ペットの殺処分ということが、メディアを通じてここ数年で多くの方に知られることとなりました。
その悲しい現実を目の当たりにして、ペットを捨てるという悲しい行為が減ってきたことも確かなのですが、いまだにゼロにはなっていない現実があります。
何故、一度は家族として一緒に生活してきたペットを捨ててしまうのでしょうか?その人間の身勝手な理由を紹介するのと同時に、捨てられたペットたちを救うための活動なども合わせて紹介していきます。
目次
ペットを捨てるのは人の身勝手が引き起こす
捨てられるペットの数
環境省の発表しているデータによると、平成27年度中に殺処分対象として保護センターに持ち込まれた犬や猫の数は、犬が約4万頭、猫が約9万頭の合計13万頭ほどになります。
この中から、新しい飼い主さんを探すべく保護施設に引き取られていく場合や、飼い主さんが迷子になっていたペットを探し出し引き取られていくこともありますので、大半の犬や猫は殺処分を免れることになりますが、残念ながら全てがそうなる訳ではありません。
そして、この持ち込まれる犬や猫は大半が迷子や野良育ちなのですが、驚くことに犬の場合は14%、猫の場合は16%が飼い主さん自ら保護センターに持ち込んでいます。
現在では動物愛護法が改正され、保護センターでは動物の受け入れを拒否することができますが、やむを得ない事情がある場合のみよく話しをしたうえで有料にて引き受けることもあります。
保護センターに動物を持ち込むということは、その後その動物がどうなるのかを承知したうえで持ち込んでいることに衝撃を感じざるを得ません。
衝動買いが引き起こす悲劇
平成24年に環境省は、ペットショップなど動物を小売販売している業者に対して、犬や猫の展示時間の規制を動物愛護管理法に基づき施行しました。
これは午後8時以降の展示を禁止することで犬や猫にかかるストレスを軽減することを目的としていましたが、当時夜間販売における動物の衝動買いが増え、それに伴って捨てられる動物の数が増加傾向にあったことをなども考慮されたといわれています。
夜間に購入した人の全てが飼育放棄をしたということではもちろんありませんが、お酒をたしなんで気持ち良くなっている時に、子犬や子猫の可愛らしさに負けてつい購入してしまい、よくよく考えたら飼育できる環境になかったり、世話が面倒になってしまったりという人が実際に多かったことも事実です。
猫や犬の殺処分については、『猫の殺処分の現状とは。生き物を飼っていなくても一人ひとりに知ってほしいこと』の記事や、『犬の殺処分の現状。殺処分ゼロの為に一人ひとりが考えたいこと』の記事で更に詳しく解説しています。
人がペットを捨てる時の理由
生活環境の変化
ペットを捨てる理由の多くに、飼い主さん自身の生活環境の変化があげられます。
- 引越し先がペット不可な住まい
- 結婚相手が動物嫌い、または動物アレルギー
- 自分に子どもができた
- アレルギーの発症
- 病気による自分自身の入院
- 飼い主さんの死去
ここにあげた理由のなかには、自身の入院やアレルギーの発症などやむを得ない事情もあると思いますが、回避できたのではないかというものもあります。
ペットだって人間と同じように、一つの大切な命に違いはありません。どうしても自分が飼えない状況になったのだとしても、捨てるなどという選択肢はあってはならいはずです。
動物アレルギーが発覚してペットを捨てることも決して許されてはいけないと思っています。
どうしても辛い場合などはどのようにしたら良いのか?を『猫アレルギーの症状が出た!?少しでもアレルギーを抑える方法』の記事で症状を抑える方法を詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
自分勝手な都合
次に紹介する理由は、まさに自分勝手と言わざるを得ないものです。
- ペットを飼うのに飽きた
- 飼育費用がもったいない(餌・ワクチン・病気の際の治療費など)
- 世話をするのが面倒になった
- 大きくなってしまったので可愛くなくなった
- 新しいペットを飼うことにした
本当にこのような理由で、今まで一緒に生活していたペットを捨てる人がいるのかと耳を疑ってしまいますが、残念ながらすべてが実際にある話しばかりです。
ペットの成長に付いていけない
ペットを飼うということは、ただ可愛がるだけではダメでしつけが必ず必要になってきます。時には厳しく、そして根気よくしつけをしなければ、いずれ飼い主さん自身が困ることが出てきてしまうでしょう。
子犬や子猫を可愛がることしかせずに、しつけを怠ってしまった飼い主さんが下記のような理由でペットを捨ててしまうこともあります。
- 噛みつく
- いたずらして物を壊す
- 粗相をする
ペットの成長に合わせてきちんと対応をしてこなかった結果、持て余して捨ててしまおうと考える人もいるのです。
ペットが子どもを産んだ
