません。しつけの時でも、飼い犬の甘えたいサインを見逃さないようにしましょう。
詳しくは、『犬が甘える時のサインとは?飼い主なら気付いておきたい犬の甘え方』の記事で紹介していますので、ぜひ飼い主さんは参考にしてみてください。
まとめ
犬は人が大好きです。甘噛みで人を傷つけてしまったら、それは犬にとっても悲しく不幸なことです。人と犬が一緒に幸せに生活するために、甘噛みの解決はとても大切です。
もうひとつとても大切なこと。甘噛みには家族みんなで向き合ってください。ひとりでも違うことをすると、犬は何が悪くて何が悪くないのか、混乱してしまいます。
小さな子供も含め、家族全員で話し合って足並みを揃えて甘噛みを解決する。そうすることで、家族も犬も、絆が一層強まっていきます。