避妊や去勢手術をしていないオスとメスのペットを一緒に飼育していれば、いずれは子どもができるのは至って自然なことです。
飼い主さんもそれは分かっていながら、自分のところは大丈夫だろうと思い対処をしていない方が意外と多くいます。その結果ペットの受胎にも気付かず、出産の段階になって焦って動物病院に駆け込む飼い主さんがいるのです。
そして、産まれたばかりで目も開いていないような犬や猫の赤ちゃんを、そのまま母親から離して捨ててしまう方も実際にいます。
そのまま数時間も置いておかれたら、あっという間に死んでしまうような産まれたばかりの子猫を保護したという話は多く聞かれることです。
捨てられたペットの行く末
野良猫・野良犬
捨てられた猫は、そのまま野良猫になるケースが多いです。もちろんそれは自分で歩いて食べ物を探すことができるまでに成長した猫に限ります。
自分で餌を探せず、まだミルクが必要な月齢の子猫であれば、運よく誰かに保護されない限り母猫が居ない環境ではまず生きてはいけません。
猫の場合は、放し飼いで飼育している飼い主さんもいますので、保護センター側も連絡を受けたところで野良猫なのか飼い猫なのかの判断が付きませんので、基本的には捕獲しません。
野良猫が減らないのには、このような事情もあると考えられています。
犬の場合は、犬が単独で外を歩いているのに出くわすと保護センターや警察に通報したり、保護してしかるべき場所に連絡を入れてくれたりする人が多いのです。そのせいか、昨今野良犬というのはあまり見掛けなくなったのではないでしょうか。
ただし、一時期の大ブームで爆発的に売れた大型犬種のなかには、子犬の頃の可愛らしい姿に一目惚れして購入したものの、成犬は想像以上に大きく散歩も大変で、飼育をしていくうえで持て余し山奥に捨ててしまった方がたくさんいました。
一部の地域では、その捨てられた犬が群れを作り繁殖を繰り返すことで頭数が増え、畑などを荒らして迷惑をしているというニュースが報じられていたほどです。
野良犬や野良猫として一生を終えていく捨てられたペットたちもいますが、近隣の方の通報により保護センターに捕獲されて連れていかれるペットたちもいます。保護センターに連れていかれたペットたちがどうなるのかは、次の項目で紹介していきましょう。
もし、捨て猫がいた場合にはどのように対処したら良いのかを、『近所に捨て猫がいた時は保護するべき?その後の対処法は?』の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ目を通してみてください。
殺処分
飼い主さんに捨てられた末、近隣の方の通報により保護センターに捕獲されたり、人の手によって保護センターに持ち込まれたりした犬や猫は、一定の期間を経て殺処分される運命にあります。
これは、捨てたつもりはなく、うっかり逃げ出したまま迷子になって帰ってこないペットも含まれていますので、脱走癖のあるペットの飼い主さんが充分気を付けるようにしてください。
殺処分というと安楽死を想像する方も多いと思いますが、犬や猫の殺処分は決して安楽死といえるものではありません。
各保護センターによって殺処分の方法は多少違いがあると思いますが、一般的には小部屋に殺処分対象の動物が入れられ、そこにガスが噴射されていきます。そのガスに神経麻痺を起こし、絶滅した後にまとめて焼却されるのです。
ガスの効きには個体差がありますので、ガスによる苦しみが短い子もいれば、効きが悪くいつまでも意識が残り完全にガスが効く前に焼却されてしまう子がいないとも限りません。
いくつもの命があっという間になくなる行為が、事務的に淡々と行われるのが殺処分の現実です。
衰弱死
高齢や病気が原因で捨てられてしまったペットたちは、飼い主さんを追いかけることもできず、自分で餌や水を探しにいくことすらできずに、そのまま衰弱して死んでいってしまうでしょう。
たまたま誰かに保護されて助かることもありますが、それはとても稀なことですし、捨てるような人はそう簡単に人が保護してくれるようなところには捨てていきません。
その逆に、自分では面倒をみることはできないけれど、捨てる行為自体に罪悪感を少しでも持っているような人は、保護施設や動物病院の前に捨てていくこともあります。
ただ、いくら保護される確率の高い場所に捨てていったとしても、その後の暮らしはどうなるか分からないだけでなく、捨てたという事実は変わりませんので、ペットたちの心には深く大きな傷が刻まれます。
ペットの保護活動が多く行われているのが救い
動物保護センター
各都道府県に配置されているものです。地域によっては動物愛護センターと呼ばれることもあります。
ここは、持ち込まれたペットたちを殺処分する場所というイメージがあるかもしれませんが、現在保護センターでは持ち込まれたり保護されたりしたペットたちが、再び幸せに暮らしていけるような譲渡先を見付けることに力を入れています。
実際に地域の保護団体やボランティアの方と協力をしながら、定期的な譲渡会を行い新しい飼い主さんを探す手助けをしたり、しつけ教室などを開催したりしてペットと飼い主さんがお互いに幸せに暮らしていけるような指導もしています。
動物保護団体
最近ではメディアなどでも多く取り上げられるようになり、多くの方にその存在や活動内容が知られるようになりました。
保護団体は各地域に数多くあり、規模や内容も様々です。公的な保護センターでは、施設の性質上規定の日時が過ぎてしまうと、保護された動物たちは殺処分されてしまう仕組みとなっています。
保護団体の多くは、その期日までに保護センターに出向き、処分対象の動物を引き取り世話やしつけをしながら、新しい飼い主さんが見付かるような様々なイベントを開催したり、ネットなどへの告知を行っています。
新しい飼い主さんを探すといっても、これはなかなか簡単なことではなく、それが実際に見付かるまでには毎日の餌代も当然かかりますし、ケアもしていかなくてはなりません。
金銭面は、善意の方からの寄附金や公的機関からの補助金などを駆使して運用しているところが多いですが、動物たちのケアをするには人の手が必要となってきます。
それをまかなってくれているのが、多くのボランティアさんたちです。様々な理由で保護センターに保護され、その後施設へきた動物たちが次こそは幸せな人と巡り合えるようにと、多くの方の協力で成り立っています。
預かりボランティア
保護施設には離乳食前の小さな動物もいますので、数時間置きにミルクを与えなければならないような子猫や子犬を自宅で預かって世話をする、預かりボランティアもいます。
離乳食前の子猫や子犬は免疫力も弱く、成長しきった動物たちと比べるとかなりの手間と注意が必要となってきますので、たくさんの動物がいる保護施設では十分な世話ができないと考えた末にできた方法です。
お一人で数匹の子猫を預かる方もいるようで、自分の寝る間を削って世話をされている方もいます。離乳後は、施設へ戻される場合もありますが、人と上手に生活していけるように慣れさせたうえで、預かりボランティアの元から譲渡会へ参加する動物もいます。
人がペットを捨てないようにする為にできること
飼い主一人一人が自覚を持つ
現在では動物愛護法が改正され、動物を飼うからにはその動物の飼育を途中で放棄することは原則として許されず、生涯面倒をみることが義務付けられています。
先に紹介したように、その改正に伴い保護センターでは持ち込まれたペットの受け取りを、原則拒否できるようになりました。
この法律改正が施行されてから保護センターに動物を持ち込み、職員の方とよく話をした結果考えを改めて連れて帰った方もいるそうですが、動物を飼い始めたら病気で看病が必要になろうと、高齢で世話をする手間が倍以上に増えようとも最期まで面倒をみるのが当然のことです。
こんな当たり前のことを法律で決められなければいけないこと自体がとても残念なことではないでしょうか。
動物を迎え入れるからには、最期の時まで責任を持って面倒をみるという覚悟と、命あるものを迎え入れたという自覚を持つべきです。
避妊去勢手術をする
避妊や去勢手術をせずに飼育していた結果、望まぬ妊娠を招いてしまうこともあります。
その結果、産まれてすぐに赤ちゃんを処分したり捨ててしまったりするような悲しい出来事も実際に起きていますので、子ども産ませる予定がないのであれば、適切な時期に避妊や去勢手術を行うことも必要ではないでしょうか。
ただ手術となると麻酔などをする必要も出てくるため、不安に感じる飼い主さんが多いのかもしれません。
その点も含め、獣医師さんに手術をすることのメリットやデメリットをよく確認し、不幸な命を作らないためにも手術を検討するようにしてください。
また、手術をしない選択をするのであれば、盛りのシーズンには他のオスやメスとの接触は持たせないような配慮をするようにしてください。
去勢や避妊手術には飼い主さんも不安があるかもしれませんが、手術をすることでメリットもすごく大きいことがあります。
詳しくは、『猫の去勢手術はいつがベスト?気になる費用の相場や流れ』の記事で解説していますので、検討している方はぜひ参考にしてみてください。
猫を放し飼いにはしない
最近では、完全室内飼いの猫が増えてはきましたが、自由に外出をさせている飼い主さんも居ない訳ではありません。
避妊や去勢手術をしていない猫が自由に出歩いているということは、繁殖行為が飼い主さんの目の届かないところで行われている可能性もあるということです。
自分の飼い猫の様子がなんだかおかしいと思い、動物病院へ連れて行ったら妊娠していたという話も耳にします。
これ以上飼い猫を増やす訳にはいかないので、産まれてくる前に子宮ごと赤ちゃんを摘出する手術をお願いする飼い主さんもいるのです。
これは、母猫の身体に負担がかかるだけでなく、その後ホルモンバランスを崩してしまうおそれも出てきてしまい、ペットにとって良いことは一つもありません。
普段はきちんと家に帰ってくる猫でも、突発的に何かが起こり、帰りたくても帰れない状況に陥る場合もあります。野良猫を増やさないためだけでなく、飼い猫の安全のためにも、猫の放し飼いはやめるようにしましょう。
買わずに譲り受ける
海外からの旅行者は、日本のペットショップを見ると大抵の場合驚愕します。それは小さな子犬や子猫が、たった1匹でガラスのショーケースに入れられて販売されているからです。
海外の多くの国では、動物を迎え入れる時には日本でいう保護センターに出向き、保護されている動物のなかから家族として迎え入れる犬や猫を選ぶのが一般的になります。
もちろんブリーダーから譲り受ける場合もありますが、この場合のブリーダーは日本と違い、国の定める様々な厳しい条件をクリアした場合のみ認められている人たちで、ブームなどにのって過剰な繁殖をすることはなく、衝動的に動物を求める人もいません。
保護センターに出向いて引き取る場合でも、その場ですぐに気に行った動物を引き取れるのではなく、飼育環境や家族構成などをクリアした人が引き取ることができるようになっています。譲る側も引き取る側も意識が高いことの表れです。
現在全国にある保護施設では、種類も年齢も様々な動物たちが新しい飼い主さんを待っています。ただ保護施設では、いくら飼い主さんを見付けてあげたいとはいっても、誰にでも簡単に動物たちを譲り渡す訳ではありません。
海外のそれと同じように、飼育環境や家族構成、生活環境などを詳しく確認します。飼育する自宅を見学に行き、期日を決めて実際に飼育をして家庭に馴染めるかを試すことも多いです。
条件を付ける理由や厳しい理由は、『猫の保護活動の意義や猫の譲渡の条件が厳しいこれだけの理由』の記事を参照してもらうとして、今度こそ動物たちが幸せに生涯を送ることができるのかを、真剣に考えているからであって、条件に合わない場合には施設側が断りを入れることもあります。
ペットショップで動物を買うのとは大きな違いがありますが、動物を飼おうと決めた時には、保護施設から譲り受けることも選択肢のなかにいれてみてください。
ネットで検索をしたり、管轄の保護センターなどの公的機関に尋ねたりするとお近くの保護施設の場所を教えてもらえますので、引き取るか否かは別として是非一度見学だけでも行ってみてはいかがでしょうか。
ペットを保護施設から引き取る方法を、『犬を保健所から引き取る方法!犬の里親になるために』の記事で詳しく紹介しています。
里親を探す
様々な事情により、どうしてもペットを飼い続けるのが難しくなってしまった場合には、安易に捨てたり保護センターに持ち込んだりするようなことは、絶対にしないようにしましょう。
今まで一緒に生活をしてきた家族です。次に大切に飼ってくれる人を、自分の手で探す努力をまずしてください。個人で新しい飼い主さんを探す手段はいくつかあります。
ネットを利用する
インターネットを活用できる環境であれば、ネット上には新しい飼い主さんである里親を探すサイトがいくつもあります。
ペットの写真や特徴を記載して投稿をします。問い合わせがあった場合には、必ず直接会って話をして、ペットを託せる人がどうかを確認するようにしてください。
地域誌を利用する
インターネットを利用しなくても、無料で配布されている地域誌などに掲載する方法もあります。
その他
動物病院やスーパーなどでは、里親募集の貼り紙をさせてくれるところもあります。
自分で里親探しをしながら、それと並行して保護団体にも一度足を運んで相談をしておくのもおすすめです。里親探しを協力してくれる保護施設もあるかもしれません。
いずれにせよ、人任せにしたり放り出したりするのではなく、ペットが自分の手元を離れても幸せに暮らしていけるような方を見付けてあげる努力を最大限してください。
もし子犬を拾った時に見つけた人はどのように行動すれば良いかを、『子犬を拾ったら里親を探そう!引き受けてくれる人を探す方法』の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
人がペットを捨ててしまう様々な理由を紹介しましたが、いかがでしたか。あまりにも身勝手な理由から、仕方ないと思えるようなものもありますが、どんな事情があるにせよ捨ててしまう行為が許される訳ではありません。
どうしても飼えなくなってしまった時には、自分で新しい飼い主を探すのが、動物を飼い始めた人の責任であり義務でもあります。
ここ数年で殺処分される犬や猫の頭数はどんどん減ってきてはいますが、それは保護団体が処分される動物たちを引き取っている背景があるのです。
人の手によって捨てられたり、飼育放棄されたりするペットたちの数そのものが減っていくように、動物を飼う人の意識が少しでも向上していくことを望みます。